真美の彼女心*おまけ
匠に私が「笑う悪魔」とゆう別名を名付けていた事を、笑顔の小悪魔桜に暴露された朝の事。
私は、魔王にまで進化出来た匠の存在に嬉しくも、少し怯えながら学校に着き教室に入った。
周りの様子から、学校で私が倉庫に閉じ込められた事が大きな騒ぎになっていなかった事に安心できた。
匠と桜ちゃんと別れ一人だけで席に着くと、匠の友達三人が小声で訪ねて来る。
「まぁちゃん。大丈夫?大変だったね。」
柳は心優しく気遣うように。
「無理するなよ。体調悪かったらすぐに保険室行けよ。」
青井なにか難しい顔で心配して。
「保険室に行くなら、僕が付き添うからね。一人で我慢ばかりしちゃ駄目だよ。」
松山は、甘やかすように微笑みながら心配してくれる。
「探してくれてありがとう。もう大丈夫。皆も好きな子や彼女が困らないように気をつけてあげてね。」
けれど私の言葉に、罰の悪そうな顔をした三人。
私みたいな事は、あまり有りはしないだろう。
そんな女の子が三人に、いるかいないかも分からないから、あてずっぽうに言ったのに、そんな顔で困らせる心当たりがあるのか…。
あの時、横断歩道で大声で呼びかけて更に周りの注目を浴びせておきながら、あっさり赤信号にかかった三人に軽い嫌みを付けただけのつもりだった。
「私は何も聞いてないから何も知らないの。あてずっぽうよ。ごめんね。
倉庫の事も心配かけてごめんなさい。遅くまでありがとう。もう大丈夫だから…。」
小心者の私は、すぐに慌てて言い訳してこっそり謝罪して探してくれたお礼を改めて言った。
けれど、それぞれ整った容姿の三人はそれぞれ女の子の事で悩んでいたのか、私が下手に出たのが悪かっのか分からないまま反撃がきた。
「じゃあ、まぁちゃんからのお詫びとお礼にカフェオレで我慢しようかな。お昼休みでいいよ。けど大丈夫そうで良かったよ。」
「何かあったら匠か俺らに無理ばかりせずに言えよ。あと、俺は弁当がいいけど…。仕方ない。俺もカフェオレ。おかず付きで。」
「じゃあ僕は…何か炭酸とカフェオレの二本にしてね。まぁちゃん…。いつか倍返しして泣かせてあげるね。けど、友愛の裏返しだと思ってね。」
柳、青井、松山の順で言われた。
お前ら…私は、暗い倉庫で一人寂しく心細くなって、寒さに負けて発熱した一応か弱く見える女の子のはずだ。私は何もしていないし悪く無いはずだ。
なのに私の立場が弱く感じるのはなぜだろう…。
笑顔の天使に見せかけておいて実は、見習い悪魔にもなれたのか…。
松山が一番おかしいのが気になり、二人の言葉と三人が探してくれた気持ちと心配してくれている暖かさに嬉しくもなる。
「また、時間と元気がある時におかず作るよ。甘い飲み物もつける。松山くん。話しくらいなら聞けるから良かったら言ってね?」
勝てそうにないので、いつかお礼をする約束をした。松山の心配まで口に出てしまったのは失敗かも知れない。
「何、話してんの?」
しかも、私は笑顔で言ったのに目を反らせた松山からの返事もない間に、それを聞いていたらしい匠がズカズカ割り込んできた。
結局、匠が三人と桜ちゃんに一人一本の飲み物をおごり、私は桜ちゃん達と一緒にお昼を食べる予定が決められた。
休憩時間に、同級生の佐藤さんに会いお菓子のお礼と、仲良くとは言えないけれど話しもできた。
帰り道に高田さんの姿も見えない、穏やかな一日の匠と二人の帰り道。
私は、朝の事はすっかり忘れていた。
「あいつらも、彼女や好きな子で悩んでるんだから、あんまり煽るな。」
朝の三人の話を聞いた匠がしみじみ言った。
三人と仲の良い匠が言うなら、そうなのかも知れないと頑張ってお礼のおかずメニューを考えはじめた、私。
「まぁちゃん。今日、バイトないし少し家に寄っていい?話しがあるんだ。」
そんな中で、私を見つめる匠からの突然の言葉。
先日、匠が半裸で私を誘うように色っぽく近寄ってきて、からかわれた事を思い出してしまう。
けれど、今日は、母もいるから何か話しがあるなら少しならと良いと思った。
「いいよ。」
素直に返事を返し、門の前に止めてある車を見て、家のドアを開けた。すると、母はお出かけスタイルで出迎えてくれた。
なぜに…。どうして?
「あ。おかえり。たっくんも一緒だったのね。真美、待ってたのよ。
ごめんね。お母さん、これからお父さんの所に行こうと思ってて。一昨日から熱が出て無理して泊まり込みの仕事を終わらせたら、帰れるんだけど一人で動けなくなったんだって。
遅くならないように連れて帰るから。」
母は私達二人に話してくれた。
車なら一時間半ほど離れた所に出張している父を心配する母の言葉に、私が「じゃあ私も行く。」と言う前に匠に先をこされた。
「おじさん、大丈夫なんですか?」
「今は、病院に行ってるみたいだから大丈夫だと思うの。
来なくていいとは言われたけど、熱が高くてフラフラしてるらしいから行ってみるわね。一人で電車乗り継いで行ったし。」
なら、私も行く。
私が思って口に出す前に、私達に話しかける匠と母の会話がまた進んでしまう。
「それは心配ですね…。」
「そうなのよ。じゃあ、真美、後はよろしくね。向こうに着いたら電話するから。行ってきます。」
「気をつけてくださいね。いってらっしゃい。」
いや…。私の話しも聞いてよ。それに、お年頃の男女二人きり誰もいない家の玄関に残して行ってきます。じゃないだろう。
匠と二人だけの会話を終わらせた母が、門の前に止めた車に少し慌てて乗り込む。運転しながら笑顔で手を振り出発していくのを、玄関の外で少し寂しく見送った。
「まぁちゃん。大丈夫?」
「コンビニ行って何か買いに行って、帰ってくるの待つよ。だから、たっくんも家に帰って。私は大丈夫だから。」
私の言葉にムッとした匠は、私の家の玄関ドアを開けて私を押し込み、私の部屋まで手を引かれつれて行かれた。
やっぱり帰らないか…。
匠の二人になりたい気持ちもわかる気はしたけれど、まだ私はそれについて行けていなかった。
二人きりは匠の家でもあったのに、今日は私の部屋に二人きりになる。匠の家の時より、お見舞いの時よりも緊張してしまう。
「あの…着替えてきていい?」
とりあえず匠に適当に座ってもらうように言って、ストンとした部屋着のワンピースと厚手のスバッツを持って着替えに向かった。
着替えて制服だけ持って部屋に戻ると匠は膝を立てて、背中をベッドにもたれかけて座っていた。
「じゃあ、俺がどこかで適当に買ってくるよ。まぁちゃんは、昨日熱があったんだから大人しくして待ってて。」
ニッコリ笑った匠は私の頬にキスを一つ落とし、バタンと私の部屋のドアを閉めて出ていく。
匠は私の体調を心配してくれていただけなのに、私は部屋に二人きりになるので、いやらしい事まで考えて緊張していた。
ガクリとその場に膝をついて座り、一人顔を赤らめ想像力豊かな自分を消してしまいたくなった。
しばらくして気を取り直し、戸締まりと門灯とリビングの明かりを付けてキッチンで、お湯を確認すると何もする事が無くなる。
また、部屋に戻り宿題を始める事にした。ローテーブルに教科書とノートを広げ宿題をしていると、30分程で玄関のチャイムの音が聞こえた。
玄関のドアを開けると買い物袋を持った匠がいる。
「締め出されたのかと思った。」
「暗くなるし、一応戸締まりしてただけ。」
拗ねたように言った匠が、リビングの明かりに気がつき聞いてくる。
「何してた?寝てなくてもいいのか?」
「部屋で宿題。元気になったから学校行ったんだよ。大丈夫。」
「じゃあ、部屋に行っていい?」
匠の問いに、さっき帰った時のように緊張もしなくていいと分かったので、気楽に先に行くように言えた。
暖かいコーヒーを二つ持って部屋に戻ると、匠に分からない所を教えてもらいながら二人で宿題を済ませた。
途中で、母から電話があり11時位になりそうだけどハッキリとした時間が分かったら電話すると連絡が入った。
「あの…。」
「おばさん、遅くなるみたいだな。弁当買ってきてるから一緒に食おう。」
時計を見たら7時半すぎだ。
もう、匠に対して緊張も何もなくただ、匠が帰るのが遅くなるまで付き合わせるのは悪いと思った。
「11時頃になるらしいの。大丈夫だから、たっくんも食べたら帰ってね。」
朝、シャワーを浴びたしお風呂は二人が帰ってからで良いと考えて後は、一人でゆっくりつするもりになる、私。
お弁当を食べ終えて、また用意したコーヒーを部屋のテレビを見ながら、二人で飲んでゆっくりしていた。
「まぁちゃん。ちょっと来て。内緒の話。」
匠に手招きされ、リラックスしきっていた私は、背中をベッドにもたれかけて座っていた匠に歩みよる。
隣に座ろうとしたら、匠の長い足の間に匠に背を向け座らされ腕で囲われる。
げっ。しまった。捕まった。
罠に捕まったうさぎの気分でそう思った私が、ゆっくり身体をねじり匠の顔を見ると意地悪そうにニヤニヤと笑っている。
私、何かしたっけ…。
もしかして油断しすぎてたの…かな?




