噂
翌日の昼、ケスタを連れたギオは街一番の農場へと赴く。
ギオが派遣した警備員たちの守る、専属の大農場。
「こちらです」
農場主の案内に従って進むと、そこにあるのは広大な小麦畑の光景。
黄金色に輝く小麦がコンバインによって、短時間で大量に収穫されてゆく。
「収穫は順調のようだな」
一瞥してそう呟くギオ。
「近々、農地の拡大を計画しております。
つきましては、人手を何名か融通していただければと。
できれば健康的で若い方を…」
「それに関しては後日紹介する」
施設内に入ってゆく一行。
廊下の窓から見える戦場や選別作業の光景を横目にしながら、応接室へと通される。
下座に座る農場主。
ギオ達も着座すると、さっそく本題に切り込む。
「最近問題になっている悪質な買い占めについて、話し合いをしたい」
ギオがそう話した途端、農場長の表情が険しくなる。
「こちらが俺たちで調査したデータだ」
ファイルにあったのは、直近の市場のデータ。
最近起きた外大陸の戦争への軍事介入に伴う戦時体制への移行と、それによる需要の変化が記されている。
そこには、戦時物資である石油や鋼材、食料品が政府によって買い上げられた記録が羅列されている。
「最近、噂になっている。
戦争の拡大に伴って食料品が軍に安値ですべて買い上げられ、やがて配給制になっていくと」
「根も葉もない噂です」
「その通りだ。
だが、これを放置することはできない」
無根拠の噂の恐ろしさを知るギオ達。
過去には一般学生の会話が変容して広まり、都市銀行から莫大な金が引き出される事態に発展した事例もある。
「…それでだが、ここの作物をあえて割高で買いたい。
定価より二割高めでだ」
「なんと!」
驚く農場主。
ササッと契約書をしたため、押印を押す。
「そしてほかの生産業者に伝えろ、今なら割高で買いあげてやると」
「承知いたしました」




