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買い占め

「以上が今回の品でございます」

 夜の倉庫施設。

 何台もの大型トラックが停車する運輸施設の前で、小太りの商人が目の前の男たちにリストを手渡す。

 そこには生産業者から買い占めた食料品のリストが長々と羅列されている。

 米やパン、小麦粉などの主食品からチョコレートやポテトチップスなどの菓子類まで、合わせて数十トン分の食料品が段ボールの山に収められ、次々と倉庫に運び込まれてゆく。

「いつも助かります、これで書き入れ時に間に合います」

 ゲスな笑顔で取引を終える取引相手。

 成金のようなギラついた格好であり、とにかく品がない。

「では、また御用がございましたら、お電話を…」

 ゲヒヒと笑いながら、車に乗って去ってゆく男。

「さて、今回はいくら稼げますかねぇ」

 成金風の男が、月を見上げて哄笑する。


======


 ランデル国南東部、ロレスカトラ地区。

 憎悪と欲望にまみれた都市。

 政府にはすでに見捨てられ、犯罪組織ラグーンによる独自の統治がされている。


「それでは、今週の報告を聞かせて貰おう」

 ロレスカトラに建てられた要塞の地下に設けられた一室。

 豪華な食事の並べられた大きなテーブルを囲みながら、ラグーンのボスであるギオ・ナーランレスが今週の報告を尋ねる。

 時間に追われるマフィアメンバー。

 食事をとりながら、仕事の話を行う。

「まずは、私から報告させていただきます」

 すっと立ち上がる、ケスタ。

 角の生えた白い竜人であり、組織のナンバー2の地位にある。

「今担当しているプロジェクトですが、経過は順調です。

 来月には、本格的な採掘に取り掛かれるかと」

 大陸南部で新発見された金鉱山。

 その進捗具合を、ギオはステーキを食べながら耳を傾ける。

「ご苦労、追加の人手はいるか?」

「予備として三十人ほど」

「わかった、ミラー」

「はい」

 黒服の女性、ミラー。

 立ち上がるやファイルを開く。

 債務者と負債額が記されている。

「現在、返済不能となっている者が四十名ほどいます」

「額の大きいものから拉致しろ。

 問答無用で鉱山労働に回せ」

「承知いたしました」

 ボスの命令を手帳に記すミラー。

 続いて隣にいる恰幅の良いスクエ・アウィッグの男にギオの目が向く。

「次は私めが」

 起立するハッバ。

「現在、物流業界において、悪質な買い占めが確認されております」

「詳しく聞かせろ」

 悪質な買い占めと聞いて顔色が変わるギオ。

 ハッバの担当する食料品を主とするスーパーマーケット業。

 ラグーンのカモフラージュ企業として合法な表稼業を任されており、世間からの信頼も厚い。

「最近、悪質な販売業者が生産者から食料品を買い占めている様でして、商品価格が高騰しつつあります

 民間人への生活にも影響も確認しております…

 こちらが、報告をまとめたリストです」

「転売屋か…」

 リストを一瞥し、そう呟く

 近年社会問題となっている転売屋。

 商品を買い占めて品薄状態することで、価格を無理やり高騰させて売り抜ける手法。

 物品の流通を妨害して経済を破壊する悪質性から、ラグーンでも問題視されている。

「規模が大きいな、個人でどうこう出来る域を超えている。

 ケスタ、鉱山は後回しだ。

 まずはこれについて調査しろ。

 俺も同行する」

「承知いたしました」

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