↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/19

第5話:夕闇の交錯


「へぇ……僕に気づいてたの?」


街灯の光が届かない樹木の影から、軽やかな足取りで一人の少年が姿を現す。


不敵(ふてき)な笑みを浮かべ、こちらを見下ろす謎の刺客(しかく)。その周囲には、生き物のように蠢(うごめ)く漆黒のイバラが巻きついていた。


澪(りあ)は静かに振り返り、前髪の奥にある冷然(れいぜん)とした眼光(がんこう)で少年を見据えた。


「……何か用?」

「お喋りは嫌いなのかな? 僕、ずっと君とお話ししたいと思ってたんだ」

「話がしたいようには見えないけれど?」


後ろの樹木に深く突き刺さったイバラの矢を視線だけで示せば、少年はチッと短く舌打ちをし、ニヤリと口角を上げた。


「……まあいいや、本題に入ろう。君が、僕の探してる人かもしれないんだ」

「探してる人……? 何を言ってるの。今日、初めて会ったばかりでしょう」


冷ややかに言い放ちながらも、澪(りあ)の思考(しこう)は高速で回転していた。


「それに……この街に引っ越してくる前から、私を嗅ぎ回っていたわよね?」

「そうさ。よくわかったね」


少年は手を叩いて楽しそうに嗤(わら)う。


「まあ、そんなに警戒(けいかい)しないでよ。——君が本当に僕の探してる人か、確かめさせてもらうだけだからっ!」


言い終わるより早く、少年の腕から放たれた数本のイバラが、蛇のようにしなりながら澪(りあ)を襲う!


澪(りあ)は即座(そくざ)に後ろへ跳躍(ちょうやく)。公園の低い柵(さく)の上に軽々と着地した。


間髪入れずに追撃(ついげき)のイバラが視界を埋め尽くす。

澪(りあ)は空中へ身体を躍(おど)らせ、幾重もの攻撃を紙一重で回避(かいひ)。次の瞬間、宙で手のひらを一閃(いっせん)させた。 


薄暗い空気の中から一瞬で精製(せいせい)された水の刃が、迫るイバラを鮮(あざ)やかに切断する。


弾け飛ぶ水滴と、切断されたイバラの残骸(ざんがい)。

地面へ静かに着地した澪(りあ)を見つめ、少年は満足そうに目を細めた。


「……やっぱり、水使いなんだ」

「……だから何だっていうの?」

「ますます君とお話ししたくなったよ。——僕と、来てもらおうか」


少年が嘲笑(あざわら)いを浮かべ、じわじわと澪(りあ)との距離を詰めてくる。


澪(りあ)が身構え、手の平から水を精製(せいせい)し始めた——その時。


ガシャン——っ!


公園の曲がり角から、派手な金属音(きんぞくおん)が静寂(せいじゃく)を切り裂いた。


「……ちっ、タイミングが悪いね」


少年は心底つまらなさそうに吐き捨てると、一歩後退(こうたい)した。


「また会いに来るよ、澪(りあ)」


名前を呼ばれたことに澪(りあ)が目を見開いた瞬間には、少年は影の中に溶け込むように姿を消していた。 


刺客(しかく)の残した言葉の意味が分からず、混乱(こんらん)と警戒(けいかい)で息を乱す澪(りあ)。


その直後、曲がり角から一人の人物が姿を現した。

片手で自転車を押しながら、耳にはヘッドホン。片手で持ったスマホの画面を、難しい顔で見つめている。


赤霧(あかぎり) 炤(しょう)だ。

「え……?」


まさかの人物の登場に、澪(りあ)は思わず声を漏らした。


曲がり角を抜けた炤(しょう)は、持っていたスマホをポケットに押し込むと、前を向く。


そして、夕闇(ゆうやみ)の公園で肩を上下させ、必死に息を整えている澪(りあ)の姿に気づいた。


炤(しょう)は目を丸くし、ヘッドフォンを首に下げ、ポカンとした顔で言葉を発する。


「……どうしたんだお前、そんな息切らして?」


(第5話・了)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。