枠の増加を!!
私たちは再び首相官邸へ戻ってきた。
案内された部屋には、政府関係者が何人も集まっている。
「お疲れさまでした」
「お疲れさまです」
労りの言葉にこちらも頭を下げる。
背後で佐々木さんたちが言葉を交わす中、私は部屋の奥に置かれた大きなモニターへ目を向けた。
森の上空を飛んでいる私たちの姿が流れている。
どうやら異世界の午後の映像を、皆さんで確認していたようだ。
その中でも、技術職らしき人たちはモニターに食い入るような視線を向けていた。
空飛ぶソファの場面になると、画面を一時停止する。
拡大し、巻き戻し、また再生する。何度も同じ場面を確認している。
そのうちの一人が、ふとこちらを振り返った。
「あっ、田中さん!」
その瞬間だった。
先ほどまでかぶりついて映像を見ていた人たちが、一斉にこちらへ詰め寄ってきた。
「すみません! 一つだけ……いや、いくつか質問してもよろしいですか!?」
「えっ」
「あのソファの推進装置は何ですか?」
「ん?」
「あの高度まで上昇して、気圧や気温の影響はないんでしょうか?」
「えっと……」
質問が次々に飛んでくる。
「浮上するとき、機体がほとんど傾いていませんでしたが、姿勢制御は自動ですか?」
「空中で完全に停止していましたよね? あれはどういう原理なんでしょうか?」
「急停止していましたけど、あれだけの速度から減速して乗員に負荷はかからないんですか?」
「複数機で飛行していたとき、一定の間隔を維持していましたが、各機が個別に制御しているんでしょうか?」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
私は両手を突きだした。
質問する人たちも、そこでようやく我に返ったらしい。
「す、すみません」
「い、いえ、こちらこそ」
先ほどまでの勢いが嘘のように、皆さん気まずそうに視線を泳がせる。
私は軽く頭を下げた。
「すみません。私、あまり詳しくなくて」
「あ、そうなんですね……」
技術職の人たちは、少し残念そうにしながらも頷いた。
「えっと、映像の最後の方に出てきた男性がいますよね?」
一人がリモコンを操作する。
モニターに、レオン先生の姿が映し出された。
「あ、この人が空飛ぶソファを作った人です。レオン先生と言って他にも色々な魔道具に関わっていて。私の町では一番詳しい人です」
その瞬間、技術職の人たちの目に火が着いた。
「製作者……」「この人が……」「実際にお話を伺うことって可能でしょうか?」
遠慮がちに尋ねられ、私は頷いた。
「大丈夫だと思いますよ」
「ほ、本当ですか!?」
「はい。レオン先生にはお弟子さんもたくさんいて。工房というか、大きな研究所みたいなところで、皆でワイワイ試行錯誤しながら色々作ってますから」
「お弟子さん?」
「ええ。かなりいますよ」
私が何気なく答えると、技術職の人たちの間にどよめきが起き、彼らは互いの顔を見合わせた。
そしてーー
「……技術者枠が必要ですね」
誰かが呟いた。
「絶対必要です!今回の調査団に技術者がいなかったのが、おかしいんですよ!」
そこから先は早かった。
「上に掛け合いましょう!」
「最低でも五人」
「いや、分野を考えたら十五人は欲しい」
「欲張りすぎじゃないですか?」
「何を言ってるんです。むしろ少なすぎるくらいですよ!」
皆さんの声が、どんどん熱を帯びていく。私はそのやり取りを少し離れたところから眺めていた。
「田中さん」
「はい?」
振り返ると佐々木さんが、引きつった顔でこちらを見ていた。




