渋々
「ちょっとすみません」
調査団の面々に断って、通信を繋ぐ。
「はい、レオン先生。どうしました?」
『タナカさん、今どちらですか?』
「今は、近くの村の養殖業者さんの所です」
私は周囲を見回す。
「魔獣の素材を色々と購入させてもらって、これから空飛ぶソファで移動するところです」
『ああ、そうなんですね』
レオン先生には、調査団の人達については事前に話してある。
同郷の人たちであること。私の取り寄せで、かなり遠いところから来ていること。貿易について話し合うのが目的であること。
『今、町へ帰っている所なんですけどタナカさんの反応が近くで確認できたので、もしかしてと思って連絡しました』
「そうだったんですね」
レオン先生は昨日の朝から王都へ出張し、留守だった。
『同郷の方もご一緒ですか?』
「そうです。空飛ぶソファで観光中に魔獣を見て、村へ寄ったので」
私は興味深そうに腕輪を見ている佐々木さんたちを見る。
『それなら、ちょうどよかったです』
「え?」
『もう少しでそちらを通るので、合流しましょう』
「え、」
『少し話したい事もあるので』
「あ、はい。じゃあ待ってますね」
通信が切れた。
「……それは通信機ですか?」
佐々木さんが、私の腕に視線を向けながら尋ねた。
「そうなんです。スマホみたいな魔道具です」
腕輪型の通信機を軽く持ち上げる。
佐々木さんが興味深そうに頷く。
「あとすみません。ちょっとここで人と合流することになったので、少しだけ待機でお願いします」
待っている間、農家の人に頼み畑の様子を見せてもらう。
広大な畑には、見慣れない野菜がいくつも育てられていた。
「これは……なんでしょうか。想像がつきません」
「構造からして違いますね」
森田さんと田辺さんが膝をついて覗き込む。
佐々木さんも興味深そうに辺りを見て回り、高橋さんは少し離れた場所から全体を撮影している。
農家の人と交渉し、野菜を幾つか売ってもらう。
最初に気づいたのは警戒していた山田さんだった。遠くの空を見上げている。
「何か来ます」
私もそちらを見る。青空の向こうからこちらへ近づいてくるもの。
「あ、あれです。待っていた人が来ました」
調査団の誰も何も答えない。
巨大な建物が、ゆっくりと高度を下げ少し離れた何もない草原へ着陸する。
調査団全員が、言葉を失っている。
空飛ぶマンションの入口からレオン先生が姿を現す。
「タナカさん」
「あ、レオン先生」
軽く小走りのレオン先生。
「お待たせしてすみません」
「いえいえ」
私は調査団のほうへ振り返った。
「皆さん、紹介しますね。こちら、レオン先生です」
そして、レオン先生にも調査団を紹介する。
「私と同郷の皆さんです。ただ言葉がお互いに通じないようなので、あれなんですけど」
レオン先生はすぐに察したようで、調査団へ向かって丁寧にお辞儀をした。
調査団もそれに合わせ、一斉に頭を下げる。
「皆さん。どうぞ中へ」
レオン先生がマンションの入口へ手を向けた。
空飛ぶソファを、その場に残しておくわけにもいかないので、護衛たちのも含め、全て収納しておく。
マンションの応接間に落ち着いて早々、レオン先生が本題を切り出した。
「タナカさん。国王陛下から伝言を預かっています」
「伝言ですか?」
「はい」
レオン先生は少しだけ改まった表情になる。
「タナカさんと同郷の方々がこちらへ来ると、数日前王都へ報告しましたよね?」
「そうですね、一応私この国の領主ですし。報告はしますね」
レオン先生が頷く。
「国王陛下が、ぜひ直接お会いしたいとのことです」
「……国王陛下がですか?」
「ええ。タナカさんの同郷の方なら、ぜひ会談の機会を設けたい、と」
その話を、私はそのまま調査団へ伝えた。
佐々木さんはしばらく考え込んでいたが、やがて困ったように私を見る。
「……タナカさん。一度、私達と一緒に日本へ戻っていただけませんか?」
「え」
「この件は最早、私一人の手に負える話ではありません。国王陛下との会談となれば、政府にも早急に報告する必要があります」
「いやぁ、でも」
気乗りしない思いが顔に出ていたのか、佐々木さんが申し訳なさそうに頭を下げた。
「お願いします。どうか一緒に戻ってください」
「…………」
ここまで頼まれてしまうと、断るのも難しい。
「……分かりました」
私は渋々ながら頷いた。
「一度、日本へ戻りましょう」
ここ数話、微妙ですみません
事前に~になるって分かってると面白さが激減しますね 失敗でした(ノД`)




