エグいんですよね
時は少し遡る。
森での調査を終えた私達は、町へ戻ってきていた。
通りにはいくつもの屋台が並び、香ばしい匂いが食欲を刺激する。
「あの、田中さん。私たちはこちらの通貨を持っていないので、日本から持ってきた物を換金したいのですが……。そういうところはありますか?」
「あ、そうですね」
佐々木さんからの申し出に少し考える。
「質屋は隣町なんですよね。それにこれから貿易する際の参考にしたいので、ここは私が払いますよ。味の感想を教えて下さい」
「いえっ、そういうわけには」
慌てる佐々木さんをまぁまぁいいんですよと手で制す。
「まずはここです。この串肉が絶品なんですよ」
鉄串に刺された大きな肉が、炭火の上でじゅうじゅうと音を立てている。
「大きな肉ですね」
森田さんが呟く。
「ギモー肉っていうんです。あ、百本お願いします」
「百本!?」
その後も屋台をいくつも回り、揚げ物や果物など次々と買っていく。調査団の皆で手分けして持っても、抱えきれないほどの量になった。
護衛の人たちにも少々持ってもらい、私たちは広場へ向かった。空いている場所に思い思いに腰を下ろす。
「それじゃあ、食べましょう」
それぞれが気になるものを手に取って食べ始めた。
串肉にかぶりつく者もいれば、揚げ物を頬張る者もいる。果物を手に取り観察し、味を確かめている人もいた。
私も串肉を食べる。うん美味しい。
少し離れたところでは、護衛の皆さんも立ったまま食べている。周囲への警戒を続けながらも、美味しそうに串肉を頬張っていた。
美味しい食事を終えると、しばらく腹ごなしに休憩することにした。
森田さんと田辺さんは護衛を連れて、周辺の散策と採取へ向かう。高橋さんもカメラを手に二人についていった。
自衛官の山田さんは少し離れた場所に陣取り、護衛と共に周囲を警戒している。残った私は、佐々木さんと並んで座り、広場を眺めていた。
しばらく黙っていた佐々木さんが、不意に口を開いた。
「実は先ほどから、ずっと気になっていることがあって。聞いてもよろしいでしょうか?」
「なんでしょう?」
「先ほど、高橋さんを一度日本へ戻しましたよね」
「はい、そうですね」
私は頷く。
「どうやって戻したのか、隣で見ていたのに全く分からなくて」
「あー……」
私は少しだけ言葉に詰まった。
「特に道具のような物は使ってませんでしたよね?」
「はぁ……」
「行う場所も関係なさそうでしたし」
「まぁ……」
「田中さん自身の能力、ということでしょうか?」
「そう、なりますねぇ……」
私が肯定すると、佐々木さんは小さく二度頷いた。
「差し支えなければ、その能力についてもう少し伺っても?」
私は少し考えた。
正直もうだいぶ好き勝手してしまっているので、正直に話してもいいかもしれない。ただちょっとスキル名が微妙なのだ。
《地球所有》
改めて見ると、凄い字面である。ちょっと、いや、かなりえぐい。人様には中々言いづらいものがある。
「そう、ですね……地球にあるものを、こちらに持ってきたり……逆にこう戻したり、とか」
「なるほど……」
佐々木さんは思案するように首を傾けた。
「では、先ほどの高橋さんも、田中さんが任意で選び、戻したと?」
「そうですね……」
「……人間も対象にできる、と」
「まぁ」
「……なるほど」
佐々木さんは俯き、頭の中で何かを高速で組み立てているようだった。こういうのを見ると、やっぱり頭のいい人なんだろうなと思う。
「……しかし、田中さんが認識したもの、となると……。それはいったい、どこまでの範囲で可能なのか……」
「あーー……えっとですね……まぁ私が所有しているものが、扱えるんですよね」
「…………」
佐々木さんが難しい顔で黙った。
先ほどまでのように、すぐに次の質問が飛んでこない。
「田中さんが、所有しているものですか?」
「はい」
佐々木さんは訝しげに、確かめるようにその言葉を繰り返した。
私は頷く。
佐々木さんは何かを考えるように視線を落とした。頭の中で色々繋ぎ合わせているのだろう。
やがて、佐々木さんがゆっくりと顔を上げた。
「……その所有、というのは?」
「私のスキルなんです」
「スキルですか?」
「はい《地球所有》というスキルです」
「…………」
佐々木さんが固まった。見てはいけないだろう表情をしている。
「《地球所有》……?」
「そうです」
佐々木さんは、しばらく何も言わなかった。やがて、慎重に言葉を選ぶように口を開く。
「田中さんは……地球を所有している、ということですか?」
「はい」
佐々木さんが完全に言葉を失った。
難産でした
くどくなってすみません




