地球Side自衛隊⇄◯◯◯
美味しそうに飲む田中愛子を見て、それぞれも手元の容器を手に取る。缶によく似た形をしている。だが
『すみません。これは、どう開けるんでしょうか?』
佐々木が容器を上下左右から眺めながら尋ねる。他の四人も同様だ。プルタブのようなものが見当たらない。
『あっ、失礼しました。二、三回軽く振ってください』
言われた通り容器を軽く振る。すると、淡い光が一瞬だけ走り容器の上部が、跡形もなく消えた。
『……!?』
五人が目を見開く。
『ま、魔法ですか?』
『あ、いえ。魔法もあるんですけど、これは魔道具の方ですね。うちの町の一大産業なんですよ』
最近、量産化に成功したのだと嬉しそうな田中愛子に勧められ、それぞれ口をつける。
『……美味しい!』
よく冷えた桃のように甘く、しかしすっきりした味が口の中に広がる。
生物学を専門とする森田が、もう一口飲んでから尋ねる。
『これは、何の果物ですか?』
『ふふ。これ果物じゃないんですよ』
『え?』
田中愛子が少し得意げに笑う。
『湧き水なんですよ、これ。もともとこういう味の』
『ええっ、湧き水?これが?』
『はい』
『そ、その水源、見せてもらうことって……?』
『あぁ大丈夫ですよ。この後町を案内するので、ついでに寄りましょう』
『ありがとうございます。ぜひお願いします』
森田は即答した。
『では、そろそろ町を見て回ろうと思うんですけど』
田中愛子が立ち上がる。
『念の為皆さんにも護衛をつけておこうと思いまして。一人につき二人の護衛をですね』
『えーーと、それはこちらとしては非常にありがたい話ですけど、よろしいんですか?』
『はい、大丈夫です。何か予想外なことがあったらいけませんしね』
調査団の五人も立ち上がり、後に続いて屋敷の外へ出る。
そして――足が止まった。
屋敷の周囲には、いつの間に集まったのか、武装した男たちがずらりと並んでいた。
二十人、三十人……。そのさらに奥にも。
佐々木が思わず田中愛子を見る。
『えっと、この方たちは、全員護衛、ですか?』
『あ、はい』
田中愛子は周囲を見回した。
『そうなんです。最近また少し増えて』
『は、はぁ』
『今は全員で、七十人が付いてくれてて』
『な、七十人!?』
思わず声が上ずる佐々木。
田中愛子は少し困ったように笑った。
『あ、もちろん交代制ですよ?なんか国王陛下が色々心配して、追加手配してくださったんです』
『…………』
調査団の視線が、もう一度周囲へ向く。
屈強な眼光鋭い男たちがうじゃうじゃいる。
『あのーー、国王陛下が心配というのは……?』
『あっ!?』
田中愛子の表情が、一瞬で固まった。
『いや、えっと全然大したことじゃないんですけど、はい。ちょっとその色々ありまして』
そう言って、田中愛子は顔をそらした。
『…………』
『…………』
【ちょっともう情報量が多過ぎて】
【新情報を雑に詰め込みすぎだろ】
【魔法!魔道具!美味湧き水!国王!護衛70!】
【渋滞どころか色々事故ってる】
【こいつ絶対なんかやらかしてるだろ】
【絶対何か隠してますわ】
【MACCHO多すぎィ!】
【自衛隊山田「俺……いる?」】
微妙な沈黙が流れる中。
『で、では、そろそろ行きましょうか』
田中愛子が、少しだけ早口で話題を切り替えた。
それを機に、調査団にはそれぞれ二人ずつ護衛が付き、残りの者たちは周囲へ散っていった。
それを確認すると、田中愛子が歩き出す。五人も、その後に続いた。
屋敷前の小道を抜けると、目の前に町の通りが広がった。
石畳の道を挟んで店や工房が並び、少し先では新しい建物が次々と建てられている。完成した建物と建設途中の建物が混在し、町全体が今まさに広がっているようだった。
道を行き交う人も多く、あちこちから活気のある声が聞こえてくる。そんな中を歩いていると、すれ違う人々から次々と声をかけられた。
『――――――、タナカ!――――――――』
『こんにちは』
『――――――――、タナカ――――――――』
『わぁ、ありがとうございます』
五人には何を話しているのか、まったく分からない。聞き取れるのは『タナカ』だけ。
通りを進むにつれ、建設現場が増えてきた。
宙に浮いた巨大な石材が、建物の上まで運ばれていく。
淡く光りひとりでに動く土砂。
職人の操作する何かにより、石畳が自動で次々と敷かれていく。
『…………』
調査団は、目の前の光景から目を離せなかった。
【いい町じゃん】
【活気あるなーー人多い】
【領主様めっちゃ慕われてる】
【しかしタナカ以外分からん】
【言語問題、地味に深刻で草】
【田中愛子めっちゃ馴染んでんな】
【ちょっと待て!!今、獣耳いたぞ!!】
【尻尾!!今の人尻尾あったよな??】
【戻って!!カメラ戻してくれ!!】
【今の見た!?見たよな!?】
【一瞬すぎるだろwww】
【右の店の前!!】
【獣人いたあああああ!!】
【調査団、後ろ!!後ろ見て!!】
【普通に気づいてなくて草】
【こういう時のために一人オタク入れとけよ!!】
【調査団に異世界オタク枠が必要だった】
【悲報!!政府人選ミス】
【異世界の街づくり、スケールがおかしい】
【石材浮いてて草】
【土木が未来すぎるんですが】
【魔法は重機!!】
【建設業界大歓喜だな】




