地球SideWWWWWW
『皆さん、かなり荷物がありますね』
田中愛子が、五人の抱えているバッグやケースへ視線を向けた。
『何があるか分かりませんから、あれもこれもと詰め込んでしまいまして』
佐々木が苦笑する。
『でしたら、先に部屋へ荷物を置きに行きましょうか』
そう言って、田中愛子は建物へと歩き出した。五人もその後に続く。
大きな扉をくぐり、廊下を進む。
中は明るく、清潔だった。柔らかな光が建物全体を照らしている。
異世界の建物とは思えないほど、整った空間だった。
『こちらです』
案内されたのは、いくつもの部屋が並ぶ一角だった。
『一人に一部屋ずつ用意していますので自由に使ってください』
田中愛子が扉を開ける。
五人が中を覗き込み、足を止めた。
大きなベッドに机。椅子や収納家具まで揃っている。
さらに部屋の隅には、小さな台所、お手洗いまで備え付けられていた。
『……至れり尽くせりですね』
佐々木が、思わず呟いた。
正直なところ、五人はもっと厳しい環境を想定していた。
異世界なのだから、満足な寝床すらないかもしれない。場合によっては、野宿も覚悟していた。
それが、蓋を開けてみれば一人一部屋の快適な部屋。
五人は、なんとも言えない表情で顔を見合わせた。
【俺の部屋より広いんだが】
【異世界の領主様、客人への待遇が良すぎる】
【異世界バカンス始まってて草】
【政府準備班「……」】
荷物をそれぞれの部屋へ置き終えると、田中愛子が廊下で五人を待っていた。
『では、皆さん。これからの予定についてお話ししましょうか』
『はい』
田中愛子に案内され、五人はリビングへ向かった。
大きなテーブルを囲み、それぞれ腰を下ろす。
その時だった。田中愛子の斜め後ろに立っていた護衛の一人が、何かを話しかけた。
『――――――』
『あ、そうですね。皆さんの分もお願いします』
田中愛子が、にこやかに頷く。
調査団の面々は顔を見合わせた。今のは、何語だ?
聞いたことのない響きだった。
『あの』
『はい?』
『今のは、何語でしょうか?』
『え?』
『私たちには、聞き取れなかったんですが……』
『…………ええっ?』
田中愛子が目を見開く。
パッと振り返り、背後の護衛二人を見る。
『もしかして……二人も、私たちが何を話してるか分からない感じ?』
二人の護衛が顔を見合わせる。
そして、若い方の護衛が『――――――』と肩をすくめた。
田中愛子も困惑したように眉を寄せた。
『えーー。私、ずっと普通に日本語を話してるんですけど』
『……』
『そうですか……いやぁ、言葉が通じないのは困りましたね』
【いやいやいやwww】
【普通は通じないんだよw】
【異世界転移者に言語チートは定番】
【言語学者、しばらく寝られないな】
微妙な空気を払うように護衛の一人が、部屋の隅にある箱へ向かった。
扉を開け、飲み物を取り出していく。
六人分を両手に抱え、テーブルへ戻り配っていく。
『――――――』
それぞれの前に置かれた飲み物を受け取り、六人がそれぞれ頭を下げる。
『ありがとうございます』
『ありがとうございます』
『どうも』
護衛は小さく頷くと、再び田中愛子の後ろへ戻った。
飲み物を口にした田中愛子が、ふと思い出したように口を開いた。
『そういえば、まだちゃんと紹介してませんでしたね』
二人の護衛へ振り返る。
『こちらがカクさんです。こっちはスケさん。二人とも私の護衛をしてくれています』
紹介された二人が、調査団へ向かって軽く頭を下げた。
【おいwwwwww】
【カクさんwww】
【スケさんwww】
【その名前は反則だろwww】
【異世界で水戸黄門は草】
【初となる異世界人紹介で笑わせてくるなwww】
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