地球Side異世界公開
高橋が持ち帰った記録媒体は、すぐに政府による確認へと回された。政府関係者を中心に、関係省庁や自衛隊、今回の調査に関わった専門家たちが集まり、二時間に及ぶ映像を徹底的に確認する。
そして数時間後、政府は短い発表を行った。
『調査団が現地で撮影した映像について、安全上の問題がないことを確認しました』
そして――。
『本日午後七時より、調査団が撮影した映像の全編を公開します』
その瞬間、日本中が再びお祭り状態になった。
【あと5分】
【あーワクワク】
【全編公開ってすげえよな】
【何が映ってるんだろ】
【というか五人が無事って分かっただけでも安心したよ】
【カメラマン高橋、戻ってきて即リターンしたけど】
【あれ何度見ても笑う】
【家族全員リビング集合した】
【あと30秒】
【きた】
【始まるぞ】
【異世界クル━━━━(゜∀゜)━━━━!!】
【うおおおおおおおお】
【始まった!!!】
映し出されたのは、五人の調査団が異世界へ向かう直前の映像だった。
内閣官房副長官・大関の『……時間です』の声と同時に五人の足元に――白い光が浮かび上がる。
白い光が、一気に画面を覆った。
【何も見えんw】
【真っ白】
【転移中ってこんななんだ……】
やがて白い光が消え、画面に異世界の景色が映し出された。
吸い込まれそうなほど澄んだ青空。調査団のすぐ近くには、石造りの大きな建物が建っている。その向こうには石畳の道が伸び、町並みが広がっていた。
調査団が立っているのは、きれいに整えられた広い庭だった。色とりどりの花が咲き、穏やかな風に揺れている。
一見すると、どこかヨーロッパの古い町並みを思わせる景色だった。
【うおおおおおおおお】
【異世界いいいぃぃぃ】
【これが、、、異世界?】
【てか思ったより普通だな】
【だな】
【もっと空が紫色とか思ってました】
【二つ太陽があったり】
【ドラゴンはどこですか】
【思った10倍ヨーロッパ】
【隣の建物デカくね?】
【見る限り想像以上に文明あるな】
【もっと未開の土地かと思ったじゃん】
【普通に町】
【異世界、案外行けそうな気がしてきた】
『こんにちは』
女性の声がした。高橋のカメラが、その方向へ向く。
大きな建物の扉が開き、一人の女性が姿を現した。
『……田中愛子』
カメラマンの高橋が、思わず呟いた。行方不明になっていた日本人女性。
田中愛子は五人のもとまで歩いてくると、穏やかな表情で頭を下げた。
『はじめまして。田中愛子です』
『……はじめまして』
五人を代表して、内閣府の佐々木が答える。他の面々も頭を下げている。
『来てくださりありがとうございます。お手数をおかけしますが、よろしくお願いします』
『いえ。こちらこそ、よろしくお願いします』
あまりにも普通の挨拶だった。
高橋がカメラを少し横へ向ける。
田中愛子の少し後方に、二人の男が背筋を伸ばして立っているのが映った。どちらも微動だにせず、鋭い視線を周囲へ走らせている。
調査団の面々も気になったらしい。
『……あの方たちは?』
佐々木が尋ねる。
『あ、護衛です。一応私、領主みたいなものなので』
『……領主?』
その言葉に、五人の動きが止まった。高橋のカメラも、わずかに揺れる。
田中愛子は、少し照れくさそうに笑った。
【普通に元気そうな田中愛子草】
【ちょっと待って】
【後ろの男二人】
【異世界人だよな?】
【人間だ】
【普通に人間に見える】
【悲報、俺氏の夢、開始3分で終了】
【俺のエルフ嫁、どこ……?】
【異世界に行ったら猫耳娘に会えると思ってた俺、無事死亡】
【????????】
【は?】
【今なんつった???】
【領主!?】
【カメラも揺れてて草】
【カメラマン高橋も動揺してるじゃねーか】
【パワーワード異世界の領主・田中愛子】




