地球Side24時間配信中
現場は、異様な雰囲気に包まれていた。
鉱物が出現した巨大な穴の周囲の警察、自衛隊、研究者、技術者、政府関係者、報道陣、その全員が防護服に身を包んでいる。
白い完全防護服、手袋、ゴーグル。呼吸器も装着し、少しでも鉱物に触れる可能性がある場所は、慎重に作業が進められていた。
すでに現場では、放射線量や周囲の大気、揮発性物質などの簡易検査が行われていた。
結果として、現時点で人体に危険を及ぼすような反応は確認されていない。
「……未知すぎますからね」
そう呟きながら、一人の研究者がトングを使って割れた鉱物を拾い上げる。
地球上の既知の物とは明らかに違う。色も、光沢も、これまでにない特徴ばかりだった。
「慎重に。まずは表面の状態を記録しましょう」
「了解」
沖田教授の指示で別の研究者がカメラを向け、細かな傷や結晶の形状を記録していく。
研究者たちは互いに声を掛け合いながら、決して急がず、少しずつ調査を進めていった。
中でも、研究者たちが特に注目していたのが、一定の間隔で強く点滅する鉱物だった。
「これはなぜ、光ってるんでしょうね……」
「ええ。発光現象そのものは珍しくありません。蛍石・方解石・灰重石・ウラン鉱物・珪亜鉛鉱などが存在しています。ですが」
沖田教授は手元の様々な測定器へ視線を落とした。
「この鉱物は、これまで確認されている発光鉱物とはまったく違う性質によるものですね」
「熱によるものでもない?」
「違います。温度は周囲とほぼ同じです」
「電気を流しているわけでもない」
「はい」
研究者たちは顔を見合わせ慎重に採取し、透明な密封袋へ入れる。
「封をします」
袋の口が閉じられた――その瞬間、鉱物が、それまでとは明らかに違う濃度で光った。
「……!?」
周囲の研究者たちが一斉に顔を上げる。
「これはっ!?」
「明らかに光が強くなった」
袋を開ける。光が元に戻る。再び閉じる。パァッ――。
別の研究者がすぐさま測定器を向ける。
「発光強度、記録します!」
「記録中です!」
沖田教授も鉱物から目を離さない。
「密封が原因なのか?」
さっきまでの慎重な空気が、わずかに変わっていた。未知の鉱物を前にした緊張感。その中に、研究者たちの抑えきれない好奇心が混じり始めていた。
その後も、研究者たちは採取した様々な鉱物を一つずつ密封袋へ収めていった。
その中に握り拳ほどの大きさをした赤い鉱物があった。
研究者が袋へ入れ、口を閉じる。
「よし……」
袋の端を持ち、持ち上げようとした。
「……ん?」
手が、拍子抜けするほど軽く上がった。
軽い。
あまりにも軽い。
「……ちょっと待ってください」
研究者が袋を持ったまま、怪訝そうに眉を寄せる。
「これ、ほとんど重さがないんですけど」
近くにいた研究者が駆け寄り、袋を受け取った。
「……本当だ」
「貸してください」
別の研究者も受け取る。
「軽い……」
さらに別の人間が手を伸ばす。
「これ、本当に鉱物ですか?」
「重量、測りましょう」
測定器へ袋を載せる。
表示された数値を見た研究者が、固まった。
「……ゼロ?」
「え?」
「ゼロって出てます」
周囲から一斉に人が集まってくる。
「測定器の不具合じゃないのか?」 「別の測定器を」 「待ってください、こっちで測ります」
複数の測定器で確認する。しかし、結果は変わらない。
研究者たちの視線が、自然と足元へ向いた。
そこには、赤い鉱物が転がっている。
「……これ、ですよね」
一人の研究者が呟いた。
ちょうど鉱物の一部に、大きな亀裂が入っている。
「ちょ、危ないですよ!」
「ちょっとだけ」
研究者は膝をつき、亀裂へ両手を掛けた。そして――
「よっ……」
ぐっと力を込める。ひょい。
「…………は?」
持ち上げた。身の丈の三倍ほどもある巨大な赤い鉱物を、あまりにも簡単に。
周囲が静まり返った。
持ち上げた本人が、一番驚いた顔をしている。
「これ……」
巨大な鉱物を抱えたまま、呆然と呟く。
「しっかり硬いのに発泡スチロールより軽いです」
先ほどまでとは違う種類の驚きに、研究者たちは赤い鉱物へ殺到していった。
【定点カメラ12台が24時間配信中】巨大穴・鉱物出現現場を24時間監視するスレ Part143
名無しの観測者 今日もめちゃくちゃ人いるな
名無しの観測者 うじゃうじゃ何人いるんだよこれ
名無しの観測者 しかも全員完全防備で草
名無しの観測者 白い防護服だらけで映画みたいになってる
名無しの観測者 放射線とか大丈夫なの?
名無しの観測者 簡易検査では今のところ異常なしって話
名無しの観測者 まあな地球上に存在しない可能性がある石だぞ
名無しの観測者 研究者めっちゃ俊敏に動いてる
名無しの観測者 あっち行きこっち行き
名無しの観測者 お、なんか集まってきた
名無しの観測者 めっちゃ寄ってきたw
名無しの観測者 ケーキに群がる蟻みたいになってんじゃん
名無しの観測者 やめろwww
名無しの観測者 いやちょっと待て
名無しの観測者 え、持つの?
名無しの観測者 おいおいおい
名無しの観測者 危ないだろ
名無しの観測者 ……
名無しの観測者 持った
名無しの観測者 え?
名無しの観測者 待って?身体の三倍はあるけど??
名無しの観測者 うそだろデカすぎるだろ
名無しの観測者 なんだこれwww
名無しの観測者 持った本人が一番キョドるの草
名無しの観測者 完全防護服が巨大な赤い石抱えて固まってるのシュールすぎる
名無しの観測者 また地球の常識が一個死んだな
名無しの観測者 この現場、毎日何かしら起きてない?
名無しの観測者 政府は24時間定点カメラ設置して大正解だったな
名無しの観測者 今、どんな娯楽より面白いまである
名無しの観測者 分かる 「何か起きるかな」ってずっと見てる
名無しの観測者 研究者の皆さん頑張ってください
名無しの観測者 そして明日も何か発見してください
名無しの観測者 もう完全に観察日記になってて草




