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異世界転移したら、地球を所有してました  作者: りどみ


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地球Side露呈

【衛星画像観測スレ Part87】


 名無しの探索者

 暇だったから過去画像と最新画像見比べて遊んでたんだけど、ちょっと意味分からん場所見つけた


 名無しの探索者

 どこ?


 名無しの探索者

 座標貼れ


 名無しの探索者

【座標】


 名無しの探索者

 見てきた

 ……何これ?


 名無しの探索者

 俺も開いた

 この丸なに?


 名無しの探索者

 比較画像頼む


 名無しの探索者

 作った

【昨日】 【現在】


 名無しの探索者

 え……


 名無しの探索者

 いやいやいや


 名無しの探索者

 えぐれてんじゃん


 名無しの探索者

 崖崩れじゃないよな?


 名無しの探索者

 違う

 綺麗すぎる


 名無しの探索者

 自然でこんな形になることある?隕石落ちた?


 名無しの探索者

 コンパスで線引いたみたいな真ん丸


 名無しの探索者

 しかもデカい

 縮尺見たら笑えない


 名無しの探索者

 何キロあるんだこれ


 名無しの探索者

 面積計算してる

 ちょっと待って


 名無しの探索者

 誰か画像重ねて

 位置ズレの可能性ある


 名無しの探索者

 重ねた

 道路も尾根も全部一致してる

 土、消えてるのこの円の中だけ


 名無しの探索者

 怖っ


 名無しの探索者

 掘削工事じゃない?


 名無しの探索者

 この規模ならニュースになるだろ


 名無しの探索者

 重機何百台必要だよ


 名無しの探索者

 航空写真も確認した

 同じ


 名無しの探索者

 Googleだけじゃないの?


 名無しの探索者

 別会社の衛星画像でも同じ場所が無くなってる


 名無しの探索者

 バグ終了


 名無しの探索者

 待て待て待て

 じゃあ本当に地面が抉れてるってこと?


 名無しの探索者

 何でこんな綺麗な円なんだよ笑


 名無しの探索者

 切り抜かれたみたいじゃねーか















「これ、絶対バズるぞ」


 ハンドルを握る健太は、アクセルを少し強く踏み込んだ。

 先ほど、何気なく眺めていたオススメ動画に流れてきた『巨大な円形状に土地が消えた』

 最初はいつものネタスレだと思って鼻で笑った。


 だが、次々と貼られる比較画像、複数の衛星画像サービスで一致する地形、そして「自然現象では説明できない」という住人たちの検証結果を見ているうちに、冗談では済まされない気がしてきた。

 興味本位で座標を地図アプリへ入力した健太は、思わず声を上げた。


「近っ……」


 現場は、自宅から車で一時間ほど。日帰りできる距離だった。


「登録者二十万じゃ、このネタは逃せないだろ」


 運転席で笑う健太に後部座席、撮影担当の翔もカメラケースを抱えながら頷く。


「もし本物なら、とんでもない再生数になるぞ」

「現地確認してる人もまだいないみたいだしな。ドローン映像まで撮れたら勝ちだ」


 翔は後部座席に積んだ機材へ目を向けた。

 カメラ二台。

 予備バッテリー。

 そして、空撮用のドローン。


「タイトルどうする?」

「『ネット騒然 謎の巨大穴を現地調査したらヤバすぎた』かな」

「サムネは崖バックで決まりだな」


 二人は笑い合う。その時はまだ、軽い気持ちだった。

 "少し変わった地形"を撮影して帰るだけ。何もなくても、それはそれで一本の動画になる。

 だが、本当にあんな巨大な穴があるなら──それだけで数百万再生も夢ではない。






 

 

 

 車は人気のない山道を進んでいく。

 やがて舗装道路が途切れ、二人は車を降りた。カメラや照明などの機材を抱え、木々の間へと足を踏み入れる。

 健太はカメラを構えた翔に向かって笑った。


「というわけで今から、巨大穴に向かいます。ガチで何かあるのか検証していきましょう」


 事前告知を見た視聴者たちが続々と配信へ集まり、画面の同時接続者数は普段を大きく上回る勢いで増え続けていた。


『始まった!』 『待ってた!』 『Google Earthの件だよな?』 『本当に現地なの』 『ガセかどうか見届けるわ』


 流れ続けるコメントを横目に、健太は笑みを浮かべる。


「それじゃあ行きますか」


 健太はスマホを取り出し、目的地の地図アプリ座標を確認した。


「えーっと……このまま真っすぐですね」


 健太はスマホに表示された座標を確認して頷いた。二人は落ち葉を踏みしめ、木々の間をゆっくりと進んでいく。

 昼間だというのに森は薄暗く、風に揺れる枝葉がざわざわと音を立てていた。

 配信のコメント欄は相変わらず賑やかだ。


『楽しみ』 『釣りじゃないよな?』 『熊いませんように』 『何もなかったら笑う』


「まあ、何もなければそれはそれで」


 健太は笑いながら振り返る。それから一時間、立ち止まっては何度もスマホで周囲を確認し歩く。


「あ、そろそろですね。あと百メートルくらい」


 足取りが自然と速くなる。

 落ち葉を踏み鳴らす音だけが静かな森に響いた。健太は画面を見つめたまま呟く。


「もうす――うわっ!」


 健太が突然叫び、反射的に後ろへ飛び退いた。

 目の前の地面が、不自然なほど唐突に途切れていた。あと一歩踏み出していれば、そのまま落ちていた。


「あっぶな!!なにこれっ」


 切り立った崖。

 足元から一直線に落ち込む黒い空間は底が遠く、冷たい風だけが下から吹き上げてくる。


 健太は息を呑み、心臓を押さえながら崖下を覗き込む。


「マジかよ……危なすぎんだろ、ここ!」

 

 コメント欄が一気に流れ始めた。


『待て待て待て!』 『横見ろ!』 『それ谷じゃないぞ!』 『画面右に振って!』


「……は?」


 意味が分からず、翔は言われるままカメラをゆっくり右へ向けた。崖は途切れることなく、ずっと先まで続いている。


「……長いな」


 さらに右へ。それでも終わらない。


『今度は左!』 『ずーっと辿れ!』


 今度は左へカメラを振る。こちらも同じだった。

 切り立った崖は左右どちらへも果てしなく続き、だがよく見ると真っ直ぐではない。

 緩やかに、わずかずつ内側へ曲がっている。


「……おい」


 カメラを持つ翔の声が震えた。


「これ……谷じゃないぞ」


 健太も黙ったまま、もう一度ゆっくりと周囲へ目を向ける。右、左。

 そこでようやく理解した。

 視界に映る崖は、巨大な弧を描くように続いている。


「……うっそだろ」


 目の前にあるのは崖ではない。

 自分たちは、想像を絶する巨大な円形の穴の縁に立っていた。あまりにも巨大すぎて全体像を認識できなかったのだ。

 二人は言葉を失い、ただその穴を見つめることしかできなかった。


 流れ続けるコメントだけが、画面を埋め尽くしていた。







『デカすぎる……』 『いやいやいや』 『待って、これ全部穴なの?』 『向こう側見えねぇ』 『縮尺おかしいだろ』 『人間小さすぎ』 『ドローン!ドローン飛ばせ!』 『鳥肌立った』 『これマジならニュースになるぞ』 『なんで今まで誰も気付かなかった?』 『笑えねぇ……』『こんなの日本にあるわけないだろ嘘乙』


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