地球Side刑事
北海道、鮮魚市場の防犯カメラ。
田中愛子は店内をゆっくりと見て回り、カニやホタテ、鮭など海産物を次々と買い物カートへ入れていく。
その量は、やはり異常に多い。上下のカゴに溢れんばかり。
会計を終えると、田中愛子は袋詰めした複数の袋をカートに乗せ人気のない物陰へ。
その先は、石垣島で見た映像と同じだった。
白い光と共に姿は跡形もなく消え、数十秒後再び白い光と共に現れ追加の買い物をする。
同じ現象は福岡県でも確認された。
駅構内の土産店で豚骨ラーメンの箱を次々と購入。
山梨県では高級果物専門店。シャインマスカット、桃、巨峰、さくらんぼ。贈答用として並ぶ高級フルーツが、次々と台車へ積み上げられていく。
会議室には重苦しい空気が流れていた。
解析担当は最後の映像を映し出した。
「これが、通信記録で確認できた最後の映像です」
大型モニターに映し出されたのは、山梨県郊外の業務スーパー。そこで焼肉のタレをケース単位で次々とカートへ積み込んでいく田中愛子。
上下二段のカゴは、焼肉のタレで埋め尽くされていた。
「……巨人とバーベキューでもするんですかね」
大型モニターには、田中愛子を正面から捉えた映像が停止したまま映し出されている。やがて黒崎が静かに口を開いた。
「今回、はっきりしたことが幾つかあるな」
会議室中の視線が黒崎へ集まる。
「田中愛子は、自らの意思でこの何らかの能力を使用しているという事だ」
誰も口を挟まない。
「消える場所も、戻るタイミングも一定だ。迷いも戸惑いもない。意図的に能力を使っている人間の動きだ」
張り詰めた空気が流れる。
「次に、購入した物品を置く拠点が存在するであろう点だ。住んでいたアパートは既に解約されている。唯一の血縁者である叔母とも関係は良好とは言えず、連絡している形跡もない」
黒崎は資料を机へ置いた。
「我々警察が把握していない活動拠点があるんだろう」
黒崎はリモコンを操作し、各地の防犯カメラ映像を並べて表示した。
「最も気がかりなのは田中愛子が、防犯カメラを気にしていないということだ」
会議室に静かな緊張が走る。
「いずれの場所でも、防犯カメラが設置されている店舗を利用している」
映像には、店内を歩き回り、商品を選び、レジで会計を済ませる田中愛子の姿が映っている。
「防犯カメラがある事は分かっているはずだ。だが帽子やマスクで顔を隠そうともしていない。カメラの位置を確認する素振りもない。映像に映ることを避ける行動が、一切見られない」
黒崎は腕を組んだ。
「自分は捕まらないと考えている……?」
誰かが小さく呟く。
黒崎は静かに頷いた。
「その可能性は高い。防犯カメラに映ったところで、我々が現場へ到着する前に、姿を消せばいいだけだ」
誰かが小さく息をのんだ。
黒崎は机の上に置かれた資料へ視線を落とした。
もしくは……本人にとって、既にどうでもいいことなのかもしれない。
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