地球Side刑事
「位置情報が出ました! 場所は……石垣島です!」
黒崎は椅子を蹴るように立ち上がった。
「石垣島県警へ連絡。空港、港、主要道路を押さえろ。基地局周辺の防犯カメラも確保だ」
「了解!」
会議室が一斉に動き始める。
「空港へ急行する、航空機の手配を頼む」
エレベーターを待つ時間すら惜しい。階段を駆け下り、警視庁の玄関を飛び出す。パトカーのドアが次々と閉まり、サイレンが鳴り響いた。
「石垣島県警には連絡済みです。現地の捜査員が基地局周辺へ向かっています」
「空港も港もだ。絶対に島から逃がすな」
「了解!」
赤色灯を回しながら、パトカーは空港へと駆け抜ける。
助手席の黒崎は前方を見据え、頭の中で状況を整理していた。
消失から二週間。ようやく掴んだ一本の糸だ。
たとえ本人でなくとも、このスマートフォンを持つ人物を確保できれば、事態は大きく動く。絶対に逃すわけにはいかなかった。
通信記録は数分おきに更新される。端末は変わらず石垣島に存在していると報告があがる。
あと少しで空港に到着する、その時だった。
後部座席から、着信音が鳴り響く。
電話に出た刑事の表情がみるみる強張っていく。
「……え?」
聞き返す声が震えていた。刑事が身を乗り出す。
「黒崎刑事!」
「何だ」
「位置情報が……変わったそうです」
黒崎の眉がわずかに動く。
「どこだ」
刑事は一瞬ためらい、ゆっくりと答えた。
「……北海道です」
車内の空気が止まった。
「はぁ?」
思わず誰かが声を漏らす。
「……石垣島を離れたのか」
「はい。約三十分にわたって石垣島の基地局へ接続していましたが、先ほど離脱。現在は北海道の基地局へ接続しています」
黒崎は何も言わず、刑事からスマートフォンを受け取る。
画面には通信会社から送られてきた最新の位置情報が北海道を表示している。
数分前まで石垣島にあった端末が、正反対の側へ移動していた。
黒崎は画面を見つめたまま、低く呟く。
「……基地局の誤認か」
「通信会社へ確認しました。設備異常はありません」
「GPSではなく、基地局接続で間違いないんだな」
「はい。SIMカード、端末識別番号ともに一致しています」
誰も口を開けなかった。
通常の移動手段では説明がつかない。
数分で日本の端から端へ移動するなど、あり得るはずがない。
サイレンの音だけが、重苦しい車内に響いていた。




