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私は魔石の提供に対する正式な対価として、多額の報酬を受け取った。
さらに私の希望で、この世界に降り立った森の一角を譲り受けることが出来た。
そこは国有地ではあったものの、人の立ち入らない未開発地域で、利用計画も存在しない場所だったため、魔石がもたらした功績への褒賞として正式に私の所有地となった。
レオン先生へ地球の建設機械や工具の仕組みを大まかに説明し、それを参考にした魔道具の開発をお願いした。
完成したのは、ショベルカーやダンプカー、チェーンソーによく似た大型魔道具の数々だった。
魔石で得た莫大な金貨を惜しみなく投入し、私は手に入れた森の開拓を一気に進めていく。
賃金の高さに惹かれ集まった人々によって、木々は次々と伐採され、地面はならされ、森は驚くほどの速さで姿を変えていった。
もちろん、開拓にはとてつもない費用がかかった。
だが、その程度で私の財布が軽くなることはない。私は今もなお、国へ魔石を提供し続けており、その対価として得られる金貨は使っても使っても増えていく一方だった。
ならば、眠らせておく理由はない。
私は自宅の周囲にも次々と賃貸住宅を建設することにした。職人や開拓に携わる人々、その家族まで安心して暮らせる住まいを用意し、人を呼び込み、さらに街を大きくしていく。
お金は貯め込むものではなく、世の中に回してこそ価値がある。私はそんな考えのもと、使い切るくらいの勢いで金貨を投じ続けた。
更にどうせ建てるならと、住宅のすべてに魔石を組み込むことにした。
レオン先生が開発した魔道具。冷暖房や給湯、照明、防犯など、生活を支える様々なそれを標準装備し、誰もが快適に暮らせる住まいへと仕上げていく。
その快適さは王都の高級住宅にも引けを取らず、完成した賃貸住宅は瞬く間に評判となっていった。
そんなある日、市長が頭を抱えて私のもとを訪ねてきた。
「お願いです。何とかしてください。このままではうちの住民が全員、あなたの町へ移り住んでしまいます」
快適な住宅と高い賃金に惹かれ、移住者が後を絶たないらしい。
それはいけない。他所の街を衰退させるつもりはなかった私は、市長と話し合い、対策を考えることにした。
話し合いの末、隣街まで魔道列車と乗合馬車を整備し、「隣街に住み、こちらへ働きに来る」という暮らし方ができるようにした。
希望者には、レオン先生が開発した魔道具を組み込む住宅リフォームも実施することに。
費用の大半は私が負担し、住民の自己負担はわずかで済むようにする。
その結果、隣町の住環境も大きく改善され、住民の流出は次第に落ち着いていった。
あまりにも湯水のように金貨を使う私を見て、護衛のスケさんとカクさんは心配そうな顔をした。
「チキ様、そこまで使ってしまって、本当に大丈夫なのですか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
私は笑って答える。
「レオン先生が気を利かせてくださって、開発した魔道具は共同発明という形で特許登録してくれたんです。だから売れた分の利益も入ってきます」
二人は顔を見合わせる。
「……つまり、使えば使うほど、また稼いでしまう、と」
「さすがチキ様ですな。心配するだけ無駄でしたか」
呆れ半分、感心半分の声に、私は苦笑する。
「お金は使えば仕事が生まれて、人が集まって、また新しいお金が動きます。眠らせておくより、そのほうがずっと価値がありますからね」
ちなみに、この頃には私の護衛も二十人まで増えていた。
どうやら、これまで魔石を輸入して利益を得ていた諸外国との関係が、少し微妙なものになってきているらしい。
幸い表立った問題は起きていないが、「念のためです」と王国側が護衛を増員してくれたのだ。
何事も備えあれば憂いなし。私も、その判断には素直に従うことにした。
護衛が増えたのに合わせて宿舎も建て直し、スケさんとカクさんの家族にもこちらへ移り住んでもらった。
家族ごとに生活空間が分かれ、清潔で広く、きちんとプライベートも守られる造りにしたことで、皆とても喜んでくれた。
「こんな立派な家に家族で住めるなんて……」
感激する奥さんや子どもたちの姿を見て、こちらまで嬉しくなる。
当のスケさんとカクさんも、「給料は上がるし、休みも増えるし、こんな職場は初めてですよ」と笑っており、その笑顔を見られたことが、私には何より嬉しかった。




