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異世界転移したら、地球を所有してました。その裏で、地球では大騒動が始まっていた。  作者: りどみ


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16/64

地球Side刑事


 捜査本部へ駆け込んできた刑事が、強張った顔で告げる。

「行方不明者の田中愛子さんについて、新しい情報です」

 会議室にいた刑事たちが一斉に顔を上げる。


「勤務先の十三人が確認し全員が本人と断言しました。また服装も、失踪当日に駅前の防犯カメラへ映っていたものと同様のもの、歩き方も一致したそうです」

 黒崎は眉をひそめた。


「その後の足取りは?」

 黒崎の問いに、報告していた刑事は悔しげに首を横に振った。

「追えませんでした」

「どういうことだ」

「会社の防犯カメラは、田中愛子さんが封筒を投函した後、敷地を出るところまでは確認できています」

 資料をめくりながら続ける。


「その先200メートルは別の店舗の防犯カメラにも映っています。そこまでは追跡できました。ですが」

 説明しながら、刑事はスクリーン上の地図の一点を指差した。

「ここ、この細い路地です。ここに対象が入っていく姿が確認できるのですが、そこから先がわかっていません。

 ここは両側の建物に遮られ、防犯カメラの死角になっています」


 黒崎は地図へ視線を落とす。

「反対側の出口は」

「確認しました。しかし、どのカメラにも田中さんらしき人物は映っていません」

 部屋が静まり返る。


「つまり……」

「路地へ入ったところまでは確認できています。しかし、そこで消えてしまっています」

 黒崎は腕を組む。


「周辺の聞き込みは」

「休日のオフィス街のため、人通りが少なく、有力な目撃証言は得られていません」


 黒崎はゆっくり息を吐いた。

「……分からない、か」


「ですが、会社へ現れるまでの足取りは追えました」

 刑事は新たな資料を机に広げた。

「監視カメラをつなぎ合わせた結果、田中愛子さんは本日昼、自宅アパートを出ています」

 黒崎は時系列の一覧へ目を落とす。


「アパート……」

「その後、駅前のコンビニへ立ち寄り、ATMで現金を引き出しています」

「金額は」

「銀行へ照会中です」

 さらに資料をめくる。


「その後、自宅最寄り駅から電車に乗車。会社最寄り駅で降りています」

「ふむ」


「その後、徒歩で会社へ向かい、午後一時四十七分、会社の郵便受けへ封筒を投函しました」

 黒崎は静かに頷く。

「つまり、会社へ着くまでは行動を追えているわけだな」

「はい。防犯カメラのリレーで、ほぼ途切れることなく確認できています」


 黒崎は資料から顔を上げた。

「……自宅アパートを出る前の足取りはどうなっている?」

 会議室が静まり返る。


 報告していた刑事は、申し訳なさそうに首を横へ振った。

「それが……確認できていません」

「できていない?」


「はい。昨夕、駅前で光に包まれて姿が消えた、あの直後からです」

 刑事は監視カメラの配置図を広げる。

「駅周辺、主要道路、商店街、公園、住宅街と、防犯カメラを可能な限り確認しました。しかし――」


 一呼吸置いて続けた。

「田中愛子さんの姿は、一度も映っていません」

 黒崎の眉が寄る。


「そして、次に確認されたのが?」

「本日昼過ぎ、自宅アパートの防犯カメラです」

 別の刑事が補足する。


「午後一時三分、自宅アパートから出てくる田中さんが映っています。服装も所持品も昨夜と同じで、特に変わった様子はありません」

「つまり……」

 黒崎はゆっくりと言葉を続けた。


「駅前で消えたあと、自宅へ戻るまでの足取りが、まるごと分からないということか」

「はい」

 刑事は頷いた。


「どうやって自宅へ戻ったのか。徒歩なのか、車なのか、誰かと一緒だったのか。それとも別の経路を使ったのか……現時点では何一つ分かっていません」


 会議室に重い沈黙が落ちる。

 佐伯は腕を組んだ。


「……空白が二つあるな」

「二つ、ですか?」

「ああ。駅前から自宅まで。そして会社を出て路地へ入ったあとだ」


 どちらも、防犯カメラでは説明できない空白。

 しかも二回目は自分からカメラの死角に入ったように見える。

 偶然とは思えなかった。

「令状を取る。家宅捜索の準備を」

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