地球Side刑事
土曜日、午後二時過ぎ。
捜査本部に一本の電話が入った。
「○○株式会社です。昨日から行方不明になっている社員の件で……当人の退職届が会社のポストに投函されていました」
電話を受けた、連絡先を渡していた警官が表情を変え、すぐに刑事・黒崎へ報告する。
「黒崎さん。失踪した女性の勤務先からです」
「何だ?」
「会社のポストに女性の退職届が入っていたそうです」
黒崎は眉をひそめた。
「退職届がポストに?」
「はい。休日出勤した職員が昼休憩から会社に戻った際、発見したそうです。事情を知っていた職員だったため、不審に思い、すぐこちらへ連絡がありました」
「……なるほど」
失踪したはずの人物の退職届。
「すぐ会社へ向かう。周辺の防犯カメラも至急あたってくれ。退職届は出来るだけ触らないように伝えてくれ」
「了解です」
数十分後。
黒崎たちは会社へ到着した。
総務課の職員が緊張した面持ちで迎える。
「こちらです」
会議室の机にはキッチンペーパーの上に封筒が置かれていた。
「最初に発見した社員以外、誰も直接触っていません。裏に記名がありましたので、封も開けていません」
鑑識が封筒を撮影し、慎重に回収する。
その間、黒崎は総務課長へ向き直る。
「防犯カメラの提出のご協力をお願いします」
「はい。正面玄関とポスト周辺を映しているのがあります」
「至急、確認を」
「すぐ再生します」
事務室のモニターに映像が映し出される。
社員が退職届を見つける前まで映像を逆再生していく。
休日で人通りの少ないオフィス街。
「あっ」
一人の人物がポスト前に映る。
「……田中さん?」
総務の職員が零す。
黒崎の眉が上がる。
確かにカメラの中には、失踪した田中愛子の姿がはっきりと映っていた。
田中愛子は封筒をポストへ入れると、そのまま振り返りもせず去っていく。
室内が静まり返る。
若い刑事が画面を見つめたまま、小さく呟いた。
「……本人、ですかね」
黒崎は映像を一時停止させる。
顔、体格、服装も、失踪した女性と酷似していた。
「断定はできない。だが、ほぼほぼ本人だろう」
黒崎は静かに頷く。
「映像をコピーして鑑識へ。顔の照合と歩容鑑定を依頼する。それと周辺の防犯カメラを全部拾え。この人物がどこから来て、どこへ向かったのか追跡する」
「はい!」
捜査は、新たな局面へ入ろうとしていた。




