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異世界転移したら、地球を所有してました  作者: りどみ


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14/52

地球Side巡査部長

 金曜日、午後十時半。

 規制線の内側に、静かな緊張が漂っていた。

 鑑識の作業が一段落した頃、一台の警察車両が現場へ到着する。

「警察犬、到着しました」

 ハンドラーに連れられたシェパードが車から降り立つ。


 巡査部長・佐伯は頷いた。

「頼みます。最後に目撃された位置から追跡を」

「了解です」

 刑事が回収してきた、女性が職場で使っていたクッションをビニール袋から取り出し、警察犬に臭いを覚えさせる。


 シェパードは鼻を近づけると、小さく鼻を鳴らした。

「よし、行け」

 リードが緩められる。

 警察犬は地面へ鼻を擦り付けるように歩き始めた。

 駅前広場をゆっくり進み、人混みを縫うように臭跡を追っていく。


「追ってますね」

「ええ。臭いは取れています」

 佐伯たちは一定の距離を保ちながら後ろを歩く。

 警察犬は迷いなく一直線に進み――。

 突然、その足が止まった。

 消えたと目撃された、まさにその場所だった。


 犬は何度も地面の臭いを嗅ぐ。

 円を描くように歩き回り、周囲を探す。

 右へ。

 左へ。

 数メートル離れては戻り、再び鼻を地面へ押し付ける。

 やがて困惑したように鼻を上げ、ハンドラーを見つめた。

 ハンドラーは表情を曇らせ、もう一度指示を出す。


「もう一回だ。探せ」

 警察犬は再び捜索を始めた。

 しかし結果は同じだった。

 臭いはこの地点までははっきり続いている。

 だが、その先がない。

 風向きを変えても、周囲を広げても、まるで最初から存在しなかったかのように途切れている。

 数分後、ハンドラーはゆっくり立ち上がった。


「……だめですね」

 佐伯が顔を向ける。

「やはり、ここで完全に消えています。追えません」

 一瞬、誰も言葉を発しなかった。

 臭跡を追る能力に優れた警察犬が見失うなど、普通なら考えにくい。


 逃走したのであれば、どこかへ続く臭いが残る。

 車に乗せられたとしても、その地点までの臭跡は不自然な形で変化する。

 だが今回は違う。

 まるで、人間一人がこの場所で世界から切り取られたかのように。


 佐伯は目撃者たちが口を揃えて言った言葉を思い出す。

 荒唐無稽だと思っていた証言が、胸の奥で重くのしかかった。









 翌日、事態は急変した。

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