地球Side刑事
金曜日、午後十時、県警本部の捜査会議室。
壁一面のモニターには、駅前広場を映した監視カメラの映像が映し出されていた。
何度見返しても、コマ送りしても結果は同じだ。
人間がその場から消失していた。
会議室は重苦しい空気に包まれていた。
「……映像の解析結果は?」
捜査一課の刑事・黒崎が尋ねる。
「映像の改ざん痕跡はありません。複数方向の防犯カメラでも同じ現象を確認しています」
鑑識担当が静かに答えた。
誰も口を開かなかった。
理解できない。
しかし、映像は現実を映している。
「被害者の身元は」
黒崎の問いに、別の刑事が資料をめくる。
「駅周辺の監視カメラをリレー式に追跡しました」
大型モニターに地図が表示される。
「一つ前の交差点、そのさらに前の商店街、防犯カメラ、コンビニ、ビル入口……と映像を繋いで追跡した結果、勤務先を確認できました」
画面には、オフィスから出てくる女性の姿。
「会社への問い合わせと住民情報とを照合し、身元を確認」
資料が配られる。
「氏名、田中愛子。二十五歳、会社員」
黒崎は資料へ目を落とした。
顔写真。
勤務先、自宅。
携帯番号。
すべて一致している。
「家族は?」
「両親は幼少期に事故で死亡。兄弟はいません。現在は独身。一人暮らしです」
黒崎は小さく頷いた。
「携帯電話は」
「消失現場で回収できていません。本人と一緒に消えたものと思われます」
部屋に再び沈黙が流れる。
そこへ通信解析担当が口を開いた。
「ただ、一つ収穫があります」
「何だ」
「消失直前まで携帯電話で通話していました」
黒崎が顔を上げる。
「通信会社へ照会した結果、最後の通話相手を特定しました」
モニターに電話番号と契約者名が映る。
「通話相手は叔母です。通話時間は約二分。本人が駅へ向かう途中から消失直前まで続いていました」
別の刑事が腕を組む。
「一一〇番通報者も、『電話をしながら歩いていた女性が突然光って消えた』と証言しています」
黒崎は資料を閉じた。
「叔母からも事情を聞く」
「すでに捜査員を向かわせています」
「勤務先にも聴取だ。生活状況、人間関係、トラブルの有無を洗え」
「了解」
会議室が慌ただしく動き始めた。




