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異世界転移したら、地球を所有してました  作者: りどみ


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12/52

地球Side巡査部長

 

 金曜日の午後六時過ぎ。

 駅前交番で勤務中だった巡査部長・佐伯は、一本の110番通報を受けた。

『あ、あの……人が消えました!』

 受話器の向こうから、震えた女性の声が聞こえる。


「落ち着いてください。場所を教えてください」

『○○駅の東口です! 目の前で、人が光って……そのまま消えたんです!』

 佐伯は一瞬だけ手を止めた。


(光って消えた?)

 酔っ払いか、精神的に混乱している人の通報か。

 そう思いながらも、警察官としては決めつけるわけにはいかない。


「その方は男性ですか、女性ですか」

『女の人です! 若い人! 突然、足元が光ったと思ったら、眩しくなって……一瞬でいなくなってしまいました!』

「事件性がある可能性もあります。その場を離れずにお待ちください。すぐに向かいます」

 通話を切ると、佐伯は無線を取る。


「○○駅東口。女性が突然消失との110番。確認に向かいます、どうぞ」

 同僚とともにパトカーで現場へ急行した。








 現場には十人ほどの人だかりができていた。

「警察です。少し下がってください」

 規制線を張り、通報者から事情を聞く。


「本当に目の前で消えたんです」

 四十代ほどの女性は顔色を悪くしながら話した。

「スマホで通話しながら歩いていたんです、その人。で、スマホを耳から離して『疲れたな』って言ったと思ったら……地面が白く光ったんです。それで、一瞬目を閉じて開けたらもういなかったんです」

「……誰かと接触したり、車に乗ったりは?」

「そんなのありません。何も」


 周囲の目撃者にも話を聞く。

「私も見ました」

「光ったのは確かです」

「爆発とかじゃない。音もしませんでした」

「消えた……としか言えないです」


 証言は細部こそ違うものの、大筋は一致していた。

 現場には血痕も争った跡もない。

 目撃者たちの連絡先を控え、解散してもらう。


「監視カメラを確認しよう」

 駅前には防犯カメラが何台も設置されている。

 映像を確認すれば、何かわかるかもしれない。










 数時間後。警察署の映像解析室。

 佐伯は防犯カメラの映像を食い入るように見つめていた。

 映像には、女性が歩いている姿が映っている。

 次の瞬間。

 足元から白い光が広がり――消えた、一瞬で。

 編集の痕跡もない。

 カメラの故障でもない。


「……なんだ、これは」

 部屋の空気が重くなる。

 隣で映像を見ていた刑事も言葉を失っていた。


「誘拐でも拉致でも説明がつかないぞ」

「映像解析にも回します」

「マスコミにはまだ出すな。混乱する」

 その日、事件は『行方不明事案』として処理された。


 しかし担当した警察官たちは誰一人として、あの映像を忘れることはできなかった。

 "人間が光に包まれ、瞬時に跡形もなく消える"

 常識では説明できない出来事。

 その真実を知る者は、この世界にはまだ誰もいなかった。

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