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第8話 なし(絶食)

 十一日目


 アナタは『仲間の顔を思い浮かべたこと』がありますか?


 ◆現実世界の、たもつの職場――

 キーンコーンカーンコーン

 お昼休みのチャイムが鳴った。


 ぐぅぅ~~~……

「腹、減った……」

 部屋全体に響き渡るような大きな音が、たもつのお腹から聞こえてくる


 たもつの同僚、「タカオ」と「ワルオ」が話しかけてきた

「大丈夫ですか、たもつくん?」

「なんだよたもつ、ダイエットか?」


「いや、そう言うわけじゃないんだけど……」

 たもつは、説明する力もなくなってきていた


「ダイエットじゃないんなら、ちょっとくらいいいんじゃないか?」

 そう言ってワルオは、持っていた「おせんべい」を差し出す


「ゴクリっ……」

 たもつは目を見開き、おせんべいを凝視する

 口からは大量のよだれが噴き出してきた。

 ブルブル震える右手を、おせんべいに伸ばす……


 バシッ!

 たもつは自分の右手を、自分の左手で叩く

「だ、ダメだ……今すぐそのおせんべいを俺の目の前から消してくれ!」


「お、おいおい……」

 さすがのタカオとワルオも、たもつのただ事じゃない雰囲気にちょっと引き気味。


 *****


 キーンコーンカーンコーン

 終礼のチャイムが鳴った


「や、やっと仕事が終わった……こんなに長い一日は始めてだ」

 たもつは何かに掴まらないと立つこともできず、歩く姿もヨレヨレで、まるで80代の老人のよう。


 いつもは察しの悪い部長も、さすがにたもつに声をかける

「た、たもつくん、今日はもういいから早く帰りなさい」

「はい、すいません……」

 いつも帰る前に、簡単な掃除をしてから帰っていたたもつも、今日はそのまま帰宅した。


 家までの帰り道――

 今までまったく気にしていなかった、帰り道でのおいしそうな匂い……

「なんておいしそうな油の匂い、これはコロッケかな?」


 ジュゥゥ……

「お、兄ちゃん、焼きたてだよ、一本どう?」

「うぅ、屋台の焼き鳥、こんなとこにあったっけ?」


 奥のラーメン店からは、しょう油ラーメンのいい匂いが……

「うう、うまそう、頭がおかしくなりそうだ」

 頭ではわかっていても、足が勝手にお店の方へ向かってしまう。


「だ、ダメだダメだダメだ! ここで食べちゃったら、メンバーのみんなに申し開きできない。

『炭水化物竜』を倒すため、なんとしても、ここは我慢だ」

 たもつは、デリシャスファイブのメンバーの顔を思い浮かべながら、目を閉じ、走りながら帰宅した。


 ガチャ、バタン

 帰宅して、家のドアを閉める

「ふぅ……」

 その場で座り込むたもつ。

 ふと思う――


「いつも帰り道で、あんなに食べ物の匂いや音なんて、気にしたことなかったのに」

 たもつはいつも、食事にはあまり関心がなく、食べられればなんでもよかった

 ただお腹が空いたから食べる、そういう認識。

 肉とラーメンが好きだと言ったのは、味が濃く、食べやすいから

 でも今は違う、食べ物のことで頭がいっぱい、愛おしさまで感じる。


「食事って、本当に大切なんだな……」


 夜、たもつは寝ようとするが、お腹が空いて眠れない

「ぐぅぅ~~……」

「うぅ、このままじゃ眠れない……

 そうだ、確かスマホに『眠るための動画集』があったはず。

 どれどれ、『屋根に落ちる雨音』、『校長先生のお話集』、フムフム……」

 探しているうちに、たもつは就寝した。

 ZZZzz……



 ○夢の中――

「はっ」

 たもつが目覚めると、目の前にはデリシャスファイブのメンバーが

「みんな、なんか体が光り輝いている……?」


「たもつくん、よくやってくれた、キミのおかげで、今私たちは『絶好調』だ!」

「ホント!?」


「体中の、蓄積されていたエネルギーが、ボクたちに流れてくるのがわかるよ。

 ボクたちの『感覚』も最大にまで上がっている、モチロンレッドの防御力もね」

「これなら、『炭水化物竜』とも互角に渡り合える。みんな、行くぞ!」

「おう!」


 メンバーとたもつは、全員で小腸へ


 ズシン、ズシン……

「バオオオオオオーーッ」

 小腸の一番奥に、昨日戦った『炭水化物竜』が!


 メンバーは臆することなく、炭水化物竜のそばへ

 ギロッ

 炭水化物竜の大きく丸い目が、メンバーとたもつをロックオン。


「行くぞ!」

 辛味レッドの「おはしソード」が、真っ赤に燃える!

「七味ブレード!」

 ズバババババババァッ!


「ギャオオオウゥッ!」


「効いている!」

 炭水化物竜は、確かに嫌がって、一歩下がる


「そうはいきません、『ストローの吹き矢』!」

 ビュンッ!

 ドスドスッ

 苦味ブルーの吹き矢が、下がった炭水化物竜に刺さる


 ヒィィィン……

 炭水化物竜が、息を吸い込んでいる

「『小麦粉のブレス』が来るぞ!」


 バオオオオオオーーッ!

 炭水化物竜の口から、大量の白いブレスが!


「ビネガーウォール!」

「イノシンウエイブ!」

 ガガガガガーーッ

 酸味イエローと、旨味グリーンの防御技で、『小麦粉のブレス』を防いだ!


「凄い、昨日は手も足も出なかったのに……」

 たもつはあっけにとられる


「さあ、そろそろとどめよ! 『スイートハリケーン』!」

 ババババァーーッ!

 ピンク色の嵐の奔流!


 ザザザァーー

 炭水化物竜は、小麦粉の結界を張る

 バリーンッ!

 スイートハリケーンで、小麦粉の結界を粉砕!


「今だ、みんな行くぞ!」

 五人は陣形を組み、苦味ブルー、酸味イエロー、旨味グリーン、甘味ピンクは、辛味レッドにエネルギーを送る

「おおおおおおおーーっ!」

 四人のエネルギーを受けた辛味レッドが、『おはしソード』を前に構える


「合体技、『デリシャス・ノヴァ』!」


 ズバアァァーーッ!

 ドガガガガガーーッ!

 辛味レッドから発射された五色のエネルギー波は、炭水化物竜に直撃!


「ギャ、ギャオオゥゥ……」

 ズズゥン……


「やった、炭水化物竜を倒した! これで、俺の苦労も報われる……」


 その時、遠くの方で、その戦いを見定めている者が――

「悪玉キングさまの居場所を突き止めるか……そんなことをさせるわけにはいかない、フフ……」



 ◇今回の献立

  なし(絶食)


 ◇今回の健康カルテ

  体重: 66キロ→64キロ

  BMI: 22・6→21・9

  血圧: 150/100→140/85

  中性脂肪: 207→203

  LDL: 170→167

  HDL: 35→34

  尿酸値: 7・8→7・7

  γ-GTP: 185

  血糖値: 135→125

  ストレスレベル: 標準→やや高め


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