第39話 「脳・悪玉キング4」
アナタは『奇跡』を起こしたことがありますか?
「どうだ! これが俺たちの『絆』の力だ!」
悪玉キングの動きが止まる……
「フフフ、フハハハーーッ」
急に笑い出す悪玉キング。 メンバーもたもつもビックリして、様子を窺う
「この『第二形態』の我を、ここまで追い詰めたのだ、その強さ、しぶとさ、認めるしかないようだな」
「悪玉キングが、俺たちの力を認めた、のか……?」
悪玉キングは、たもつとメンバーを一通り見まわしたあと、視線を元に戻す
「貴様らは、我の『最終形態』を目撃する価値はあるようだな」
「さ、『最終形態』だって……?」
予想はしていた……『第二形態』があるのなら、その次があるかもしれない、と。
悪玉キングは、少しだけニヤリと口を歪ませながら、話を続ける
「われは、『第二形態』のさらに上に、『最終形態』を持つ……
我が『最終形態』に変化したら、今の『第二形態』ですら、赤子のようなものだ」
「そんな、いくらなんでもハッタリだ……」
「ハッタリかどうかは、自分の目で確かめるのだな」
悪玉キングが気合を入れると、結界が展開し、体が光始める
カアァァ……
「今の話が本当だとしたら、変身する前に倒した方がいいんじゃないのか?」
「そうだな、綺麗ごとを言っている場合ではない、この身体の命運がかかっている」
メンバーは、全員レッドを中心にして集まる
「みんな、今のうちに合体技だ、私にエネルギーを集中してくれ!」
「わかった!」
全員、レッドにエネルギーを送る
「はああぁぁ……」
「ぐ、ぐうぅぅ……」
レッドが苦しそうに震えだす
バアァァンッ
「ぐわっ!」
「レッド、大丈夫か!?」
エネルギーの集中は失敗し、レッドはその場で膝をつく
全員のエネルギーを集中するには、レッドの許容量を超えてしまっているようだ
「俺やメンバーもかなりレベルアップしているし、ブラックやアレルポーン、カルシウムナイトも増えた。
集中するエネルギー量も、今までとは比べ物にならない」
たもつが、レッドを気遣いながら話す
「私の力不足だ…すまない、みんな、たもつくん」
「何言ってるんだよレッド、レッドのおかげでここまでこれたんじゃないか。
レッドがいなかったら、とっくに俺たちは全滅していたよ」
「たもつくん……ありがとう」
バアアァァンッ!
シュウゥゥ……
結界の中は煙が充満していて、影が揺らめいている
少しずつ煙は晴れていき、その影の形が、少しずつ明確になっていく
「こ、これが、悪玉キングの『最終形態』……?」
見た目は青年、というにはまだ少し早い、まるで少年の様な風貌。
しかし、その眼は、今までの悪玉キングと同じ、地獄の底の様な冷たい目
背中から、漆黒のオーラでできた、『翼』のような、『腕』のようなものが伸びている……
だが、全員が気づいていた、以前とは比べ物にならないほどの、その巨大な威圧感を
「うう、なんて冷たい目だ……まるで、心の奥底まで覗かれているような感覚だ」
悪玉キングは、その恐ろしいほどの冷たい目で、たもつやメンバーを見る
(くそっ、また『鳥肌』が止まらない……)
ゆっくりと、しかし静かに、『最終形態の悪玉キング』が、口を開く
「場所を変える……
我が本気を出して、この『心臓』が破壊してしまったら、この身体も終わってしまうからな」
ザンッ
悪玉キングは、その背中から生えた漆黒の腕で、空間を切り裂き、中に入る
「我が向かう先は、この身体の『脳』だ、待っているぞ」
シュンッ
悪玉キングは、空間に入り消え、その空間の裂け目も消える
「この身体の『脳』に……?」
「行くしかない、ここまで来て戻ることはもうできない!」
メンバーとたもつは、お互いに顔を見合わせ、頷く
「移動は『転送屋』のミーに任せてくれ
血管を伝って、『脳』まで一直線、数秒で到達できるYO~」
たもつとメンバーは、全員で、アレルポーンの作った血管の道を通り、この身体の、『脳』へ
ヒュウゥゥン……
『脳』……
人間の、思考・感情・運動・感覚、さらに、記憶・学習など
あらゆる活動を制御する、中枢神経系の司令塔。
大脳は半球状に左右に分かれており、前頭葉・頭頂葉・側頭葉・後頭葉に区分される
「ここが、俺の『脳』……」
血管から降り立ったたもつとメンバーたち。
広い空間に、いくつものスクリーンが並べられている、まるでどこかの街の『電光掲示板』のようだ。
左に『左脳』が、そして右には『右脳』が見える
『脳』の外側には、『ニューロン』と呼ばれる神経細胞が、電気信号のように、絶えず情報を送っている
奥には、最終形態の悪玉キングが
「よく来た……ここならば、強靭な『頭蓋骨』、さらに『髄膜』『せき髄液』が、衝撃から守ってくれる」
確かに『脳』は、『頭蓋骨』『髄膜』『せき髄液』の中で守られている
「我の、真の目的を教えよう」
おもむろに、悪玉キングが話始める
「『脳』と『眼球』は、もともと一つの細胞から分かれたもの、成長しても、ずっとつながっている。
このスクリーンは、たもつ、貴様が見てきた『記憶』が映し出される」
スクリーンには、たもつの今までの『記憶』が映し出される。
「たもつくん、ちゃんと野菜も食べないと、健康になれないですよ」
「いいんだよ野菜なんて、肉食べた方が力でるんだから」
「ふ~、やっぱり食後の一服はやめられないな~」
「オレなんて、寝起きに一服しないと、目が開かねぇもん」
「それわかる~」
「うるさいなぁワルオ、お前は部長かよ。それよりお前がもうちょっとペースを上げてくれたら……」
(くっそ、なんだよ、やっぱり今までの経験値が違い過ぎるのか……イライラ)
「これは俺の、今までの『記憶』だ……」
「我の言ったことを覚えているか? 『愚かで、浅はかなニンゲン』……まさにその通りであろう?
自分勝手で欲望に弱く、自分の体も、友人でさえも、ないがしろにする」
「くっ……」
たもつは、言い返せない自分に腹が立った。 昔の自分は、本当にそうだったから……
「お前たちニンゲンは、好きなものを好きなだけ食べ、余ったら捨てる……もとは『命』だったものを。
感謝もせず、悪びれもせず、当然のように繰り返してきた、今現在も。
この星の裏では、食べるものがなくて、何億人ものニンゲンが餓死しているというのに」
スクリーンには、たもつが昔見たテレビのニュースが流れる
他の国では、食糧難や戦争のせいで、餓死する人が後を絶たない
「我の真の目的は、愚かで浅はかなニンゲンどもに変わって、現実の世界をも支配すること」
「なんだって!?」
突然の宣言に、全員驚きを隠せない
「我が支配すれば、飢えも差別もない、素晴らしい世界に生まれ変わるだろう」
「そんなことできるわけない! 大体どうやって他人の体を支配するんだ?」
「他のニンゲンの『悪玉菌』に、我の『種』を仕込む。 そうすれば、その『悪玉菌』は我と同じとなり、我の意のままに動く」
「この体から出ることもできないのに、他の人間の『悪玉菌』に『種』を仕込むことなんてできるわけ……」
「我なら可能だ……そう、我の『次元干渉』を使えばな」
「!」
『次元干渉』……確かに、それを使えば他の人間の『悪玉菌』に干渉することが可能だ、たもつもメンバーも、まったく思いつきもしなかった発想だった。
「そんなこと、絶対にさせない!」
「ならば、止めてみるがよい、止められるのならばな」
ゴゴゴゴゴゴゴ……
悪玉キングの漆黒オーラが、一段上がったような気がする
悪玉キングは、胸の前で組んでいた自分の両手と、背中から生えていた漆黒の『腕』を広げ、構える
四方に構えた4つの『腕』に、邪悪なエネルギーが集束していく……
ヒイィィン……
「そ、そんな、『アクダマインパクト』が、同時に4つ……」
「う、ウソでしょ……?」
「そんなの……反則だ」
悪玉キングは、ほんの少し笑みを浮かべる
「受けるがいい、『クアトロ・アクダマインパクト』!」
ズアアァァーーーーッ
巨大な邪悪なエネルギーの塊が4つ、たもつとメンバーのほうへ飛んでくる
「『大盾』ーーーーっ!」
「『ホーリィシールド』ーーッ!」
「『アステロイドベルト』ーーッ!」
ドンッドンッドンッ
全員防御態勢とる、が……
ズガガガガーーーーッ
バリィーンッ
バリィーーンッ
「うわぁーーーっ!」
「きゃーーーーっ!」
『クアトロ・アクダマインパクト』を受け、三人のシールドは粉々に
全員、邪悪なエネルギーの塊の直撃を受け、吹き飛び、倒れた
静寂……暫しの静寂が、辺りを包む
「大いなる力の前では、全てはひれ伏すのみ……これが世の『ことわり』だ。 クックック、ハーハッハッハッハ!」
静寂に包まれた『脳内』で、悪玉キングの笑い声だけがこだまする……
……
……
……
たもつは倒れたまま、目を開くこともできない
(う……、み、みんなは……? ダメだ、体が動かない……)
自分が、生きているのか死んでいるのかもわからない、メンバーが無事かどうかもわからない……
(い、意識が、もう……みんな、ゴメン……)
薄れゆく意識の中、たもつは、真っ暗闇の中に落ちていく……
その時――
……
……
……つ!
真っ暗闇の中、遠くで誰かの声が聞こえる……
「たもつ!」
「たもつくん!」
「たもつさん」
「たもつ!」
……
(この声……ワルオ、タカオ、あいりちゃん、そして、母ちゃん……?)
声はだんだん近くに、はっきり聞こえるようになってくる
(ひょっとしてこれは、スクリーンに映し出されている、俺の記憶……?)
「たもつ、お前やっぱりケチだな、ケチの王様だ、これからは『ケチ王』と呼ぶ」
「さすがたもつ、これからは『おごりの神様』、『おごり神』と呼ぼう」
「以前、オレが『アトピー』の発作の時、たもつが病院まで送ってくれたからな、お互いさまだ」
「バカやろう、お前の最後の電話がオレなんて、寝覚めが悪いからだよ! ぐすっ……」
「たもつくんが風邪を引いたと聞きまして、いろいろ不便じゃないかと思って、妹を連れてきました」
「いえ、大丈夫です、兄がいつもお世話になっています、妹の『あいり』です」
「うふふ、ゆっくり食べないと口の中やけどしますよ」
「ちゃんと20回、よく噛んで食べるのよ」
「ところで最近はどうなの? 彼女とかできた? 結婚は?」
「いつもそんなことばっかり……私たちも歳なんだから、早く孫を見せて頂戴」
たもつの記憶の中の、ワルオとタカオ、あいりちゃん、そして母ちゃんの声……
(そうだ、俺がここでやられたら、悪玉キングは、真っ先に一番近くにいる人を狙う……)
たもつは、自分を奮い立たせる
震える手で、少しずつ、少しずつ、立ち上がる
「ここで、倒れるわけにはいかない……う、うおおぉぉーーっ」
ワルオやタカオ、あいりちゃんや母ちゃんの声を聴いていると、不思議と力が湧いてくる!
「大丈夫、俺は、まだやれる!」
たもつは立ち上がり、目を開ける
周りには、メンバーやブラックたちが倒れていた
でも、震えながら、力を振り絞り、少しずつ、みんなも立ち上がる
向こうに歩いていた悪玉キングが、立ち止まり、振り向く
「……」
「みんな、大丈夫?」
レッドが、たもつを真っすぐに見据えて、
「大丈夫だ、たもつくんが諦めなければ、私たちは何度でもよみがえる!」
「うん」
たもつも、メンバーも、全員体がキラキラと輝いている
「これは……以前たもつくんの母さんが作った料理を食べたときと同じ『隠し味・愛情』の効果……?」
全員、全回復し、ステータスが底上げされている!
「きっと、たもつくんの想いが、現実の人たちに届き、現実の人たちの想いが、私たちに『奇跡』を起こさせたんだ!」
「うん!」
悪玉キングは、小さなため息を一つこぼして、
「しぶといな、本当に……そこだけは褒めてやろう。 だがそれもここまでだ」
たもつとメンバー全員、悪玉キングの方を見て、気合を入れ直す
「俺たちは絶対にあきらめない、悪玉キング、最後の勝負だ!」
◇今回の健康カルテ
体重: 63キロ→68キロ
BMI: 21・5→23・3
血圧: 128/81→150/98
中性脂肪: 195→220
LDL: 160→180
HDL: 29→31
尿酸値: 7・0→8・0
γ-GTP: 172→189
血糖値: 117→140
ストレスレベル: 普通→高め
今回、次の投稿が間に合わず、第40話は来週の土曜日になります。よろしくお願いします




