第35話 「脾臓・雑味ブラック」
アナタは『叫んだ』ことがありますか?
〇五臓六腑の間――
メンバーは全員、五臓六腑の間に
「残すは『脾臓の間』のみか……すでに幹部は全員倒したが、一体だれがここを守護しているのだろうか?」
ガチャ、ギイィィ
『脾臓』……
お腹の左上部のある、握りこぶし大の臓器
主な役割は二つ
①血液のろ過: 古くなった赤血球を破壊・処理
②免疫機能: 血液中の細菌と戦う抗体を作り出す
他にも、血液の貯蔵や胎児期の造血器官としても働く
さほど広くはない、ドーム状の空間
人の気配はない――
「誰も、いないのか……?」
たもつもメンバーも、奥まで行って確かめるが、やはり誰もいない
その時――
「『ブラックストーム』!」
ガガガガガガーーッ
漆黒の竜巻が、たもつとメンバーに襲い掛かる
「うわぁっ!」
「後ろから!? さっきまで誰もいなかったのに?」
振り向くと、一人の男が立っていた……雑味ブラックだ
「ブラック!?」
ブラックの後ろには、刃物で切ったような斬り跡が、空間に浮かんでいる
「そんな、一体どうやってそこに?」
ブラックは、『漆黒の鎌』を下げると、たもつとメンバーを見ながら話す
「オレはさっきまで『肺臓の間』にいた。 お前たちがこの『脾臓の間』に入った後に、そこから移動してきたんだ」
「そんなの不可能だ、移動中、私たちは誰にも抜かれていないし、扉も閉まっていた」
「これが証拠だ」
ブラックの手には、毒味クイーンの『ポイズンウィップ』が
「『ポイズンウィップ』? 本当に、俺たちの後にこの『脾臓の間』に……?」
「一体どういうことだ?」
ブラックは、後ろの刃物で切ったような斬り跡を指差し
「これが『次元干渉』だ」
「『次元干渉』?」
「時間的制限はあるが、他の空間に『転移』して、その場に干渉することができる技だ。 お前たちも見ただろう、悪玉キングが『肺臓の間』に現れた時に」
たもつもメンバーも思い出していた……空間を無理やりこじ開け、こちら側に登場した悪玉キングのことを
「でも、なんでブラックも同じことができるの?」
「オレは、善玉キングに作られたお前たちとは違う……
オレは直接悪玉キングに作られた、いわば悪玉キングの息子とも呼べる存在だ」
「あ、悪玉キングの息子……!?」
「……テイスティング」
ヒイィィン……ガカァッ!
「なっ……ブラックも、変身!?」
全身真っ黒なスーツ……よく見ると、悪玉キングと似たような意匠も見える
「オレは、お前たちデリシャスファイブに対抗するために作られた……
一人で、お前たち全員を相手にできるほどの力を与えられている」
「一人で、私たち全員を!?」
ブラックは、両手に、鎌とムチを持つ
「ハイブリッドウェポン、『デスサイズ』+『ポイズンウィップ』……『死神のくさり鎌』!」
ジャキーン!
「なっ!? ブラックが、『ハイブリッドウェポン』を……」
「言ったはずだ、オレはお前たちに対抗するために作られたと。 お前たちができることは、基本オレもできる」
ヒュンヒュンヒュン……
ブラックは、『死神のくさり鎌』を、目の前で振り回す
「この『脾臓の間』のボスはオレだ。 最後の『静脈のカギ』が欲しければ、オレを倒して手に入れるんだな」
「くっ、やるしかないのか……」
たもつとメンバーは戦闘態勢に
「ハイブリッドウェポン、『なぎなた』!」
辛味レッドは、なぎなたを組み立てて、ブラックに突撃する
「『なぎなた旋風斬』!」
ヒュンヒュンヒュンッ!
ガガガガガガーーッ
ブラックは、物凄いスピードで鎖がまを振り回し、なぎなたごとレッドを吹き飛ばす
「ぐわっ!」
「ならば……ハイブリッドウェポン、『天弓』!」
苦味ブルーが、弓を組み立てて、空目がけて矢を射る
「『ビターアローレイン』!」
バシューーンッ
ピカァッ
ドキュキュキュッ!
空に放たれた矢が、無数の雨のように、ブラックに降り注ぐ
シュババババーーッ
ブラックはくさりがまを頭の上で回し、盾のようにして矢の雨を防ぐ
「なにっ!?」
「ぬるい技だ」
「まだまだ、それならアタシの魔法で……」
ピンクが魔力を集中
「『ショコラデコレーション』!」
ズズズズ……
ピンクの後ろから、もの凄い量のチョコレートが大津波のように押し寄せる!
ドドドドドドドーーーーッ!
「やった!」
しかし、ブラックの姿が見当たらない
「オレはここだ」
たもつとメンバーの後ろから、ブラックが歩いてくる
「なっ……? 一体どうやって?」
「『次元干渉』、か……?」
レッドが、ブラックの後ろに、刃物で切ったような斬り跡があるのを確認する
ヒュンヒュンヒュンッ!
ブラックが、くさりがまをもの凄い速さで振り回し始める
「くらえ! 『死神のテンペストストーム』!」
ゴアアアァァーーーーッ
巨大な、漆黒の竜巻が、たもつとメンバーを襲う
「うわぁっ」
「きゃーーっ」
「くっ、つ、強い……ブラックの奴、こんなに強かったのか……」
「どうした、そんなものか? オヤジはオレの何倍も強いぞ、そんなんで勝てると思っているのか!」
ブラックが、ゆっくりととどめを刺しに近づいてくる……
「こ、このままではやられてしまう……」
ガシッ
「ぐうぅ……」
ブラックは、たもつの首根っこを掴み、そのまま持ち上げる
「たもつくんっ!」
「どうしたたもつ、この情けない姿……
毒味は最初から、薬味のためなら、自分の命も顧みない覚悟だったんだ……お前は、毒味の死をも無駄にするつもりか?」
「ど、毒味クイーンが……?」
ドサッ
ブラックは、手を離し、たもつたちに背を向ける
「フッ、まあいい、このままここで死ぬのなら、それまでの男だったということ。 あの世で毒味に謝罪でもするんだな」
ブラックが『死神のくさり鎌』を回しだす
ヒュンヒュンヒュン……
「くっ、俺は、自分の体のため、メンバーのため、ここで負けるわけにはいかない……
俺は、ずっと食と健康に無関心だった、体に悪いと知ってても、おいしければそれでよかった、健康診断の数値が悪いのも気にしなかった」
「……」
「俺は、自分の体でいつも戦ってくれていたみんなを知った。
自分の体の事、健康の事、そしてメンバーの事、もう無関心ではいられない! 諦めるわけにはいかないんだ!」
ヒイィィン……
たもつの体が、光始める
「こ、これは……?」
「たもつくんの体が、たもつくんにエネルギーを送っている……?」
善玉キングの念話が入る
「この光は、たもつくんの体が、たもつくんの力を認めた証……
『最強のヒーロー』の覚醒条件は、ある一定のレベルと、
『この身体を愛する心』
『食材と健康を愛する心』
そして『仲間を愛する心』
それらが揃い、激しい『感情の高ぶり』によって覚醒する……」
「今さら遅い! 『死神のテンペストストーム』!」
ゴアアァァーーーーッ
ブラックのくさり鎌から、漆黒の巨大な竜巻が発生し、たもつに襲い掛かる
「たもつくんーーーーっ!」
「たもつくん、叫ぶのじゃ!」
たもつは、立ち上がり、叫ぶ
「うおおおおおーーっ! テイスティング!」
ガカァッ!
眩い光が、辺り一帯を包む
「うわぁっ!」
漆黒の竜巻は、その眩い光に飲み込まれ、消えた
そこには、金色のスーツを纏った、たもつの姿が
「これが、『最強のヒーロー』……?」
「金色の光は、勇気の証……『極味ゴールド』、見参!」
ジャキーーン!
「た、たもつくん……!」
「凄い……」
「おお、おおおお……これが、ワシが夢にまで見た、『最強のヒーロー』……『極味ゴールド』じゃ」
善玉キングの念話、声が震えているのがわかる
「『極味ゴールド』……
ずいぶんと派手な登場だったが、実力の程はどうかな?」
ブラックは、もの凄い速さでくさり鎌を回し、たもつを攻撃
ヒュンヒュンヒュンッ!
バシッバシッバシィッ!
たもつは、それを素手ではじく
「なっ、あの攻撃を、素手で……?」
「フッ、面白い、どうやら手加減はいらないようだな……オレの全力を受けて見ろ! 行くぞ、『死神のテンペストストーム』ッ!」
ゴアアアァァーーーーッ
今までで最大の、巨大な漆黒の竜巻が飛んでくる
「たもつくんっ!」
たもつは、ゆっくりと両手を合わせ、
「今まで食べた、すべての食材に感謝を、ありがとう……」
ヒイィィン……
カァッ
「『極味ごちそう砲』ーーーーっ!!」
ガカァッ
ドガガガガーーーーッ!
『死神のテンペストストーム』が、『極ごちそう砲』に飲まれていく
「くっ……、うおおぉぉーーーーっ!」
ブラックのスーツはボロボロになり、大きく吹っ飛ぶ
ズガガガガガーーーーッ
倒れているブラックに、たもつが近づき、見つめる
「ブラック、俺を覚醒させるために、ワザと……」
ブラックは、仰向けに倒れながら
「勝者が敗者にかける言葉なんてない、早くいけ」
「ありがとう、ブラック」
たもつは、ブラックをその場に残し、先に進む
メンバー全員、キラキラと輝いている……
レッドが、自分の手を確認しながら、
「たもつくんの覚醒を受け、私たちも少なからずパワーアップしているようだ」
薬味ちゃんが、『極味ゴールド』に変身したたもつを見て、
「たもつさん、かっこいいです」
ピンクも、腕を組みながら、
「フ、フン……ちょっとカッコ良くなったからって、調子に乗らないでよね」
たもつは、悪玉キングがいるであろう、『心臓の間』の方を見つめながら、
「わかってる、俺が調子に乗るのは、悪玉キングを倒して、この身体を健康にした後だ。 みんな、行こう!」
「おう!」
仰向けに倒れたままのブラック、天を見つめながら……
「これでよかったのか、毒味……まったく、死んだ後も世話のかかる女だ、お前は」
◇今回の健康カルテ
体重: 64キロ→63キロ
BMI: 21・9→
血圧: 128/82→125/80
中性脂肪: 198→195
LDL: 160
HDL: 29
尿酸値: 7・1→7・0
γ-GTP: 175→172
血糖値: 120→117
ストレスレベル: やや高め→普通




