第31話 「腎臓・厄味ビショップ」
アナタは『次の道を決めた』ことがありますか?
たもつとメンバーは、『五臓六腑の間』に戻ってきていた
「悪玉キングがいる『心臓の間』を除けば、残りは『腎臓の間』、『肝臓の間』、『肺臓の間』、『脾臓の間』の四つか……」
「レッド、次はどこに行くの?」
「次は……たもつくんが決めてくれ」
「えっ、俺?」
たもつは、それぞれの扉を見比べてから、『腎臓の間』を指差す
「なんか、ここがいいような気がする」
メンバーとたもつは、『腎臓の間』の扉を開ける
ギィィ、バタン
『腎臓』……
人体の背中の真ん中あたりにある、左右一対の『そら豆』のような形をした臓器
血液をろ過する『フィルター』の役目を果たし、老廃物や余分な水分を尿として排出する
「ここが『腎臓』か……」
そこまで広くない、ドーム状の空間
向かい側に、同じ形のものがもう一つ確認できる
その奥には、見覚えのある人物が……
「薬味ちゃん!」
薬味は、以前のような、白い小動物のような面影はなく、
禍々しい黒いスーツを身に纏い、体からは紫色のオーラが立ち昇っている
『厄味ビショップ』という名が相応しい佇まい
厄味ビショップは、一切語らず、メンバーとたもつを見定めている
「俺たちがわからないのか?」
「薬味ちゃん、必ず私たちが助ける、だからそれまで身柄を拘束させてくれ」
レッドが語りかけるが……
厄味ビショップは、右手を上にあげ、人差し指を上に向ける
「?」
全員空中を見ると、黒い『線』のようなものが数本浮かんでいる……
「なんだ、あれは?」
ヒイィィン……
「『カラミティランス』!」
突然、厄味ビショップが叫ぶと、その『線』のようなものは、メンバーとたもつ目がけ、猛スピードで飛んでくる
ヒュンッヒュンッ
「みんな危ないっ!」
全員、ロールしながら避ける
ドスッドスッドスッ
地面に、『黒い線』が突き刺さる
真っ黒なエネルギー体でできたその『黒い槍』は、すぐに霧散した
「薬味ちゃんが、俺たちを攻撃するなんて……」
「目を覚ましてくれっ、薬味ちゃん!」
「……」
メンバー全員、攻撃できず、ただたじろぐばかり
「レッド、どうするの? まさか、薬味ちゃんを攻撃するの?」
「くっ……」
厄味ビショップは、今度は右手を前に出す
ヒイィィン……
「今度は何だ?」
メンバーとたもつの足元に、魔法陣が浮かぶ
「『カラミティフィールド』!」
ガカァッ
バリバリバリバリーーッ
「うわぁっ」
メンバーとたもつは、全員電撃のような衝撃を受け、同時に動きを制限されている
「こ、これは……毒味クイーンの『ディザスターフィールド』と似ている?」
「『ディザスターフィールド』程ではないが、私たちの動きを制限し、ステータスを下げる効果があるようだ」
ザッザッザ……
厄味ビショップが、ゆっくりと近づいてくる
「くっ……」
厄味ビショップは、また右手をあげ、人差し指を上に差す
ヒイィィン……
空中に、さっきの『黒い槍』が浮かぶ
「この状態で、さっきの『黒い槍』が飛んで来たら、もう避けられないよ!」
「動きが制限されていて、『ハイブリッドウェポン』も組み立てられない、このままじゃ……」
その時、厄味ビショップが口を開く
「……これしきの技も敗れずに、本気で悪玉キングさまに勝てるとでも思っているの?」
「や、薬味ちゃん……」
「私は、絶対にあきらめない!」
「レッド……?」
「たとえ、毒味クイーンが私たちより強かろうと、たとえ悪玉キングが私たちを罠にはめようとしているとしても、それでも、私はあきらめない!」
「……」
『カラミティフィールド』の中、レッドは立ち上がり、思いっきり息を吸い始める
「すうぅぅ……」
「レッド、いったい何を?」
「喝ーーーーーーっ!」
バチィッ
「うわっ……」
もの凄い大音量で叫んだかと思うと、厄味ビショップが作った魔法陣が消え去った
「え、動ける……『カラミティフィールド』を、破ったのか?」
「今のはまさか、外連味じいさんが使った、邪悪を退ける、『清廉なる気合』……?」
レッドは振り向き、親指を立てる
「ああ、見よう見まねだったがな」
『カラミティフィールド』は破られたが、厄味ビショップは動かない……
「どうだ、『カラミティフィールド』は破ったぞ!
私は、悪玉キング討伐も、薬味ちゃん醍醐味くん救出も、どっちも絶対にあきらめない! 必ずキミを救出してみせる!」
厄味ビショップは、レッドを見下ろしつつ、
「フフ、さすがはレッドさん、熱いですね、合格です」
「えっ」
全員キョトン顔
「みなさんを試すようなことをして申し訳ありません、ワタシは『正気』です」
「や、薬味ちゃん? ホントに『正気』なの?」
「はい、このチームワークと、レッドさんのこの『熱い思い』があれば、きっとこの先の戦いも大丈夫ですね」
薬味ちゃんはヘルメットを取り、笑顔で答える
「薬味ちゃん、『毒気』に当てられた『フリ』をしていたのか?」
「そうです、ワタシは元々『回復屋』……状態異常の回復はお手の物です。
最初に『毒気』に当てられた時に、万が一を想定して、自動で状態異常を回復する『パッシブ魔法』をかけていました」
『パッシブ魔法』……
あらかじめかけておくことで、自動で魔法が発動するようになっている補助魔法のこと
「そうだったのか、なんだよー心配したんだよ、薬味ちゃん」
たもつも、メンバーも、ほっと一安心
「すみませんでした、隠していたのにはワケがあります、
実は、毒味ねえさんの真意を確かめようとしたのが理由です」
「毒味クイーンの、真意……?」
「はい。 ワタシの知っている毒味ねえさんは、こんなことをする人ではありませんでした。
なにか理由があるに違いないと思い、ワザと洗脳されたと思わせ、本心を聞き出そうとしたのです」
「それで、わかったのかい? 毒味クイーンの真意は」
「はい、完全に洗脳されたと思った姉さんは、その真意をワタシに話してくれました」
〇回想・アクダマキャッスル内――
「薬味、お前の意思を無視して、無理やり連れてきてしまったこと、申し訳なく思っている。 だが、お前の命を守るためには、仕方なかったんだ」
薬味ちゃんは、毒味クイーンの話を黙って聞いている……
「お前の遺伝子には『死の因子』が刻まれている……あのままあそこにいれば、お前は死んでいたかもしれない。 だが、そんなことは、この私が絶対にさせない」
毒味クイーンは、いつもの恐ろしい目つきではなく、姉としての、思いやりのある目で薬味ちゃんを見つめる
「善玉キングは、たもつを覚醒させるため、私やお前を作るときに『死の因子』をその遺伝子に刻み込んだ。
つまり、私やお前は、たもつが覚醒するときに合わせて、死んでしまうように最初から作られていたんだ」
(!)
薬味ちゃんは、心の中で驚きながらも、表情には出さないようにしていた
「だが、そんなことは私が絶対にさせない……
なにがあろうと、お前だけは私が絶対に守ってみせる」
毒味クイーンは、薬味ちゃんをきつく抱きしめる
〇現在・『腎臓の間』――
『死の因子』……そんなものが……?」
「毒味ねえさんは、悪玉キングの手先になったわけではなく、ワタシや、みんなを『死の因子』の呪縛から救うために、あえて敵に回っただけなのです」
必死に説明する薬味ちゃん。 メンバーやたもつは思考が追い付かず、ただあっけにとられるばかり……
代表してレッドが、薬味ちゃんに尋ねる
「たもつくんの覚醒に、私たちの『死』が必要だということなのか?」
「すべてはわかりません、ですが、そういうことだと思います」
「俺を覚醒させるために、みんなを……?」
「次の『五臓六腑の間』に行く前に、善玉キングさまに訊ねる必要があるようだな……」
◇今回の健康カルテ
体重: 64キロ
BMI: 21・9
血圧: 128/82
中性脂肪: 198
LDL: 162
HDL: 30
尿酸値: 7・3→7・1
γ-GTP: 178
血糖値: 120
ストレスレベル: 普通




