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Curse Rase Fight  作者: 三毛猫 このの
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プロローグ2

「名前はもう決めたの?」

エリーはボロボロの1枚の布の上にメイと並んで眠っている、小さな鹿の角を生やした赤ちゃんを眺めながら言った。

「それがまだ決めていないんです。この子は人として生きるのか、鹿として生きるのか…。出来るだけ幸せな方を選んであげたくて。」

メイは悲しそうな顔をして、小さな角を生やした赤ちゃんの頭を撫でた。

赤ちゃんには鹿の様な体毛は無く、頭に生えた角と、腰より少し低めに生やした可愛らしい尻尾以外は、人間と変わらない外見をしている。

仮にも鹿として生きることにしても、この外見じゃ鹿に仲間として見てもらうのも困難だろう。

では人間として生きることにしたら、同じく外見の違いで差別やいじめに合うことも間違いないだろう。それに今の食料不足では、当然この赤ちゃんに与える食べ物は無いだろう。

どの道に行っても、この赤ちゃんに幸せは訪れないだろう。

「あの、エリーさん。私はどうすれば良いんでしょうか?ずっとここに居るわけにもいきませんし。」

メイは天才的な頭脳を持つエリーに助けを乞うために、山奥から3日かけてこの人間が密集している所に出てきたらしい。

「そうね、貴女のことちゃんと考えてあるわ。だから今日は一先ず身体の体調を整える為に、もう寝てしまいなさい。」

エリーはボロボロの布を2枚持ってきて、その内の1枚を2人に優しく掛け、残りの1枚を自分に掛け、寝たフリをした。


エリーはメイが完全に眠りについた時を見計らって、音1つたてずにそっと布から這い出た。そして近くに置いておいた麻縄の先に、人の頭が入る大きさの輪を作った。そしてその麻縄をメイの首に通した。そしてその麻縄を思いっきり…引っ張った。

メイはあまりの息苦しさに目を覚ました。

「なっ…んで……エ…さん…」

メイの手がダランと糸の切れた操り人形の様に下にぶら下がった。

「やった…。やってやったわ…。」

エリーは力の抜けた足に従い、ペタンと床に尻餅をついた。そして「アハハハ」と遠くまで響く高笑いをした。何故か笑いは自分で止めることが出来ず、暫く経って赤ちゃんがエリーの高笑いで目を覚ました。

「うっ、おぎゃあああ!」

赤ちゃんは泣き出した。それはただ単に眠かっただけなのか、はたまた動かなくなった母親に驚いたのか。

「あらあら、ごめんなさいね。」

ようやく高笑いが収まったエリーは、赤ちゃんを抱き上げニンマリと不気味な笑みを浮かべた。

「そんなに泣かないで。これからは私があなたのお母さんよ。」


次の日からエリーの実験がスタートした。

まずは赤ちゃんの身体検査。触った形や、口の中を調べたり、髪の成分も検査した。

結果から言うと、赤ちゃんは髪、目、歯以外は人間と同じ構造をしていた。

髪は鹿に近い成分をしており、目は人間にあり得ない大きな黒目をしていた。同じく鹿に近い形をしていた。歯は草食動物の様な、葉を摩り潰す形をしていた。

そしてエリーはある事に気が付いた。

赤ちゃんの成長スピードだ。昨日生まれたばかりだというのに、もう目が開き、髪も肩辺りまで伸びているのだ。

エリーは探究心をくすぐられた。そして次々と新しい疑問を穴だらけの羊皮紙に書き綴った。

『内臓の造り』『身体能力の高さ』『脳みその大きさ』『学習能力の高さ』『成長スピード』……。

その中でエリーはどうしても知りたい事が1つあった。それは『他の動物との混合』だ。

これまでの結果は全て『鹿と人間のハーフ』というたった1種類の結果だ。それにエリーは人間に似た形をしているのは、偶然ではないかとも考えている。母親と父親の血の濃さによって、外見はまた変わってくるのではないかと考えているのだ。もしもこの赤ちゃんが父親の血を濃く受け継いだとしたら、外見はほぼ鹿になった筈だ。

エリーはそれを解明するには『人体実験』をやるしか方法がないことを、薄々感じていた。しかし人体実験は科学者にとって1番やってはいけないことだとエリーは知っていた。しかし人体実験といっても人間は後少しで絶滅。絶滅したら実験すらも出来なくなる。

エリーは手を1度血に染めている。あの時の感覚は今も残っている。

エリーは覚悟を決めた。


エリーは掴んだ。動物と人間のハーフの法則を。

エリーの考えてた通り、親の血の濃さによって外見は変わっていた。中には人面犬の様な赤ちゃんも生まれた。

そして驚くことに、寿命にも違いが発見された。人間と動物の寿命を足し算したハーフや、人間と同じ寿命、動物と同じ寿命、それは個体によって様々だった。

身体能力はほぼ全て動物に近い能力を持ち、中には魔法を使える能力を持った者もいた。

頭脳は全て人間と変わらなかった。なので全ての個体が人間の言葉を話した。

さらにこの人体実験のおかげで人間そのものも生まれ、人間は絶滅の危機を脱出したのだ。そしていつの間にかエリーの手によって1つの大きな国が出来上がったのだ。

エリーはもう70歳を越えていた。

そんなエリーを人々は崇め、称えた。人類滅亡の救世主として。

エリーはその後人体実験を中止し、国の繁栄へ力を入れた。法律を作り、言語を統一した。そして家や城を建てた。

しかしそんなエリーに1つの手紙が届いた。

『人類の救世主エリー様へ

 貴女様には大変感謝しております。

 しかし貴女様にはとある罪がかかっております。

 それは殺人の罪です。

 1人の鹿から聞きました。

 貴女はこの実験を成功させるため、1人の女性も殺したそうですね。

 国の頂点が人殺しをしていた。

 そんな事実誰が受け止めるでしょう。

 ならばこうしよう。

 貴女は国の頂点から降り、新たな頂点を決めましょう。

 勿論貴女のご意見もお聞きします。

 貴女は誰を推薦しますか。

 グリア』

エリーな訳が分からなかった。

人体実験では1人も殺していない私に殺人の罪?

エリーは長い長い記憶を遡った。不意にメイの顔が思い浮かんだ。

「メイ…。嘘よ、嘘嘘嘘。あの時は誰にも見られていなかったは…ず…。」

エリーは手紙を読み返した。

「1人の鹿…。そんなまだ赤子だったじゃない!」

エリーは手紙を机に叩きつけた。

するとコンコンとエリーの部屋の扉にノックをされた。

「エリー様、お客様です。」

エリーは必死に平然を装った。そしていつもの椅子に腰かける。

「入っていいわ。」

その一言を合図に木目の綺麗な大きな扉が開かれた。お客様というのは国で2番目に偉ぃSimilar Lion(ライオン)とのハーフのグリアだった。

「グリア、どうしたの。」

「これはこれはエリー様、今日も麗しゅうございます。」

「匙はどうでも良いわ。早く要件を話して頂戴。」

エリーは苛立ちを演じるため、椅子の肘おきをトントンと叩いた。

「大変申し訳ありません。ところで手紙はもう読んでいただけましたかな。」

「読んだわ。グリア、何なのあの手紙は。私をからかっているの?」

するとグリアはエリーに背を向け開け放たれた扉の奥に向かって、手招きをした。

「エリー様、彼女に見覚えは?」

部屋に入って来たのはもう年老いた、鹿の角を生やした1人のお婆さんだった。

エリーは背中に汗が垂れるのを感じた。

「知らないって言ったら?」

すると鹿のお婆さんは口を開いた。

「私は貴女を知っています。救世主であり国の女王である『エリー様』ではなく、私のたった1人の母を殺した犯罪者『エリー』を。」

「な、何を言っているの?」

エリーは動揺しちゃダメと心で自分に言い聞かせた。

「エリー様、お話はまた明日。処刑台の上でお聞かせ下さい。」

グリアがそう言い、鹿のお婆さんと立ち去ろうとした。そのグリアの腕にエリーは必死にしがみついた。

「どういうこと!?私が処刑台に…!?ちゃんと説明してよっ!!」

エリーは顔をぐしゃぐしゃにしながら泣き叫んだ。

「そのままの意味ですよ。エリー様。貴女の決めた法律に従えば、殺人を犯した者は即刻処刑。そうでしょう?まぁ、その法律が決まり初めて刑を受けるのが決めた本人だなんて…。恨むならばご自分を恨んで下さい。」

そう言い残し、グリアはエリーの手を振りほどいた。


「失礼します。エリー様お時間です。」

1人のSimilar Rabbit(ウサギ)とのハーフのメイドがエリーの牢屋へやって来た。そしてエリーへ手をさしのべた。

「行きましょう、エリー様。」

エリーはメイドの手をはたき、自分から処刑台へと歩いていった。

観衆が見守る中エリーは息を吸い込んだ。

「私は人類の救世主エリーだ。私は最後にこの言葉を残す。」

観衆がざわめきだし、グリアはエリーの元へ駆け寄った。

「エリー様!何を言ってらっしゃるんですか!早く処刑台へ首を…」

「無礼者!」

エリーはグリアの頬を叩いた。

「まだ私は死んでいない。まだ私はこの国の女王だ!」

「そんな…。」

グリアは呆然とエリーを見つめた。

「私は動物とのハーフをこう名付ける。『混合種Curse Rase(呪いの種族)』と。」

観衆がより一層ざわめきだした。

「黙れ!混合種が!この世で1番偉いのはこの人間だ!私達人間がいなければお前らは存在すらもなかったんだ!人間以外は野蛮で汚らわしい存在だ!」

エリーは処刑台へ首を入れた。すると1つヤジが飛んできた。

「そうだ…。この世で1番偉いのは人間だ!」

この一言から連鎖するように様々なヤジが飛んできた。

「人間以外は出ていけ!」

「混合種はいらない!」

「呪いの種族だと?ふざけるな!」

するとエリーは処刑台から首を抜き、処刑執行の指揮官に指を指した。

「お前はどうなんだ?混合種をどう思う?」

指揮官は静まりかえった周りを見渡し、そっと呟いた。

「わ、我々人間と混合種は違う存在…だ。混合種を隔離すべきだ…。」

「聞いたか!?これでは私は処刑できない!よって私はまだこの国の女王だ!命令だ!混合種を全てこの国から追い出せ!」

この言葉を境に国には混合種は1人もいなくなった。


それから4年後エリーは安らかな死を遂げた。2代目の王には、あの時の指揮官が選ばれた。

この時には混合種は全て絶滅したと人間は考えた。

しかし実際には混合種はこの島の裏側の島へと500年かけ、移住していたのだ。

その移住先で混合種は3000年程人間程ではないが、それぞれの混合種が至るところで固まって暮らしていた。

そこに生まれた1人の少女。

彼女は人と混合種の共存を密かに望んでいた。

これはそんな混合種と人間の話。

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