02 瀬田少佐殿、聞こえますか? どうぞ
さて、……と。
今回も、やはり無駄に終わったか、……。
私(斎木茂吉)は気持ちを落ち着けようと思い、胸元のポケットを探ってタバコを一本吸おうとした。
すると、……。
「おやぁ? これは一体、どうしたことだ!?」
触れた右手が何故かふかっとして、……。何の感触もない。
そこで、漸くこの事態に気付く。
「くそっ! 現在、禁煙していたのだよ、私はっ!」
思わず、助手席のダッシュボードを少しだけ強く叩いた。
私はやる方ない気持ちのまま、頭と胴が生き別れになった青年の死体を回収するために、車外に出る。
「……」
強い直上からの太陽光が、目に飛び込んでくる。
次元振動のタイミングまで、もうあまり時間は残されていない。
私が遺体現場まで近づいていくと、……。
およそ20メートル先に、手斧を回収した大型の雄のオークが、こちらをじっと睨んでいた。
ふむ、……。どうしたものかね。
これまで手塩にかけて育てた、あの青年。
自信満々の浮かれポンチめ!
性癖は最悪だったものの、仕事はそれなりにはできていた。
ヤツはまさにバブル世代。マルチメディアクリエーターを自称していた。
その作品は時流に乗っていて、今後のウチの計画にも大いに役立つものと、目をかけていたのにな、……。
「オマエさん達には悪いが、……。これも仕事なんでね。コイツを回収させて貰うよ!」
睨み付けてくるオークの雄に、私は率直に話しかけた。
「……」
向こうさんから、特に手を出してくる気配はない。
「ふむ、……」
私はそれを相手の了承の意として捉えると、……。
さっそくビニルの手袋を嵌めて、青年の遺体を袋に詰め始める。
「……」
池の方から雌のオーク達が数匹、こちらの様子を探っている気配を感じる。
私は、ちらりと傍に立つオークの雄を見上げた。
すると、オークの雄は黙って、……。
興味深そうに、こちらの作業を見守っている。
どうやら、もう敵意はないとみて良さそうに思えた。
15分ほどで死体のパーツを全て袋に回収すると、……。車両の収納スペースに安置した。
「これで、……よし、か、……」
運転席に乗り込み、さっそく車載の無線機を起動させる。
「こちら茂吉です。瀬田少佐殿、聞こえますか? どうぞ」
王宮まで信号を送ったものの、直ぐには反応がない。
「……」
それから信号を何度か送ったところ、漸く相手が出てきた。
『こちらは瀬田。何か問題発生か? どうぞ』
「保護対象死亡に付き報告、どうぞ!」
こちらからの連絡の後、しばしの間、少佐殿から信号が届かない。
すると、……。
『ご遺体は、そのまま東京に送れ、どうぞ』
「了解しました。東京の役所(本社)に戻り次第、次の人選に入ります、どうぞ」
『引き続き、作戦遂行せよ、以上』
無線を切り、気が付くと、……。
車両から少し離れたところに、先ほどのオーク達が集まってこちらをじっと見つめていた。
「……」
私からは、特に彼らに何か訴えるつもりはない。
ただ、次の次元振動のタイミングまで、もうあまり時間が残されていないのでね。
私はアクセルペダルを踏むと、異世界門のあるオムラ渓谷まで先を急いだ。
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