↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/20

18 深夜の抗戦 前

 現地時間、午前四時マルヨンマルマル

 辺りはまだ暗い。夜明け前の最後の一時間だ。


 私(茂吉)はクロノグラフをひととおり確認し終えると、暗視双眼鏡で再びこの戦場をじっと眺め尽くした。


 ふむ、……。

 刻一刻と、バルディ男爵家の屋敷がゴブリンの本隊に包囲され、ジワリジワリと迫ってきている感じだな。


「……」


 現在いまの気持ちは、ただただ寂静じゃくじょうだ。

 この感覚は、おそらく誰かに伝えようとしても、とても言葉にできるものではない。


 傍らにいる伝令の青年は、何とか怯えを隠そうと、精一杯姿勢を正して気丈に振舞っている。


 とても偉いことだ。

 ひりつく気持ちを奥歯で噛み締めていれば、それで事が足りるのだからな。


「……」


 ふむ、……。気になるのは英子さんだな。

 元々非戦闘員の彼女だ。


 今回の相手がゴブリン達で人間ではないとはいえ、敵を殺害するという行為に、彼女は一体どこまで対応できるのか?


 様子を見にいくか? 

 いや、持ち場を離れた隙に、敵に攻め込まれでもしたら大変厄介だ。


 さて、どうするか、……。


「サイキ殿、守備は如何か?」


 すると、そのタイミングでバルディ男爵が物見やぐらに上がってきた。


 私は、無言で暗視双眼鏡を手渡した。

 男爵はそれを受け取ると、敵の全容をじっと確認する。


「ふむ、……。想定以上の敵の数ですな。サイキ殿はどう判断されますか?」


「計画どおり、私はここからライフルで各個狙撃していきます。弾薬は十分ありますので、取りこぼしを男性陣でどうにか撃ち倒して頂きたい!」


「了解しました。他に何か連絡事項、懸案事項はありますかな?」


 ここで私と男爵は、中庭の方にいったん目を落とす。


「今回、私が連れてきたのは、あくまで非戦闘員でしてな。慌てずに事態に対応できるのか、それが心配でして、……」


「エイコ殿なら、心配には及びますまい。先ほど女性陣のところを視察したら、何ら問題なく行動されておりましたぞ!」


「そうでしたか、……」


 現在奥方を中心とした女性陣は、中庭の中央で男性達の防壁を突破された事態を想定しながら、陣形を保っている。


 鉄製の農機具の鎌とか鋤を持って、素振りをする者。敵のいる防壁の先を震えながら睨み続ける者。


「……」


 ふむ。これだけ落ち着いているのなら、英子さんも特段慌てることもないだろう。


「ここは、ちょっとした砦のような造りのバルディ男爵邸です。そんじょそこらの攻撃では、簡単には落とせないでしょうな!」


 先ほど、英子さんには気休め程度だがそう伝えている。だが、実際どうなるかは、始まってみないとワカらないものだ。


 防壁の上に立つ男性陣は、本職の弓兵が数名と槍兵が数名。ロングソードの騎士もいれば、男爵のご子息達がショートソードを持って構えている。


「さて、……。そろそろ、始めますかな?」


 男爵の言葉に、私はひと言「はい」といって、小さく頷く。

 それを合図に、男爵が弓兵にハンドサインで指示を出す。


 物見やぐらから、弓兵が天空に向けて矢をつがえると、……。

 ひゅうっという音が、まだ暗い夜空をはしった。


 すると、放たれた矢の先端にくくり付けられた光魔石が、上空で炸裂さくれつして、次々と魔物の群れを照らし出す。


 ここで、バルディ男爵邸内全てに対し、若い伝令役の青年が絶叫を開始する。


「ゴブリンライダー20数騎っ!! 雑兵ぞうひょうのゴブリン、おそらく200以上っ!!」


 その叫びに、邸内に激震がはしる。


「……、一際大きいゴブリンッ、おそらく、これが本隊の総大将と確認っ!!」


 中庭の女性陣にざわめきが起きると、奥方の叫び声が続いた。


「はいっ、みんな切り替え切り替えっ! 敵の主力がワカったのだから、あとは個別撃破よっ!!」


「「「「「「「「「「おぅっ!!」」」」」」」」」」


 女性陣全員でそう応じて立ち上がると、右足で2回、地面をズンズンと踏み鳴らしていた。

 なかなか以て、大変頼もしい銃後の彼女達である。


 今回の私の役割は狙撃手だ。

 長年の相棒でもあるライフルを構え、暗視スコープから最前列のゴブリンライダーを3つ確認する。


 おそらく、ゴブリン達の中でも突撃隊長の役割の魔物達なのだろう。

 私の傍らには、バルディ男爵が暗視双眼鏡でその方面をじっと監視している。


 ふむ、……。

 では、始めるとするか。


「前方、ゴブリンライダー3体、右からやる。距離300、単射……」


「照準よし、風向よし」


「発射!」


 甲高いパァンという発射音と共に、第一個体を撃破。

 すかさず、次だ。


「中央、同距離……。照準よし、発射!」


 次弾の発射音の後、耳を指で塞ぎながら男爵が、……。


「2体目、撃破ですな!」


 そう言うと、傍の弓兵と伝令の青年が「おぉっ!」と色めき立つ。


「最後、左の1体、同距離……。照準よし、発射!」


 発射音の後、やぐらの上では撃破を視認した男達が「おぉ~~っ!!」と大騒ぎだ。

 それを口火に、ついに戦闘が開始された。


「ヒィキィィィィィィ―――ッッ!!」


 四囲を武骨な防壁が取り囲み、叫びながらよじ登ってくる雑兵のゴブリン達。

 そこを即席の弓兵達が、防壁上から弓に矢をつがえながら、次々と狙い落していく。


 更にくぐったゴブリンを、今度は槍兵が突き落とす。

 それでもなお突破して敷地内に入ってきたゴブリンを、今度は女性陣が取り囲んで袋叩きにしたり、すきかまを使ってとどめを刺す。


「はいっ、みんな切り替え切り替えっ! 敵の主力は男性陣に任せて、私達は個別撃破よっ!!」


 奥方の鼓舞する叫び声が、ここまで届いてくる。


「「「「「「「「「「おぅっ!!」」」」」」」」」」


 女性陣全員でそう応じて、右足で2回、地面をズンズンと踏み鳴らしている。

 なかなか統率が取れていて、頼もしい限りだ。


 どうやら、先ほども奥方がやったこのルーティンは、女性陣を勇気付けるのに上手く活用しているようだな。

 

 私は女性陣の頑張りに奮起させられたようだ。

 

 弾はまだまだたくさんある。

 再び構えると、前方の隊長首のゴブリンを中心に、遠距離狙撃を開始する。


 男性陣の弓兵達の働きは、なかなかのものだ。槍兵達も奮戦し、共に士気が高い。


「「「「「「「「「「いぃぃ~~やぁぁぁ―――――っすっっ!!!」」」」」」」」」」


 銃後の女性陣も徐々に戦果を上げてくると、次第にお構いなくなって、とても慣れた様子で叫び声がここまで響いてくる。


 たまに男性陣の仕掛けた網を搔い潜ってきた、ごく少数の魔物を個別撃破すると、……。

 そのたびに近場の者同士でハイタッチを交わしながら、大きく歓声を上げているようだ。


 現在も英子さんは必死になって、フライパンでゴブリンの尻を引っぱたくぐらいのことは、しているのではないだろうか?

「魁!暗躍オジさん!!」をお読み頂き、ありがとうございます!

斎木茂吉の活躍や、仲間たちとの冒険を楽しんで頂けたら嬉しいです!

この物語を気に入って下さったら、☆評価やブックマークで応援して頂けると、作者の励みになります!

茂吉と一緒に次の展開を盛り上げるため、ぜひ力を貸してください!✨

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。