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モリアハ  作者: Bitternectar
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第4話「目覚め」


****


老人のガラス玉じみた目が、喜びに濡れていた。


このクソ野郎は、ただ楽しんでいるだけじゃない。


教えているんだ。


ゲイルは解体台の周りをゆっくりと一周した。手には、小ぶりの狩猟ナイフ。清潔で、几帳面な刃だった。まるで、それで切ってきたのが人間ではなく、茶請けの林檎だったとでもいうように。


やがて、俺の脚のところで足を止めた。


手が脛をなで、足へと下りていく。親指に触れた。


「授業の続きだ、坊主……」


痛みは、すぐには来なかった。


はじめ、親指が俺のものでなくなった。脚に釘で打ちつけられた別の小さな生き物になり、その生き物が、できるだけ派手に死んでやると急に決め込んだ。


そこへ、串が打ち込まれた。


膿んだ傷口に細く焼けた鉄串をねじ入れ、そのまま奥へ——脛、腿、腹、肋骨のすぐ下まで——押し進めていく。


叫んだ。


叫び声が壁に跳ね返って、こちらへ戻ってきた。この部屋も、聞かされるのは不愉快だったらしい。


「……ヴルダラクを、異界のものと考えるのは正しくない」ゲイルは落ち着いた声で続けた。「奴らはかつて、人間だった」


引きつるように顔を上げ、自分の親指を見つめた。


黒ずんでいた。


いや、ただ黒ずんでいるんじゃない。暗い紫が皮膚の上を這い、その内側から、雨に濡れた灰のような黒が押し出してくる。


息をしようとした。


呼吸を数えようとした。


三つまでは数えられた。四つ目で、俺はもうクソ野郎の数を数えていた。


クソ野郎は、一人だった。


だが、やたらと熱心だった。


ゲイルが親指から手を離した。


痛みは、残った。


串はもう動かされない。どこか内側で引っかかったまま、俺と一緒に脈を打っている。足の親指が、猛烈に、憎々しげに、体のほかの部分から切り離されて暴れていた。一打ちごとに、こめかみへ響く。


「……だが、聖教会の変成秘術は、この程度では済まん」そう言って、彼はナイフを気だるげに振った。


何かが光った。


何が起きたのか、すぐにはわからなかった。


痛みが変わって、ようやくわかった。


短く。鋭く。嘘がなかった。


くそ。


野郎、俺の指を切り落としやがった。


切断面から血が噴き出した。温かく、濃く、本物だった。ここまでは、まだ悪夢だと思い込むこともできた。たちの悪い夢。うわごと。なんとでも。


血のほうが、よほど説得力があった。


最初に浮かんだのは、間の抜けた考えだった——これから、どうやって長靴を履く?


二つ目は、少しましだった——このまま続けられたら、履くも何もない。


「……拷問、干からび、蘇生……」ゲイルは黒ずんだ指の欠片を顔の高さまで持ち上げ、指先でくるくると回した。授業で出来損ないの標本を生徒に示すときの手つきで。「これらすべてが、奴らを——お前たちが恐れ慣れた、あの存在へと変えていく」


彼は次の指に触れた。


さっきと同じ串を待った。


無駄だった。


今度の痛みは、冷たかった。


刺すのではなく、吸い上げる痛み。指から、足から、骨から、誰かが水分と、熱と、命を引き抜いていく。皮膚が一気に突っ張り、いまにも裂けて乾いた殻となって剥がれ落ちる——そんな気がした。


口の中が、埃っぽくなった。


叫んだが、声はかすれた息にしかならない。喉まで一緒に干からびていくのかもしれない。


「わかるか、坊主」ゲイルは、ほとんど優しい声で言った。「体というのは、強情なものでな。しばらくは、人間のものであるふりを続ける。だが、正しく頼んでやれば……」


彼は微笑んだ。


「……本当は誰のものだったか、思い出す」


革紐の中でもがいた。


無駄だ。


革の紐が、手首と足首に食い込んでいた。体の下の台は濡れていた。何でかはわからない。知りたくもない。だが裏切り者の脳みそは、勝手に見当をつけてしまっていた。


「ただし、一つだけ厄介なことがある」ゲイルは続けた。「死んだものを、元のかたちのまま生き返らせることはできない。死は、何ひとつ丸ごとは返さん。必ず、釣り銭を取っておく」


この一言が、なぜか、必要以上に深く刺さった。


たぶん、その中に、俺のことが混じっていたからだ。


俺の、他人のものとしか思えない両手のこと。


映しても、そこにいない俺の顔のこと。


まともな理由もないくせに、動き続けている心臓のこと。


ゲイルが顔を近づけてきた。老いと、鉄と、それから何か甘ったるいもの——自分が肉であることを忘れた肉の臭いがした。


「さて、アスゴルド」彼は同じ微笑みのまま言った。「そろそろ、手のほうに移ろうか」


恐怖は、消えなかった。


ただ、縮んだ。


小さく、硬く、熱くなった。舌の下でくすぶる、炭火の粒。


このクソ野郎。


身をよじり、革紐から手を引き抜こうとした。台が軋んだ。手首の皮が火を噴いた。肩のどこかで、何かが鳴った——気のせいかもしれない。


「暴れるな、坊主」ゲイルは穏やかに言った。「その紐は、お前より年上だ。そして残念ながら、お前よりまだ賢い」


彼は薄く笑い、俺の手首へ歩み寄った。


「授業は、生徒が叫んだところで終わらん。たいていは、そこでようやく、聞く気になるものだ」


脚の痛みは、一秒たりとも引かなかった。


だが、彼が手の指に触れたとき、悟った——痛みには、かいがある。


そして俺は今、一つ上へ上がった。


もう串でも、冷たさでもない。何か間違ったもの、それでいて、ほとんど几帳面なもの。誰かが俺の手を内側からつかみ、一気に折るのではなく、どちらへなら曲がる気になるかを確かめながら、一つずつ骨をばらしていく。


腱が張りつめた。


爪が、指の内へ引っ込もうとした。


骨がはっきりと軋み、自分の叫び声の向こうから、その音が聞こえた。


叫んだ。


だが今度は、痛みのためだけの叫びじゃなかった。


笑み崩れた老いぼれの醜い面を見ながら、たった一つのことだけを考えていた。


くたばれ、クズが。


その瞬間、痛みがどこか下へ落ちた。


消えたわけじゃない。


違う。


ただ、遠くなった。分厚い壁の向こうの物音になった。


部屋の中が、しんと静まり返った。誰かが世界から余計なもの——血の臭い、革紐の軋み、ゲイルの息づかい、俺自身の叫びまで——を、残らず取り除いてしまった。


残ったのは、心臓だけだった。


それが、一度だけ打った。


外へではなく——内へ。


閉じた扉を、内側から拳で叩く。


かちり。


老人の顔から、微笑みが滑り落ちた。


ゲイルは、ゆっくりと自分の手のほうへ首を回した。


かちり。


ごきり。


彼の指が、あり得ない方向へ折れ曲がった。続いて手首が、内側へ畳み込まれた。それから肘が、ぐるりと、柔らかく、いやらしく回った——中に骨などなく、古い蝶番だけが仕込まれているのだと言わんばかりに。


彼は叫ぼうと口を開けた。


間に合わなかった。


「あ——アスゴ……や、やめ……よ……」


ゲイルの腕が畳まれていく。暗がりの中、説明書もなしに誰かが無理やり畳んだ、折りたたみ式の道具だった。肩が内側へめり込む。背中が角へと折れ曲がる。膝が、前でも後ろでもなく、どこか横へ崩れ落ちた。


軋みが、一つ、また一つと続いた。


乾いた音だった。


事務的だった。


ほとんど、礼儀正しかった。


ゲイルは、もう立っていなかった。その体は、自分自身の内側へ畳み込まれ、縮み、すぼまり、皮と布と骨でできた角ばった塊になっていく。


そして、床に崩れ落ちた。


一瞬、静かになった。


笑おうとした。だが喉から出たのは、濡れたかすれ声だけだった。視線が、自分の足に落ちた。親指のあった場所で、血まみれの空洞が脈を打っていた。


つまり、奇跡なんて起きない。


あるのは、別のやり方で醜くなること。それだけだ。


闇が下から立ち上り、台を、壁を、ナイフを、折り畳まれた老人の体を覆っていった。


そして、俺を。


****


臭いが、鼻を突いた。


薄目を開けた。


体じゅうに、脱力と悪寒が広がっていく。震えが止まらなかった。骨が中で他人のものになり、いまごろ肉になじもうとあがいている——そんな震え方だった。


あたりは、完全な闇だった。


頭を持ち上げようとした。


できなかった。


足元のあたりで、空洞が鈍く、しつこく、犬が鳴くみたいに、みじめにうずいていた。指はもうないのに、まだ痛む。


体らしい、たちの悪い冗談だ。


自分の一部を失ってなお、こいつは律儀に、俺を苦しめる機会を逃さなかった。


罵ろうとした。


出てこなかった。


意識が、また落ちた。


****


「生きてる」


声は、ざらついていた。他人の声だった。


その言葉が自分のことだと、すぐには気づかなかった。


金属が鳴った。


目を開けた。


まず、光が見えた。どこか上から落ちてきた、細く汚れた光の筋。


それから、人影。鎧をまとった大柄な男たちが、解体台を囲んで立っていた。


天使では、なかった。


天使は、たぶん、こんなに重い長靴は履かない。


一人が、抜き身の剣を提げていた。刃には、はっきりと文字が刻まれていた。


「見せかけるより、在れ」


なぜか、その言葉が、嫌味に思えた。


いまの俺には、在ることも、見せかけることもできなかった。


「ダングリトン卿、こいつは繋がれています」男の一人が言った。「外してよろしいか」


剣を持った男は、すぐには答えなかった。


その視線が、自分の上を通っていくのを感じた。革紐を。血を。足の欠けた場所を。隅に折り畳まれ、まだこの世から捨てきれずに残されたゲイルの体を。そして——俺の首の傷を。


「急ぐな」ダングリトン卿が言った。


その声は、落ち着いていた。


そのせいで、よけいに嫌な感じがした。


「まず、台を見ろ。それから、こいつを——とりわけ、その首を見ろ。それから、もう一度、壁際に転がっているものを見るんだ」


「こいつがやったと?」


「俺はな、こういう台の上で生きている奴が、無実だったためしはめったにないと思っている」ダングリトン卿は言った。「そして、まぐれで生き残る奴は、それよりもっと少ない」


自分は悪くないと、言いたかった。


老いぼれが、勝手にやったんだと。


そもそも正直なところ、いまの自分が何者なのかも、よくわかっていないんだと。


口から出たのは、かすれた音だけだった。


ダングリトン卿が、さらに顔を近づけた。剣の刃が、俺の顔のすぐそばに来た。


「聞こえるか、小僧」


瞬きした。


たぶん、それが「はい」だった。


「よし」彼は言った。「なら、馬鹿な真似はするな」


彼は身を起こした。


「外せ。ただし、刃は喉に当てておけ。動いたら——斬れ」


剣が宙に舞い、肉切り包丁のごとく振り下ろされた。


革紐が弾け飛んだ。


両手はたちまち手であることをやめ、肩に縫いつけられた、二つの重たい役立たずの物体に成り果てた。台から滑り落ちかけたが、誰かが襟首をつかんで引き止めた。


奴らは、俺を助けているんじゃない。


檻を、開けているんだ。


そして——そこから誰を出すのか、まだ決めていなかった。

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