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神に祝福された街  作者: 風谷 華


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最終話 産声

あれから三年が経った。


ヴェルナは、変わらず美しかった。


朝市には花が並び、石畳は磨かれ、水路には清らかな水が流れ、白亜の神殿は丘の上で光を浴びていた。


ルシアは今日も市場に出た。


隣のマルタ——ある朝突然戻ってきたが、誰も気にしていない——に耳打ちした。


「また今日も、アノンさんのところに赤ちゃんが生まれたって」


「そうなんだ!それで、何人目?」


「三人! しかも全員、青い目の、ほっぺのふっくらした、本当に可愛い子ばかりですって」


マルタは笑った。


ルシアも笑った。


その笑顔の口の端から、今日はもう、細い触手が覗こうとするのを、ルシアは気づかないふりをした。


ベルタが向こうから歩いてきた。


「おはよう!」


元気そうだった。

いつものベルタだった。


ただ、長袖を着ているのは、今日が少し寒いからだろう。


袖の端からわずかに見える手の甲が、うっすら節状になっているのは、きっと乾燥のせいだ。


「娘ちゃんは? 今日、学校?」


「うん。

元気に行ったわよ」


元気に行った。


首の後ろのまだ細い線が服で隠れるのを確認してから、送り出した。


娘は笑顔で、元気に、走って行った。


「そうかあ。

うちの子も最近、本当に元気で。

すくすく育ってるわよ」


「それは良かった」


「ヴェルナの子って、本当に丈夫よねえ」


「神様がお守りくださってるから」


三人は笑い合った。


屋台に並ぶ果物は艶やかで、焼きたてのパンは良い香りで、どこかで赤ちゃんが泣いている。


美しい朝だった。


完璧に美しい朝だった。


そして池の底では、今日も繭が揺れている。


水草の間で、次の段階へと向かう「子供たち」が、静かに眠っている。


街の広場に、産声が響いた。


高らかで、澄んで、生命力に溢れた声だった。


女たちが振り返り、笑顔になった。


「また生まれたのね」


「何人目かしら?」


「可愛いでしょうねえ」


「ヴェルナの赤ちゃんは、みんな可愛いもの」


そうよ。


そうよね。


神様がお守りくださっているから。


この街は、今日も続く。


産声は上がり続け、


子供は育ち続け、


変容は深まり続け、


母親たちは笑い続ける。


都合の悪いことは忘れ去られ、繁殖は繰り返される。


ここは、『神に祝福された街』だから。




  完

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