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第六話:魔王軍のハニートラップ。〜全裸勇者vsサキュバス、誘惑と理性の境界線〜

「物理と魔法が通じぬなら、精神を。本能を。……勇者ダイ、お前を愛の牢獄へ堕としてやろうぞ」


 魔王城から放たれた次なる刺客、それは四天王の一人、妖魔公リリス。  

 数多(あまた)の英雄をその美貌で骨抜きにし、国一つを一夜で滅ぼしたという伝説のサキュバスである。


 その夜。 

 王城の自室で眠るサトウの前に、月明かりを背負って彼女は現れた。   

 薄い羽衣のようなドレスを纏い、甘い香りを振りまきながら。


「……勇者様、起きてください。わたくしは、リリスと申します。そんな窮屈な呪いのコートなど脱ぎ捨てて、私と温め合いませんか?」


 リリスはベッドに腰を下ろすと、至近距離からダイの瞳を覗き込む。 

 本来なら、ここで男は理性を失い、彼女の言いなりになるはずだった。


 だが。   

 ダイの瞳は、死んだ魚のように濁っていた。


「……リリスさん、でしたっけ。……あの、今何時ですか?」


「えっ? 夜の二時過ぎかしら……」


「深夜二時……。ああ、前世のブラック企業時代、エナジードリンクを三本開けて、バグ修正の山と格闘してた時間だ。あの頃、俺の性欲は完全に『業務効率』という名のゴミ箱に捨てられたんですよね」


 ダイは遠い目をして、虚空を見つめた。

「今の俺にとって、美女の誘惑より『布団で八時間寝かせてもらう権利』の方が、百万倍はエロいんですよ」


「な……な、なんですって!? この私の美貌より、睡眠ですって!?」  

 プライドを傷つけられたリリスが、業を煮やしてダイの胸元に直接触れようとした。   

 魅了の呪いを直接流し込み、無理やり本能を呼び覚まそうとしたのだ。


 だが、その瞬間。   

 サトウの肌が、拒絶の輝きを放った。


 パォォォォォォンッ!!


「ぎゃあああああああッ!?」


 至近距離での『全裸波』。   

 リリスの勝負服は一瞬で消え去り、彼女自身も地面に叩きつけられる。  

 そして、逃れようのない『全裸破』の衝撃が、彼女の脳内の秘密の扉をこじ開けた。


「う、うあああ……! 言いたくない、言いたくないのにぃ!」   

 リリスは全裸で身悶えしながら、涙ながらに絶叫し始めた。

「実は私、誘惑なんて本当は苦手なんですぅ! 露出度の高い服を着るのも本当は恥ずかしくて、非番の日は一日中、色落ちしたジャージでポテチ食べながら、BL小説を読んでニヤニヤしてるだけの腐女子なんですぅ! 人に見られたくない推しカプの妄想ノートが枕の下に三冊あるんですぅぅぅ!!」


「……重い。今の告白は、ハイドの時より精神的に重いぞ」   

 ダイはそっと、毛布を彼女の肩にかけた。

「もういい……もういいんだ、リリスさん。……ジャージで推し活、いいじゃないですか。それが貴女の『本当の装備』だったんですね」


「う、うわあああああああん! 恥ずかしくて死ぬぅぅぅ!!」   

 リリスは毛布を体に巻き付け、魔王城へと全力疾走で逃げ去っていった。


 翌朝。   

 魔王の元に、最悪の報告が届く。


「報告します! 四天王リリス、勇者ダイに完敗! 逆に性癖をバラされ、現在は自室で毛布にくるまって『私の聖域が汚された』と嗚咽しております!」


「あの男には物理・魔法だけでなく、サキュバスの誘惑すら通じぬというのか……!」


 玉座の間が、絶望で凍りついた。


「四天王の出撃は停止。これ以上は、被害が拡大するだけだ」


 魔王は椅子から立ち上がり、言った。


「……我が出よう」


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