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7話 ニート、訓練す


 うーん。

 俺は首を傾げる。


 人や物の情報を、知りたいと思えば知る事が出来ると知ったが、人には使えないので自分で使ってみた。

 だが結果は、疑問が残るばかりだ。


 種族:ghnsa

 個体名:nv森bhn人

 ⬛️⬛️により⬛️⬛️した⬛️⬛️。

 ⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️。

 ⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️。

 


 なんだこれ。

 俺はいつこんな化け物みたいになったんだ。

 種族から名前までぐちゃぐちゃなんだが。

 他の人は黒塗りこそあれどこんなのではなかった。


 言うまでもなく、俺は普通の人間である。

 両親は健在だし、この歳まで外に出なかった俺を手厚く育ててくれた。

 多分国のプロジェクトに選ばれなかったら、この先もニートのままだっただろう。

 生まれも育ちも普通、とは違うかもしれないが変ではないはず。


 となれば、昨日から感じる妙な既視感が原因だろうか。


 分からん。

 分からん事は考えても仕方ないので、訓練をする事にした。

 訓練用人形は、斬った傍から修復して元に戻っていた。

 何とも便利な素材で作られているらしい。

 型も何もない適当な動きだが、妙に様になっている感じがする。

 ただ、斬っている途中にたまに何か生物を斬った感触がフラッシュバックするのが気色悪い。


 この日もほどほどに切り上げる事にした。


 その後数日は、同じような日々を過ごした。

 たまに大場さんが現れては、アドバイスをしてくれるようになった。

 目の前で人形を両断した時はかなり驚いていたな。

 俺でも出来るんだから他の人でも余裕だろう。

 北見さんが人形を粉砕している所も見たしな。


 だが、俺がここの剣でそれをやっているのが驚きなんだという。

 どういう事か聞けば、ここの剣は刃が潰されているので、よほどの技量がなければ斬れないらしい。

 そのよほどの技量を、スキルの無い俺が出来るのが驚きなんだと。

 気づいていないだけで俺はスキルを持っているのではないかと言われた。

 そういわれると、そんな気もしてくる。


 その後、たまに模擬戦が行われる事になった。

 人形も両断できる俺は、安全の為に木製の剣を使う事になった。

 俺よりも探索者歴の長い相手だったのでその対応にいら立っていたが、目の前で人形を両断すると青い顔で了承した。


 で、結果だが。

 普通に負けた。

 長剣の扱いは良く、感も鋭い、というのが大場さんの評価だったが、普通に力負けした。

 つまり俺が貧弱過ぎたのが原因だった。


 それから長剣の訓練よりも基礎訓練を行うようになった。

 そこに、北見さんも参加していた。

 すごく嫌そうに参加しているのが印象的だった。


 そんな生活を一か月。

 そろそろ異界化迷宮へ行ってこいと大場さんに言われた。

 手ごろな、誰も行かない場所があるらしい。

 危険度も低く、迷宮核まで辿り着いてもいいし、壊さなくてもいい。

 そんな良く分からない評価の場所。

 どうやら山の中にあるらしく、近隣への被害もなく浸食も非常に緩やかなそこなら、比較的安全に経験を積む事が出来るらしい。

 そんな場所は今の時代幾らでもあるので、好きにしろと言われた。

 どうやら過去の探索で規模と脅威度を計ったらしく、そこは二等級異界化迷宮へ分類されているらしい。


 ただし、一人よりも二人というわけで北見さんと一緒に行く事になった。


 すごく嫌そうな顔をされた。




 というわけで俺たちは二等級異界化迷宮へきている。


 それではご武運を。お帰りの際はご連絡を下さればお向かいに上がります」


 俺たちをここまで連れてきた人は、そう去っていった。


「……早く終わらせましょう」


 北見さんは機嫌が悪そうだ。

 先に行く北見さんへついていく。

 二度目の異界化迷宮。

 ここへ足を踏み入れて、死んだ人間は数知れない。

 俺たちは運よく生き残っただけだ。


 若干怯えつつ、足を踏み入れる。

 空気が一瞬で切り替わったのが分かった。

 それと同時、またあの既視感が襲ってきた。


 ――ゴブリンに襲撃される。


 俺はすぐさま北見さんに注意するように伝えた。

 北見さんは訝しむが、すぐに森の奥から矢が飛んできて俺がそれを切り落とすと、すぐさま短剣を二本抜いて戦闘態勢に入る。


「どうしてわかったの?」


 北見さんの疑問は当然。

 だがその答えは俺も知りたい。


 断続的に飛んできた矢を払い終えると、人型の何かが姿を現す。

 濃い緑色の、醜悪な怪物――ゴブリン。

 それが4体と、その後ろにひと際大きなゴブリンに近い見た目の――ハイゴブリンがいる。


「私は弓を持っている奴をやる。他を頼むわ」


 またしても既視感があったが、今はそんな場ではない。

 初めての実戦だ。

 だというのに、妙に落ち着いていた。


 俺と北見さんは互いに走りだす。

 俺はナイフと棍棒を持つゴブリンの所へ。

 北見さんは弓を持ったゴブリンの所へ。


 軽快に地面を蹴り、素早くゴブリンとの距離を詰めて剣を振るう。

 肉を裂く感触と共にゴブリンは血を吹き出す。

 それに構わず、続けざまにもう一体のゴブリンの首を刎ねる。

 訓練場の人形の方が硬いな。


 ――前にもそう思った気がする。


 『ギギャァァアアア!』


 おっと。

 ハイゴブリンが拳を振り下ろそうとしているので、後ろへ飛んで避ける。

 俺がいた場所にハイゴブリンの拳がめり込む。


 ふぅ、と息を吐く。

 自然と、俺の足に何かが集まっているのを感じた。

 これは覚えがある。

 訓練中にも何度かこうなった事があった。


 確か、大場さんが教えてくれたな。

 この光は魔力であり、スキルの発動兆候だと。


 ――【スキル:韋駄天】


 俺の体が弾かれた様に飛び出す。

 加速する視界だが、狙いはただ一つ。

 俺はその勢いのまま、ハイゴブリンの足を切断する。


『ギギャァァアアア!』


 片足を失いバランスを崩したハイゴブリンが倒れこむ。

 追撃を掛けようとして、止まった。


 いつの間にか、北見さんが倒れこんだハイゴブリンの首の上にいた。


 ――【短剣スキル:双牙】


 短剣が光を帯び、振られる。

 二本の短剣を挟み込むスキルだが、その威力は訓練場の人形を粉砕する程だった。

 ハイゴブリンの足を斬った時にも思ったが、こいつは硬い。

 だが、あの技の前には無意味だろう。


 ――ふと、この光景にも覚えがあった。


 北見さんが、ハイゴブリンの首を粉砕し、周囲に鮮血が飛び散る。

 

 ――覚えている。


 俺はこの光景を、明確に知っている。


「お疲れ様。意外と余裕ね」


 北見さんが短剣の血を払いながら言った。

 確かに、新人向けと言われるだけはある。


 ……でも何かがおかしい。

 いや、おかしいのは俺だ。


 俺は今すぐ、帰らなければいけないと考えている。

 そうしなければ、後悔する事になると。

 だがそれは言葉にならない不安だ。

 何となくでしかない。


 結局、俺は北見さんにこの感情を伝える事は出来ず、先へ進む事となった。


 

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