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6話 ニート、⬛️⬛️⬛️⬛️


 「こちらが探索者IDカードになります。再発行にはお金が必要なので気をつけてくださいね」


 感じのいい受け付けに渡されたカードには、俺の顔写真と名前、あと番号が割り振られていた。


 ……なんだこの感覚は?

 既視感、というべきだろうか。

 前にも同じことを言われた気がする。


 首を傾げながら、俺は訓練場に向かった。

 かなり広いそこには幾つかのスペースで武器を振るう探索者の姿があった。


「訓練場へようこそ」


 訓練場の係の人と話をし、壁際にある武器を好きに使っていいと言われた。

 言われた場所へ向かうと、見覚えのある姿があった。

 あの地獄のツアーに参加した、俺と同じ探索者になる為のプロジェクトに参加した人だ。

 彼女も生き残っていたのか。


 名前は確か……北見だったか?


 そう伝えると、「どうして私の名前を?」と言われた。

 名乗られた覚えがあったのだが、違ったか?

 どこかで聞いたのかもしれない。


 不審者を見るような目つきをされたので、話を切り上げて武器が陳列してある棚を見る。

 ショートソードに長剣、短剣に大剣、セスタスと書かれた拳用の武器もある。

 俺は自然な流れで長剣を手にした。

 ん?

 俺はどうしてこれを選んだんだ?


 何となく、目についたから、か?


 不思議な感覚だったが、疑問が晴れる事無く俺は訓練場の空いている場所へ向かう。

 そこには人形が置いてあった。

 訓練用の人形で、壊しても自己再生する素材で出来ているらしい。

 流石は探索者の為の施設。

 今の世の中にはそんなものがあるらしい。


 長剣を構える。

 若干の重さはあるが、使い方は分かる。

 振り上げて、下ろす。

 それだけの動作だったが、自分でも驚く程にスムーズにいった。

 当然ながら今まで家から出なかった俺が、突然こんな事が出来るようになるとは。

 これも探索者になったおかげか?


「良い素振りだな。何か経験があるのか?」


 何度か剣を振るっていると、声を掛けられた。

 そちらへ振り向くと、スキンヘッドの大男が立っていた。

 顔に傷があり、厳つい。

 俺は首を振って否定する。

 初めて剣を振ったのだと伝えた。


「ほぉ、初めてでこれは。お前さんは才能があるのかもな。()()()は?」


 スキル、と言われて首を傾げる。

 だがすぐに思い出した。

 探索者は自らの行動や経験によって、スキルというものを獲得する事が出来るのだという。

 スキルを獲得すれば獲得した時に自ずと理解できるらしいが、俺にそんな覚えはないので、何もないと伝える。


「スキルなしだぁ? 普通、適性のある武器を持てば探索者なら何かしらのスキルを手に入れれるんだがな」


 訝しげな表情をされてしまう。


「スキルがねぇなら、悪い事は言わねぇ。やめときな。スキルのあるなしじゃ、この先生き残れるかどうかが変わってくるからよ」


 そう、なのか。

 非常に扱いやすいので、このまま続けたかったのだが。


「ま、後からスキルが出てくる事もないでもないからな。好きにしな」


 と、大男は去っていった。

 何だろう。

 不安な気持ちにされただけだ。


 気分が落ち込んだので、今日の所は帰る事にした。



 翌日、俺は訓練場に来ていた。

 探索者になった以上は、2か月に一度異界に行かなくてはいけないらしい。

 行きたくはないが、死ぬ――と明言されたわけではないが、似たような脅しをされているので行かない訳にはいかない。

 少しでも強くならないと結局異界でも死ぬ事になるので、訓練をする必要がある。


 訓練場へ行くと、今日も北見さんがいた。

 昨日変な感じになってしまったので、軽く頭を下げるだけにしておく。


 あの大男に言われたが、俺は長剣を使う事を選んだ。

 今はスキルがなくても、そのうちスキルが出てくるかもしれないしな。

 スキルが何なのか知らないけど。


 昨日と同じ場所で、人形と向かい合う。

 長剣を構え、振るう。

 一閃。

 鋭い軌跡を残して人形は刃筋に沿って切断される。


 ――ゴブリンより硬いな。


 ん?

 今、俺は何を考えた?


 頭の中を巡った思考が理解できず、混乱する。


「よぉ、結局それ使ってるのか?」


 疑問の答えが出ないでいると、昨日のスキンヘッドの大男に話しかけられた。

 何なんだこのおっさん。


 そう思っていると、視界に文字が浮かび上がってきた。


 種族:人間

 個体名:大場健司

 ⬛️⬛️歴5年。

 第三等級異界化迷宮での出来事により、左腕の機能を喪失。

 現在は⬛️⬛️の育成を行っている。

 

 ――なんだこれ。

 目の前に現れた情報に困惑する。

 おっさんには……見えていない。

 俺だけにしか見えていないのか。


「おい、どうしたんだ?」


 驚きで固まる俺に、おっさんが肩を揺らす。

 ふと気づけば、目の前に現れた文字は消えていた。


 今のは、このおっさんの事か?

 俺は恐る恐る、名前を聞いた。


「あん? あぁそういや、名乗ってなかったか。大場ってもんだ。昔は探索者だったが、ケガして今は他の探索者の訓練やらを行ってる」


 情報の通りだ。

 どうやら俺の体は、いつの間にか個人の情報が現れる不思議構造になってしまったらしい。


 ……いやこれがスキルってやつなのか?


 試しに周囲を見回す。

 見るだけでは変化せず、知りたい、と思った瞬間に文字が現れた。

 使い方は分かったが、俺が知るはずもない個人情報だろう説明文は、誰が書いてるんだ?


「変わったやつだな。ま、なんかあったら聞いてくれ」


 と、おっさん――大場さんは去っていった。

 それはどうでもいいのだが、この能力――スキルか?――は凄いな。

 いつの間にこんなことが出来るようになったんだろうか。

 もしかして探索者ならだれでもできるとか?


 説明会ではそんな話はなかったが、公然の秘密、というやつかもしれない。

 そうなると、勝手に見るのはかなりのマナー違反だっただろうか。


 ちょっと反省した。

 

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