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水流士-因子を解く-  作者: 小野里
- 新人研修編 -

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第98話:エネルギーグリッド

 

 璻は喜三郎に問いかける。


「そもそも私、環境業務が初なんですが環境業務は毎回業務分担されているんでしょうか?」


 喜三郎は笑顔で璻の問いかけに応える


「璻さんは環境業務初めてだったっけ?環境業務はその土地ごとにやる仕事が変わるんだが、その時々に合わせて柔軟に対応できる人を選んでる。本当は環境業務に特化した常盤や神呂木(かむろぎ)あたりを回そうかと思ったんだが……関西自治区で急遽環境業務を行う事になりそっちに回した結果人が足りなくなってね。急な人選で申し訳ないけど……君たちにどうかなっと?」


 璻は喜三郎の言葉を聞き妙に納得した。


 ……なるほど。単に人が足りなかったって感じだったのね……


 璻は喜三郎に言葉を返した。


「事情はわかりました。環境業務の主な目的は地域の水の復旧ですか?」


 喜三郎はううんと悩むと璻の質問に応える。


「主に水資源の復旧と拝金主義社会が残した残骸の片付けと自然環境の改善の手助けかな?ほら、最近、老朽化で経済バブルの際に作られた建物が半壊し工場にあった有害物質が水に溶け込んだ事があったじゃない?有害物質入りの水道水を飲んだ人がバタバタと亡くなって大変だったからね。環境を人間が管理できる状態まで持っていかないとこのままでは生き物や作物は育たなくなるでしょ?自然環境を変えるには畑の土だと約5年かかるが、地域全体の自然を変えると10年単位で見なくてはいけない。今やらないと間に合わなくなるからね」


 寂しそうに語る喜三郎の言葉には少しだけ申し訳ないという感情が垣間見えていた。


 ……確かに自然環境を整えるのにはそれ相当の時間がかかる。それに加えて以前国で補助金を出した整備品が今処分出来ずに問題になっている。災害時に爆発し死者が出たり、整備品の処分に困って不法投棄をし火災で森が焼ける。今まで経済を回すのに必死でそれに対する被害を考えてこなかったのと今までの国の基準が甘すぎたのが原因。今だけ金だけ自分だけの考え方でそのツケが今まさに回ってきてる……



 璻は静かに頷くと喜三郎に返事を返した。


「確かにそうですね。明日の業務で環境が変わるきっかけを作るって感じですか……でも一回じゃ変わらないですよね?これ誰かが定期的に管理する必要がありますけど誰が引き継ぐんです?」


 喜三郎は璻の問いかけに応える。


「そうだね。この作業は一回じゃ変わらない。なので隠者全体で定期的に自然を見ることになる。最初に環境を変えるには大人数で作業する必要があるんだ」


 喜三郎の言葉に璻にはある疑問が浮かんだ。


 ……なぜ、世界政府は管理しないんだろうか?こういう時のための政府じゃないのか?……


 璻は少し不満そうにしながら喜三郎に質問をした。


「あのっ…政府って管理とか動かないんですか?」


 喜三郎は首に手を当てながら璻の質問に応える。


「残念ながらその政府が俺らに仕事を丸投げだからな…民間人が変わらないと政府なんて動きやしないね。当てにならないやつに無駄な希望を抱いて押し付けても環境も現実も少しもよくならない。それよりもちゃんと動ける人間が動いて根本的な原因を突き止め、結果こういう原因だったから、この原因を解決するには具体的にこういう行動をして欲しいだと政府も把握しやすいし民間企業も周辺住民も関心を持ちやすくなる。まずは先に動いて分析をし結果を出す。規模がデカい問題だと必要に応じて政府に交渉って感じだな」


 璻は思わず喜三郎の言葉を聞き腑に落ちた


 ……確かに口だけで動かない人間と動いて実績のある人間では動いて結果を出している人間の方がいくらか信頼は出来る……


 喜三郎は話を続けた


「環境業務の原因は今や崩壊した建物、以前の政府が無理矢理企業に導入した物や山、川の環境整備に人がいない場合だったり、神社仏閣の取り壊しで土地のエネルギーバランスがおかしくなったりが原因の大半だな」


 喜三郎の言葉を聞き璻は頭の中で考える


 ……そもそも人口が減ってきたのに人口よりも建物の数が多い状況だからというのは理解出来る。だけど、そのエネルギーバランスってなんの事を言っているんだろう?そう言えば、全体会議でもエネルギーグリッドって言ってたけどそもそもエネルギーグリッドってなにっ?……


 璻は耐えきれず喜三郎に質問をする


「そのエネルギーバランスってなんですか?全体会議でもそしじぃにエネルギーグリッド組むって言ってましたけど……」


 喜三郎が少し困った様子でボソッと応える。


「しまった……説明するの忘れていた」


 喜三郎は顔を引き攣らせながら諏訪を見ると諏訪は呆れた表情で喜三郎に説教を始めた。


「喜三郎さん俺言いましたよね?ちゃんと龍後に説明しろって」


 喜三郎は軽く頭を下げて諏訪に謝る


「ごめんなさい。すっかり忘れてました。今説明致します」


 喜三郎は苦笑いをしながら全員を見渡し説明を始めた。


「いいか?復習がてら全員が聞くように。いいな!日本の土地にはそれぞれのエネルギーが流れている。元々その土地に自生している大きい木は地球の地下にある地殻からエネルギーをもらっていることが多い、その中にたまぁ〜に木の幹が上に向かって捻れている木があるんだ。その場所は地球のエネルギーが一番濃い場所の目印になる。基本的そういう場所は神社や寺の中に自生している木が多いんだが……いかんせん神社や寺がない場所にもいくつも存在する。その木が枯れそうになったり葉が不自然に枯れていたりするとその土地のエネルギーバランスが崩れている事がわかる。それを全部踏まえて”エネルギーバランス”って言うんだ」



 喜三郎の説明に何故か璻は唖然とした。

 その言葉通りだと森の中にある木々を一本一本、木の幹を確認する作業が必要になる。そんな事をやってたら平気で一か月はかかるだろう。


 璻は喜三郎を見るとだるそうな表情で質問をした。


「という事は……最初に木の幹が捻れている木を探さなきゃいけないんですね。ものすごい時間かかりそうですが……」


 諏訪が喜三郎と璻の会話に口を挟む


「安心しろ。エネルギーバランス用の木はもう見つけてあるからそこは心配すんな」



 璻は諏訪の会話にホッとした。


 ……この森の中木の幹を確認する作業は途方も暮れる……


 璻は唐突に諏訪と喜三郎に質問をした。


「えっ……じゃあエネルギーグリッドって何?」


 喜三郎は璻の質問に応える


「エネルギーグリッドは地球全体を網目のように覆うエネルギーのこと。我々には素粒子が細かすぎて見えないんだ。日本の土地はそれぞれ役割があり、その土地仕様にエネルギーを調整する事が出来るのがそしじぃの役目。まぁ……そしじぃの使う道具が重要になるんだが……それは実際見ればわかるかな?」



 喜三郎の言葉ではあまり想像が出来なかった璻は気の抜けた返事をした


「はぁ……」


 ……説明だけだと全然想像がつかないんだけど……


 璻は続けて喜三郎に質問をする


「ちなみに私以外全員環境業務経験者の方々ですか?」



 喜三郎は深く頷くと璻に言葉を返す


「ああ。ここにいる水流士は全員環境業務に参加している。新人水流士は璻さん以外なんらかの形で一回は参加しているよ。特に八剱、北島、矢崎は環境業務に特化したメンバーだからわからない事は聞くといい」


 矢崎は唐突に喜三郎に声をかける


「喜三郎さん〜それってぇ〜ウチらのこと褒めてます?マジ神って感じですか?」


 喜三郎はだるそうに矢崎に言葉を返した。


「はい、はい。マジ神ってるぅ〜これでいいか?」


 矢崎は笑いながら言葉を返した


「喜三郎さん。オジかわちぃです〜」


 䦰橋は矢崎の言葉にツッコミを入れる


「おい鼓。喜三郎さんは上司だぞ?ギャルを出すのは後にしなさいよ」


 矢崎は䦰橋の言葉を返した


「嘉月さん、ノリ悪い〜」


 䦰橋は矢崎に言葉を返した


「会議中にいきなりギャル出してきたお前の神経を疑うわ!もっと敬意のあるギャルになりなさいな」


 諏訪は何故か䦰橋の話に割って入るとツッコミを入れる


「嘉月さんそれ叱ってないからっ!矢崎とりあえずお前は黙れ。もうすぐ終わっから」


 諏訪の注意に何故か矢崎はだるそうに返事をした。


「へぇーい」


 諏訪は深くため息をつき、ボソッと言葉を呟いた。


「ったく……」


 喜三郎は全員に声をかける


「とりあえず班分けとメンバーは伝えたな。業務の詳しい内容は明日伝える。明日は現地集合だが……今回水流士は全員で集まって行くことにする。朝8時半ロビーに集合な。ちなみに義景は7時から現地にいる予定だ。話は以上だ」


 喜三郎の話が終わると諏訪はいきなり手を叩いた。


「はいはい〜連絡事項はこれで終わり。全員解散です。全員椅子片付けてから出てってください」


 そう諏訪がいうと全員立ち上がり、座っていた椅子を片付けはじめた。


。:*:★。:*:★━━補足ポイント━━★:*:。★:*:。


・土地のエネルギーバランス

日本の各地にはそれぞれエネルギーがあり各地によってエネルギーは変わります。土地のエネルギーは木の幹を見るとわかります。上に向かってねじれている木の幹は特に地盤のエネルギーを強く受けているので水流士はそれを目当てに調査を始めます。ちなみに木の幹を調査するのは皇側の仕事になります。



・エネルギーグリッド

地球全体を網目のように覆うエネルギーのことを指します。

エネルギーグリッドは素粒子が集まって出来ています。調整するそしじぃの場合、超感覚、超視覚、超聴覚、これらの能力が全てずば抜けて高いため、この地域では毎回そしじぃがエネルギーグリッドを調整することになっています。

。:*:★。:*:★━━━━━━━━━★:*:。★:*:。

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