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水流士-因子を解く-  作者: 小野里
- 新人研修編 -

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第97話:拝金主義の弊害

 


「こちらでも事前調査をした結果、2つの要因が浮き彫りになりましたので情報を共有させて頂きます。まず1つ目、20年前にある企業がこの土地の地下水を汲み上げ無断で使用していた事がありました。その後企業の経営が悪化、撤退に至りましたが…あろう事か建物を更地にせず今現在も放置している状態です。この工場の近くに地下水が通っており、なぜか建物が崩れ地面に深く突き刺さっていることから地下水が通る経路で何かしら問題が起き、水を止めている可能性があります」


 璻は諏訪の話を聞き大学時代の環境学科のことを思い出した。


 日本は水が豊富な国でもある。経済バブルで各地に建てた施設が老朽化し自然災害を機に建物が壊れた話は数多くある。それでもって湧水が通る箇所を堰き止められ、水が枯渇した地域を大学時代フィールドワークで調査したことがあった。


 この時代、こんなことはざらにある話だ。


 近年では老朽化した建物が崩壊し水道管が破裂、インフラが止まるニュースをよく耳にするが今も拝金主義社会の恩恵を受けている地域もまだまだある。便利になった反面、管理が複雑すぎるのは些か皮肉なことだとも思う。



 ……結局人間が自分たちの便利や利益を求めた結果、自分たちの首を絞めてる事に経済が崩壊するまで気がつかなかったんだよね……



 諏訪は一枚の書類をペラっとめくると話を続けた。


「問題の2つ目になります。この土地には元々神社がありましたが土地勘のない外国の投資家が神社を買い今現在放置してる状態です。おかげでその神社は鳥居が壊れており、現在は管理が出来ていない状態です。ご存知かと思いますが日本という土地は八百万という考えがあり、神仏融合の国です。神社や寺には土地を自然災害から守る役割と人の魂を鎮魂する役割、また水源地の自然を祀るために神社や寺が多く存在しています。今回の神社は水源地の上に神社が建っており、自然に敬意を払うため修繕する必要があります。実は…この神社を買った外国の投資家はすでに亡くなっていますが…ご家族に修繕許可書をデータで頂いておりますので皆さんは安心して作業に取り掛かっていただければと思います」



 璻は諏訪の話を驚きながら聞いていた。



……亡くなって管理できないくらいなら土地返してくれたらいいのに。何をそんな執着してんだろうか?それにしても寺も神社もそれぞれ役割があって建てられている事が多いけど、ちゃんと水流士では説明するんだぁ…びっくり……


 今や仏教も神道も毛嫌いするこの時代に日本の歴史や信仰心なんてくだらないと思っている人が大半な時代になっている。璻は少し考えると諏訪の話の意図を考え始めた。


 ……わざわざ説明する理由って環境業務の意図がはっきりしないと全体の統制が取れないのかもしれない……


 諏訪は続けて話をする。


「なのでは、今回我々がやるべき事を主に2つです。1つ目は神社の修繕と半壊している工場の片付け、2つ目は土地の水に関する調査、全てが終わり次第そしじぃに土地のエネルギーグリッドを組み直して頂きます」


 諏訪の話に璻は諏訪の発言に疑問を持った。


 ……土地のエネルギーグリッドってなんだろうか?……


 この場で質問する話ではないなと判断し璻は諏訪の話を引き続き聞くことにした。


「環境整備要員の方は各自割り当てられたブロックでの神社の修繕と半壊した工場の片付けをお願いします。えぇ〜自然に返せるものなどは肥料にして土地に返して頂くように。ゴミの分別はきちっとしてください。では、この次ですが各役割ごとに説明を受けてください。終わった所から今日は解散となります。明日は朝9時に現地集合になりますので各自明日に備えて準備をお願いします。これにて全体会議を終了します」



 喜三郎がいきなりパンパンと手を叩き全員に呼びかける


「はい。じゃあ〜隠者の環境整備担当は隣の会議室に移動してね。水流士と新人水流士はこの会議室に残って待機」


 喜三郎の呼びかけに人が一斉に会議室から出て行った。璻は出ていく人たちをぼぉーと見ていると後ろから急に声をかけられる


「おい、何ボサっとしてるんだ?暇があるなら椅子片付けろよ。」


 聞いた事のある声に後を振り向くとそこには九鬼と穂積が璻の後ろに立って椅子を持っていた。


 九鬼の後ろにいた穂積が璻に話しかける


「あああ、あのね……獅子子さんが椅子ね。人数分出してそれ以外片付けて欲しいって。それから全体の説明するって」


 璻は穂積の問いかけに「そっか。片付けようか」そういうと席から立ち上がった。それを見ていた八剱は璻に声をかける


「龍後さん、俺らも片付け手伝います」


 璻は八剱の問いかけに笑顔で応えた


「ありがとうございます。助かります」


 八剱は北島と矢崎に声をかけた。


「おい。鼓、成政、片付けるって」


 矢崎と北島は「わかった」とそう返事をし周りの折りたたみ椅子を持ち畳んで押し入れに片付け始めた。璻は片付けている間に藤宮と新埜もその場にいた事に気がついた。そして見覚えのない綺麗な女性やマッチョの男性もちらほら見える。そうこうしている間に30人ほどあった椅子はあっと言う間に少なくなっていた。



獅子子は勢いよく襖を開け、部屋に入ると喜三郎と義景に声をかけた。


「義景、きっちゃん、連絡取れました。明日の準備は全て確認済みよ」


 義景は「ありがとうございます」と言って頭を下げた。

 喜三郎は周りを見渡し、椅子が人数分になったのを確認すると全員に声をかけた。


「片付けたな。各自椅子に座って話を……っとその前に自己紹介だな。俺と獅子子は大体全員面識あるとして、全員名前くらいは知った方がいいな。とりあえず担当水流士と助手の順番で座ってくれ」


 璻は椅子を持って藤宮の元に歩き始めた。

 藤宮は部屋の右端に椅子を置いたため璻も藤宮の後ろに椅子を置く。藤宮は少し落ち込んでいる様子に見える。

 

 思わず璻は藤宮に話しかけた


「あのっ…藤宮さん大丈夫ですか?というか、いつ戻ってきたんですか?」


 藤宮は少し落ち込みながらに璻の質問に応えた。


「さっきですよ、おかげで夜ご飯まだ食べてなくて……お腹空きました」


 藤宮はお腹を摩りながら璻の回答に答える。璻は思わず「おつかれ様です」そう応え静かに椅子に座った。


 喜三郎は全員座ったのを確認すると声をかける。


「よし全員座ったな。とりあえず自己紹介から始めようか。時間が惜しいから名前だけ1人ずつ言ってね?珍しい苗字が多いからすぐ覚えられるだろ?とりあえず……そうだな。右端に座っている藤宮ペアから挨拶な」


 藤宮ははぁっと深くため息を吐くと立ち上がり全員に向かって挨拶をした。


「藤宮泉です。よろしくお願いします。こちらが俺の助手の……」


 そう藤宮が言うと璻は慌てて立ち上がり軽く頭を下げ挨拶をする。


「龍後璻です!皆様よろしくお願いします!」


 その場にいた全員が拍手をすると藤宮と璻は静かに着席した。その後の挨拶は諏訪、九鬼、獅子子、穂積の挨拶を終え、穂積の後ろに座っていた綺麗な女性がサッと立ち上がった。


 女性は髪の毛をお団子にし簪をつけていた。ヨガ用の黒いハイウエストレギンスに首まである黒いハイネックスポブラをしており、黒い白衣を羽織っている。スタイル抜群のその女性は軽く会釈をすると挨拶を始めた。


「雨貝斎(あまがいいつき)です。こちらは私の助手でもあります」


 雨貝の後ろを見ると北島が立ち上がり軽く頭を下げた。


「北島成政(きたじまなりまさ)っす。よろしく」


 雨貝の隣に座っていた男性がいきなり立ち上がる。髪色は派手な赤色と黒、髪型はマッシュヘア。黒いタンクトップに長ズボンの男性、腕の筋肉がムキムキに見えている。黒い白衣を肩にかけ男性は挨拶をした。


「䦰橋嘉月(くじはしかげつ)だ。よろしく」


 その後ろには矢崎が立っておりアイドル並みの笑顔で全員になぜか手を振った。


「はい〜矢崎鼓(やさきつづみ)です。鼓って呼んでね?よろしくお願いします〜そして……」


 その後ろを座っていた八剱が立ち上がると軽く会釈をし挨拶を始めた。


「八剱凪音(やつるぎなおと)です。よろしくお願いします」



 喜三郎は全員を見渡し「はい、じゃあ奥にいる新埜が最後だな」そういうと新埜は立ち上がり挨拶する


「事務と連絡役の新埜吟(しんのぎん)です。皆さんのサポートを致します。以後お見知り置きを」


 新埜は軽く頭を下げ挨拶が終わると静かに着席した。


 

 喜三郎は全員を見て話を始める。


「よし、まず3つの班にわけて作業をする。1班、藤宮泉、龍後璻、八剱凪音、その3人は水分子の記憶を読み原因を調査、2班、獅子子、穂積兎鏡、北島成政、その3人は超視覚を使い水源地の通り道の確認、3班、䦰橋嘉月、矢崎鼓、九鬼朔、この3人超聴覚を使い音叉で水源地の周辺のエネルギー地盤の調整をする。雨貝と新埜は伝達役と各班のサポートに回れ。義景とそしじぃは本部で待機だ。俺は各班の監督に回る!質問や報告は俺によろしく。とりあえずここまでで質問ある人いる?」



 璻は喜三郎の問いかけに手を静かに挙げた。


。:*:★。:*:★━━補足ポイント━━★:*:。★:*:。


璻の大学時代の環境学科

・1話でも書きましたが、璻は昔大学で環境学科を専攻していました。大学のフィールドワークでは水が枯渇した地域の調査や湧水の保護活動などもやっていたため、諏訪の話には思い当たる節がいくつかありました。日本が経済崩壊した後に建物の廃墟問題は露骨にニュースでも取り上げられ、廃墟が原因でまさか生活水に影響が出るそんなことは考えもしなかった。これが拝金主義社会の最後の置き土産でもありました。


━━新キャラクターのご紹介━━


・雨貝斎(あまがいいつき)

性別:女性(既婚者、38歳)

誕生日:10月8日(天秤座)

趣味:生花、お茶を立てること、綺麗なものを見ること

特技:超視覚、幽霊観察、人間の感情を見ること

好きなもの:本、人と会話すること、獅子子

近づきたくない人:顔がいい事を棚に上げ任された仕事が満足にできない人間(※雨貝曰く本人は顔だけな男女は20歳までだと思っている)


・䦰橋嘉月(くじはしかげつ)

性別:男性(独身者、42歳)

誕生日:4月18日(牡羊座)

趣味:ドラム、和太鼓、ゴング、クリスタルボウル、音叉、歌

特技:超聴覚、特殊な周波数を聞き分けること、特殊な響きが見える、人や物や土地のエネルギーの振動数が見える

好きなもの:筋トレ、白いご飯

近づきたくない人:メンヘラ、自分の気分が暗くなる話をする人


ちなみにどちらも藤宮とは面識があり藤宮は昔雨貝に好意がありました。

䦰橋が無理やり諏訪を連れ回すのでなぜか藤宮も一緒に連れ回されて飲みに行く仲でもあります。


コメント、評価、いいね。お待ちしています✨

。:*:★。:*:★━━━━━━━━━★:*:。★:*:。

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