第94話:知的好奇心
置き時計の音が部屋の中に響く。
ふかふかのベッドといい、暑くもなく寒くもなく部屋の中は丁度いい気温。
まどろいながら、璻は目を開ける。
……あれっ……いつまで寝ていたんだろう?……
ゆっくりと自分の身体を起こした。
璻は目をこすりながら部屋の置き時計に目を向けた。眠たい目を擦り時間を確認する。時計の針は約束した時間より30分以上過ぎているのが見えるとすぐさまベッドから起き上がり、ドタバタと慌てながら部屋を出た。
……獅子子さんに30分後と言われたのに、45分も寝ていたっ!……
慌てて階段を降りロビーまで向かうとソファに座って待っている獅子子が見えた。向かいに座っているのは爽やかそうな青年、ポニーテールの髪型をしていた。顔には眼鏡かけていた。あれは?男性だろうか?嬉しそうに獅子子と談笑しているのが見えた。
……この人見たことあるような……たしか食堂ですれ違った人だよね?……
璻はソファに座っている獅子子の背後から声をかけた
「獅子子さんっ!遅れてすいませんでした!」
獅子子はパッと後ろを振り返り璻の顔を見ると璻は深々と頭を下げた。獅子子は笑いながら応える
「龍後ちゃんか〜いやー助かったよ〜」
……助かった?何が?……
璻は獅子子の言葉に頭の中で疑問が残る。
唐突にポニーテールの男性が璻に声をかけた.
「龍後璻さんですか!」
璻を物珍しく感じたのかポニーテールの男性はソファから立ち上がりじっと璻の事を見ていた。璻は少し警戒しながら男性に応える
「はい、そうですけど……どちら様でしょうか?」
それを聞き男性はツカツカと歩き璻の元へ近づいていた。
「俺、八釼凪音って言います。趣味はアニメと漫画と特撮とギャルゲーあと陶芸と金継ぎ、あと好きなスポーツはバトミントンとか卓球とかテニス、剣道も好きなんですよ。あとあと古代の文献とか口伝とかも好きでそれから〜」
身を乗り出しながら勢いよく喋る八剱に対し璻は若干引いていた。
……なんだコイツ……
璻は困った表情を浮かべていると獅子子は座っているソファから立ち上がり八剱の首の襟を引っ張ると止めに入った。
「八剱っ!いい加減にしな。ほんっと昔っから興味あると突っ込んでいくのやめなさいよ!怖がってんでしょうが!」
八釼は少し拗ねると言い訳をするように獅子子に応えた
「いやだって!自分と違う人間ですよ!どんな経験があるのか、どんな事が好きなのか?どういう思考なのか気になるじゃないですか!」
八釼の態度に獅子子は呆れながら掴んでいた八釼の首元から手を離す。
「いや、そういうのは信頼関係が出来てから聞くでしょう普通」
獅子子の言葉を聞きながら一理あるなと感じた八剱は璻に軽くお辞儀をした。
「あーごめんなさい!俺興味あると聞いちゃうタチだから」
八剱は手を合掌させ璻に謝ると獅子子は呆れながら璻に八剱の説明をする
「八剱は皇の親戚でね。昔から知ってるんだが……だいぶ変わった奴なんだよ」
獅子子の発言を不服そうに見つめる八剱は顔を右左にふり弁明を始めた。
「変わった奴とは失礼ですよ。獅子子さん!興味がある事に関して聞く事は俺にとって幸福ですよ。例えば……俺と付き合った女の子が別の男性と浮気したとするでしょう?なにが原因で浮気という判断に至ったのか?その彼女の心の傷はどこにあるのか?どんな幼少期で育ったのか?どのトラウマが原因で浮気という選択をしたのか?両親の過去はどうだったのか?幼少期に離婚し片親で育ったのか?両親がいなかったのか?浮気癖のある両親だったのか?幼少期の考え方はどうだったか?本人の母性父性の考え方に偏りがないのか?収集癖があるのかないのか?全部書いて情報収集して仕事に活かし世の中に活かす。これを知る事こそ俺は最高の至福なんです!」
璻は八剱の言葉を聞き、後ずさりしながらなんとなく皇と一緒にいるような感覚を感じる
……このよくわからないくなる感覚、皇さんの親戚というのは納得する……
璻は唐突に八剱に質問をした。
「やっ……八剱さん妙にリアルな回答に聞こえるんですが…実際に浮気された経験があるんですか」
八剱は笑顔でニコッと璻に応える
「龍後さん、その聞き方だと直球すぎて胸に刺さります。ここでは嘘偽りなく、はいと答えましょう!なんせ2回もありますからね!真面目すぎて浮気されるほどいい男という事にしてください」
小賢しい八剱の発言に璻は思わずツッコミを入れる
「いや、どんだけポジティブ思考なんですか!」
自信満々な態度で八剱は璻の質問に応える
「いいツッコミ!やはり2回も浮気された男のセリフは真面目で紳士的だから龍後さんにも伝わってしまう……ああ……なんと惨い俺」
八剱の発言を聞き璻は強くツッコミを入れたい気持ちを抑えた。本当は頭をどついてやろうかと思ったがこの時代そんな荒々しいことをしたら一発でアウトだ。璻は心の中で激しいツッコミを入れ始める。
……おいおいっ!そんなふうに私一ミリも答えてないでしょ!新手のナルシスト?お喋りな上にナルシストなんですか?つか、2回も浮気された経験があってなぜ自分で内省しなかったんだろうか?ツッコミ所、満載なんですけど……
八剱は流暢に璻に続きの話しを始めた
「それで元カノが許してほしいって俺に泣きながら縋りついてきたので元カノ自身のトラウマについて深く考察していただき、元カノの父と母と自分の生い立ちを項目に分けて20枚ほど論文を書いてもらいました〜いや〜勉強になりましたよ!」
八剱は何かを思い出したように急に声を低くさせながら真剣な表情でこちらを見つめていた。
「このトラウマがあって俺の事選んだのかなって思うと……心底反吐が出るなって、それを選んだ俺にも腹が立って。それで〜痛い経験をした俺は論文を読み、納得したので元カノとはお別れしましたよ!」
八剱の声の低くさにびっくりしつつ璻はなんとなく、八剱が元カノを恨んでいるようにも見えた。八剱の発言では少しばかり自分で内省したと言っているようにも聞こえているが、多分元カノが書いてくれた論文を八剣が読み自分の内省の材料になったんだろと璻は考察した。元カノはある意味、八剱に貢献しているとも言えるんだろう。それでもってこのお喋りナルシスト(自称:真面目で紳士)は完成した璻は深く頷き納得した。
流暢に喋る八剱に対し獅子子は呆れながら言葉を返した。
「はぁ……理解できねーな。その情報に対しての執着心、あーそうだったわね。八剱は双子座だったっけ?九鬼とは偉い違い。自分が知りたい情報に辿り着いたら秒で次に移り変わる。さすがフッ軽の双子座」
八剱は首を左右に振るとフッと笑い獅子子に言葉を返した。
「いや〜獅子子さんに褒めてもらえるなんて光栄です!そりゃ〜興味ある事に対して他人の経験を聞く事、情報収集することに面白さを感じるんですよ。深く考える必要はない。そこに楽しいとか悲しいとかって感情にフォーカスする判断基準はマジで俺、皆無なんでね」
璻は呆れながら心の中で考えた。
……久々のサイコ感たっぷりの回答……
璻は八剱に質問をした。
「それで、その八剱さんは何しにここにいるんですか?」
獅子子が璻の質問に答える
「そうだ…ごめんごめん!すっかり言うの忘れていたわ。環境業務では3人で業務をやるんだけど今回は八剱と龍後ちゃんが主に連携するから先に紹介しようと思って」
璻は獅子子に聞き返した。
「3人?てっきり、九鬼さんときょうちゃんと一緒なんだと思いましたけど」
獅子子はざっくり環境業務の説明をする
「今回は特殊でね。龍後ちゃんたち3人には最初に大事な事をやってもらうんだ」
璻は頷きながら獅子子に聞き返した。
「3人って事はもう1人いますね?誰ですか?」
獅子子はふふふっと笑うと璻に問いかけた。
「龍後ちゃんの相方は普段から一緒にいるでしょ?1人しかいないじゃない」
……普段から一緒にいる人?……
璻は一瞬考えて獅子子に返答を返した。
「藤宮さんですか?」
獅子子は笑いながら応えた。
「ご名答」
その回答に璻はガッカリし軽いため息をつくと獅子子に応える。
「そうですか……毎回藤宮さんとセットにされるんですね」
何が面白かったのか急に獅子子はお腹を抱えて「ははははははぁ〜」大きく笑った。
「いや……ごめんごめん。あんまりにも嫌そうな顔をしたからね」
笑い疲れた獅子子は璻に説明し始める。
「泉と龍後ちゃんは対になるんだよ。真逆の方が仕事が捗る。そこに八剱を入れるとさらに環境の調整力とクオリティーが高まる」
……環境の調整力とクオリティー?……
璻はなんとなく八剱に質問をした。
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新キャラクターのご紹介
・八釼凪音
誕生日:5月22日(双子座)
趣味:アニメ、漫画、特撮、ギャルゲー、古代の文献、口伝、情報収集、人間観察
特技:陶芸と金継ぎ
好きなスポーツ:バトミントン、卓球、テニス(ラケット系)、あと剣道
理解できないもの:人の感情
八剱は皇の親戚ですが、皇以上に情報通で知的好奇心の塊です。水流士の転職も皇が提案したことで晴れて就職になりました。
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