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水流士-因子を解く-  作者: 小野里
- 新人研修編 -

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第91話:消された歴史

 


 藤宮は呆れながら璻に問いかける。


「あぁ…これ」


 そう話す藤宮は何故か少し落ち込み事情を説明し始めた。


「実はさっき諏訪さんから連絡入りまして『わりぃ〜藤宮。庭の落ち葉と道具さ、中途半端になったから片付けておいてよろしく』との事で」



 奇しくも諏訪の言動を璻は思い出していた。


「後片付けは俺やっとくから、3人はログハウスに戻って」


 ……あれ?おかしいな。意気揚々と俺やっとくからっていったのは誰なんですかね……


 璻ははぁっと深いため息をつくと藤宮に問いかける。


「要は仕事を押し付けられたんですね。藤宮さんどうせ「やっておきます」とでも言ったんでしょ?」


 藤宮は璻の言葉を聞きドキッとするとなぜかシュンとし、璻から顔を背けた。おそらく璻の言った事がおおよそ当たっていたそんな所だろうか。



 どうせ今回の依頼の失態を諏訪に言われ雑用を押し付けられてしまった。

 そんな情景がやけにリアルに目に浮かぶ。



 ……藤宮さん雑用断ればよかったのにな……


 璻は顔を左右に振り藤宮に話しかける。


「もう、早く片付け終わらせましょうか」


 そういうと藤宮は「はい」と返事を返した。


 璻は焚き火に使った道具を見つけると近くに落ちていた空のバケツに道具を入れ始めた。


 藤宮は璻に申し訳なさそうに話しかける。


「しょうがないですよ……諏訪さん、今環境業務で忙しいですからね」


 璻は道具を入れ拾いながら藤宮の会話を返した。


「だからと言って"俺がやる"と堂々と言った手前、部下に片付けを押し付けるのはどうかと思いますけどね」


 藤宮は地面に落ちていた竹箒を手で拾うと風で飛ばされ散らばっている枯れ葉をかき集めながら璻に話しかけた。


「今回、諏訪大社の所有の敷地内だから諏訪さんが各地に許可取りをしているんですよ。今回環境業務の指揮をするのは諏訪さんなので」


 璻は辺りを見渡し焚き火の道具が落ちていないか確認した。急にハッと何かを思い立ったのか璻は藤宮に問いかけた。


「そういえば……聞きそびれましたけど環境業務って毎回指示する人変わるんですか?」


 藤宮は軽く頷くと璻の質問に応える


「はい。毎回その地に関わる人が指揮を取ります。今回はここの土地なので諏訪さんが代表になりますね」


 璻は藤宮の話をふーんと応えるとさらに藤宮に質問をする。


「環境業務って基本的な業務はあるんですか?今回何も知らされてないまま業務やるのはちょっと不安で、せめてどのような方針なのかを軽くでいいので教えて頂きたいんですが、だっ…ダメですか?」


 藤宮は璻の問いかけにはぁっと深くため息を出した。


「方針ですか……そうですね……」


 そういうと藤宮は少し黙り込んで考えていた。すると藤宮は何かいい案が浮かんだのか唐突に質問をする。


「その前に璻さんに質問があります」


 急な問いかけに璻は不思議そうな表情をすると藤宮に言葉を返した。


「えっ、なんですか急に」


 藤宮は竹箒を動かしている手を止め真剣な表情で話し始める。


「璻さんは日本という国はどういう歴史背景を辿ってきたかちゃんとご存知かなって」


 璻は一瞬戸惑うと藤宮の言われた事を考えていた。


 ……どの歴史を指しているのか範囲が広すぎて一般的な事を言っているんだろうか?……


 とりあえず一般的な解釈に沿いつつ、藤宮の質問に応え始めた。


「えっ……そうですね。歴史的背景って義務教育の教科書から一通り学びましたよ。というか、この国って変な国ですよね?昔から他の国から宗教や文化を受け入れたり、国民の首を絞めつつ他の国に莫大な支援したり、困った移民を受け入れたり……って藤宮さん?」


 藤宮は璻の言葉を聞き、深く頷くとホッとした表情で璻を見つめてた。


「むしろちゃんとわかってない事に安心しました」


 藤宮の発言に璻は反射的に聞きかえした。


「えっ???どういう意味ですか?」


 藤宮は璻に問いかけた。


「日本には時の権力者の都合によって消された歴史がある事をご存知ですか?」


 藤宮の問いかけはやけに優しく聞こえた。

 璻は顔を左右に振ると質問に応える。



「初めて聞きました。都合によって消された歴史ですか……というか前の政府、自分たちにとって都合が悪くなったら人を排除するだけではなくて歴史も変えてたんですか!」


 明らかに少し怒りながら話す璻に藤宮は人差し指で顔を掻きながら言葉を返した。


「前の政府よりも…だいぶ昔からですかね。歴史を都合のいいように変えられているのは…そうですね。どっから話せば…」


 うーんと考えると藤宮はゆっくりと口を開いて説明を始めた。



「例えば…縄文前の歴史は富士王朝時代といわれていますが教科書に記載されていませんし、弥生時代にあった出雲王朝というものもありましたが教科書には記載がありません。ですがきちんと文献には残っています。基本的に学習する内容は以前の政府が統一して決めてましたから、自分たちにとって都合の悪い出来事は隠しておきたいものです」


 ”消された歴史”と今回の業務内容と一体何が関係があるのか?1ミリも接点を感じられない璻は藤宮に質問をする。


「その環境業務と消された歴史と今回の業務の共通点が見当たらないのですがこれ本当に関係ありますか?」


 文句がありそうな璻の表情に対し、藤宮は真剣な表情で応える。


「あります!ここからが大事な話です。日本はどの歴史を見ても"集団で迫害する"村社会的な歴史が常についてまわっています」


 璻は藤宮の言葉を聞き返した。


「迫害?そんな歴史習わなかったですよ」


 藤宮は璻の問いかけに応える。


「一般的な歴史の話だと勝った負けたなどの結果しか記載されませんからね……迫害、それ自体が今の現代まで続いています。ここから出雲王朝の話になりますのでよく聞いてくださいね」


 璻は深く頷くと言葉を藤宮にかけた。


「はい……」


 藤宮は真剣な表情で璻に語りかける。


「日本の表の歴史では語られていませんが、出雲王朝時代に昔、出雲族と言われている一族が出雲に住んでいました」


 藤宮の言葉の中で"出雲族"と言われる一族に関して聞き覚えがあった。


 ……出雲族?出雲族って前に組子細工を作っている方々の祖先の話かな?……


 璻は藤宮へ質問をする。


「出雲族って……確か水分子を変える時の竜胆の組子細工作ってる人たちでしたよね」


 藤宮は頷きながら璻の質問に応えた。


「はい。今は組子細工、伝統工芸品や日本文化を保護し活動する方々が多いです。ですが数万年前、出雲に元々住んでいた先住民族がいたんです。出雲族は移り住んでいた一族でしたが、ある時出雲に移り住み、先住民を全員根絶やし侵略したなどの歴史が口伝で語り継がれています。口伝なのでどこまで本当かわかりませんが……昔は迫害や殺害しても今みたいに罪に問われる事はありませんでした。ですが先住民を根絶やした何十年か後に出雲族は大和族と言われる一族に滅ぼされ、国の主権を大和族に譲った事から出雲族は表舞台から消える事になりました。その大和族が代替わり日本という国を運営し歴史を積み重ねてきました。ですがいつしか……諸外国に内側からやられ大和族でさえも衰退した結果、物質社会に依存した社会が出来上がったという感じですね。ここまでが環境業務をやるあたり、璻さんが知らなきゃいけなかった前提条件になります」



 ……そんな歴史があるなんて知らなかった……


 そんな言葉が璻の頭の中に浮かんだ。


 侵略し、迫害した結果が今の現代社会。その証拠に一般的に習う学校の教科書は綺麗な形で簡略化されそこまでの事は深く記載されていない。藤宮の話を聞き何となく気分が重くなるのを感じる。



 璻は深呼吸をすると気を取り直し藤宮に再度質問をした。



「と、とりあえず前提条件はわかりましたが、その数万年前の話と環境業務の方針は何が関係あるんでしょうか?」


 藤宮は璻に問いかけに応える。


「これから話す内容にその歴史が深く繋がってきます。その迫害された側の話は各地にあります。迫害され戦いに敗れた物は悪側に描かれますので墓などは作りませんし、正式に弔う事はありませんでした。では、ここで璻さんに質問です。璻さん自身が先住民だったとしましょう。知らない集団に友達や親族を殺され、自分も亡くなった場合、璻さん自身は悔いなくあの世にいけると思いますか?」


 藤宮の唐突な質問に璻は頭を抱え自分の事に置き換えてみる。


 ……私が生まれてずっと住んでいた土地に知らない人たちが殴り込みにきて、友達や親族を殺害し、のうのうと普通に暮らし始める……


璻は藤宮に対して強く言葉を返した。


「無理っ!呪ってやるって絶対になりますね。許さない気持ちだけが残る気がします。あと絶対化けて出てやるって思いますね」


 藤宮は璻を見て苦笑いをする。


「一般的な回答で安心しました」


 …むしろこれ以外に模範回答があるなら教えてほしいわ……


 藤宮は璻の話に応える。


「すぐ亡くなった場合は浮遊霊になりますが、強い感情が残るとあの世にいけない場合があります。特に強い未練が残っている場合は土地に魂が残ってしまうので地縛霊となります。迫害された側が成仏されず、まだこの世に残っている場合、供養しないと魂は成仏されませんし、もし、迫害された人が地縛霊となった場合、何十年も何百年も何千年とその場に留まります。その事実を知らない人たちがその土地を買った場合やその土地に住んだりすると奇妙な事件に巻き込まれたり、不幸な事が立て続けに起きます。幸い今は大手会社が土地を買い工場や施設を作る事が多いですが、日本の経済破綻と物価高により経済が回らなくなった事から倒産が増え、場所を封鎖する事が多くなりました。これにより廃墟になり誰も手を付けられず、片付ける事ができなくなった。これが2050年全国各地で問題になっています」


 璻はハッとしながら藤宮の話を聞いていた。


「確かに廃墟たくさんありますよね、えっ……まさか…環境業務って」


 藤宮は深く頷くと璻に言葉をかけた。


「はい、そうです。今の時代はそういう土地は水流士が間に入るのがルールになります。全てを自然のあるべき形に戻し、水の流れをよくし、その土地のエネルギー循環を綺麗に整える。それが水流士の環境業務です」


 璻は藤宮に質問をする


「ようは環境の整理整頓する片付け係ってことですか?」


 藤宮は頷きながら璻の質問に応えた。


「そんな所ですね。一般の人はエネルギー調整はできませんし、脳内器具をいれている人なんかは余計に見えないので、今生きている人で後世に残せる環境を作るという感じでしょうか?」


 璻は藤宮に問いかける


「だから環境業務なんですね。環境業務にも地縛霊の対応することがあるんですね」


 藤宮は璻の問いかけに応える


「すべての環境業務が地縛霊の対応するわけではありませんが、地縛霊も環境業務の原因の一つなのですよ。地縛霊は元々人間なので人の話を聞き感情を理解するカウンセリングが基礎にないと地縛霊は完全にあげられないんですよ」



 ……えっ……それってまさか……



 璻はハッとしながら藤宮に質問をする。


「だから普段は人のカウンセリングと依頼主の身体の水分子を変えるこれが全て環境業務に繋がるんですね」


 璻の問いかけに藤宮は答えた。


「はい。人間は生きている時にトラウマを常に作りますからね。その人が亡くなっても地縛霊にならないようカウンセリングする事は環境業務にも繋がりますし、環境業務の基礎は普段の業務に全てあるので基礎ができないと環境業務ができないんですよ。あっ、その集めた道具はログハウスの裏にある小屋に閉まって来てください」


 璻は「はい」と返事をし藤宮の指示通り小屋に向かった。


 璻は歩きながら少し考えていた。


 藤宮の話を聞き、何となくこの世の中の事や水流士の事が大まかにわかった気がした。


 いきなり環境業務にはつけない理由はカウンセリングで話を聞いて自分と相手の心の分析をする基礎が身についていないから。そういう事だった。


 ……日本は迫害を繰り返し亡くなった人を放置し地縛霊が増えた結果、土地のエネルギーが淀みそれによって水も濁り、それを知らない人が管理もせず土地を売買し利益がなくなったから土地を放置する。それを繰り返してきた結果今の時代廃墟だらけになっているのか……



 人間の都合の良さに璻は少しばかり憤りを感じていた。小屋に着くとドアを開けバケツと道具を置き璻はとぼとぼと歩き藤宮の元へ戻った。


。:*:★。:*:★━━補足ポイント━━★:*:。★:*:。


・富士王朝

『宮下文書(富士宮下古文献)』に書かれている富士王朝(富士高天原)の時代の話です。縄文より数万年前の話です。経済破綻前の日本では歴史学・考古学上は偽書と言われていましたが2050年では遺跡から書物が発掘されたことにより、解読が進められ認めざるをおえない状況になりました。



・出雲王朝(国譲り神話)

弥生時代〜古墳時代初期にあった国譲り神話の話です。ちなみに日本が経済破綻する前の義務教育の教科書には出雲族や出雲王朝の記載がありません。それは今の政治が大和族ということが大きな原因になっています。古代日本の同系列の民族的グループでは出雲族以外にも諏訪族や三輪族がいます。2050年では出雲族、諏訪族、三輪族の子孫が日本の世の中を動かしていくようになります。


・地縛霊

数万年前からいる地縛霊も日本各地にいますが基本的に強い思念を持ってこの世にいることが多いです。

未だかつて、成仏していない地縛霊が日本中にはゴロゴロといます。日本各地をまわり地縛霊を除霊をしている方々もいます。地縛霊が何千人と土地に住み着いた場合はその土地はいわくつきとなり、その土地を運営しても必ず廃墟となり水も冷え上がり、その土地の自然保護もできなくなってしまう。2050年ではそのことが社会的な問題になっていました。


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