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水流士-因子を解く-  作者: 小野里
- 新人研修編 -

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第81話:グリーフケア


 璻はこの言葉の意味を深く考えていた。与瀬村が平穏無事に育った家庭なら"お布施"という妙な言葉は出ないだろう。


お布施といい、子供を奴隷のように育てるやり方といい何かが不自然に感じていた。


 ……この……どこか……背筋が凍るやり方、なぜか知っている。人を人とも扱わない奴隷のような教育、扱い方、人の心を酷く突いているような感覚、無意識の中で寂しさを刷り込んでいくような教育……


 頭の中で言葉が浮き上がってくる


 石屋?


 ……いや、でも、すり合わせの時は直接関係ないって話だったけど、待って。決めつけは良くない。整理してよく考えてみよう……


 璻は頭の中で与瀬村の情報を整理する。


 与瀬村のメンタルはどこかで限界を迎えたと仮定をしよう。時より母親から「母親の私を誉めてよ」と言われまるで与瀬村が褒められる事なく母親の自己肯定感をあげる手伝いをしている。これは”母親を褒めないと自分は褒められない”という考えを刷り込む、子供の自己価値を極端に下がる方法だ。これが日常的に言われた場合、与瀬村の自己肯定感は著しく下がり自分は褒められない存在だとずっと信じることになるだろう。挙げ句の果てに中学生の頃家から追い出され行く場所もなく徘徊し風俗に就職する。


 …なんで母親の浅間は子供に関心がなかったのだろうか?なぜ、子供に対して罵倒したり、苦しめたり出来たんだろうか?…

 

 あまり聞きたくない質問だが、璻は思い切って与瀬村に質問する。


「あの……与瀬村さんお母様はもしかして何か信仰しているものはありましたか?」


 与瀬村は座って膝に置いていた手を強く握り璻の質問に応えた。


「何をいきなり……もう!あったよ!よくわからない"安定宗教"というわけわからん宗教をマミィが入っていたの!毎月多額のお布施をしてたよ!」

 

穂積がその名前を聞きなぜか酷く顔が引き攣っていた。

穂積は与瀬村と璻にわかるように質問をした。


「そ……その宗教は石屋関連の宗教法人ですね。たしか、かっ……各国に配置し政治家を支援していた宗教法人です。今は分散して小さくなったとか」


……ああ……やっぱりそうか……


与瀬村の発言で全てが繋がったそんな気がした。

ふと璻は先ほどの藤宮との雑談を思い出していた。


「そういえば以前にも説明しましたが、石屋には王族や政治家、世界にある企業の社長や大きな会社の株主と民間人を諜報機関のようなものに所在させるエージェント組織があります!粗悪な環境に貧困した人間を所属させ社会的な犯罪を起こす機関と教えましたけど。どれも覚えていますか?」


ソファに座って寛いでいる璻に対し畳み掛けるように話す藤宮はなぜか笑顔で語りかけてきた。

 

「はい。覚えてますけど、いきなりなんですか……今さっき与瀬村さんの段取り組み終わって頭を休めていたんですけど。疲れてて業務に関係ない事ですよね。マジで後にしてもらえますか?」


 藤宮は璻の発言に無視をしながら言葉を返した。

 

「まぁまぁ、そう言わずに役に立ちますから、話は最後まで聞いてください。石屋の組織は多岐にわたります?それはなぜか?璻さんは考えた事がありますか?」


 藤宮の質問に対し璻はだるそうにする。



やっと穂積と話の段取りがつき、穂積が席を外している間に璻は気を抜いてぼけっとソファに座っていた所だった。



とりあえずカウンセリングまで頭を休めたいと思っていた璻にとって藤宮の質問はいい迷惑である。璻は藤宮の質問に応える。


 

「えぇー役割分担が多いほど企業の幅は広がるからですか?」


 璻は藤宮の質問に適当に応えた。


「それもありますが……一番は人間が認知できないほど企業の数があると何をやっているかわからなくできるからですかね?どんな不正をやってもわからなくできる。それも一度捕まった団体が名前を変え新しい団体になるなんて昔は普通の話ですから」


 藤宮は笑顔で璻に答えたが璻は興味なさそうに藤宮に返事を返す。


「ふーん。その藤宮さんがいう昔っていつぐらいの話ですか?」


藤宮は頷きながら璻に応えた。

 

「日本が経済破綻する前まで?ですかね……そんなルール違反する企業を石屋はいくつも運営していましたし、偽善団体や宗教も例外ではありません。人間は数多くの情報が目の前にきた際その時に優先順位が低い物に対しては後回しにする傾向があるんですよ。そうやって石屋が絡んだ重要な法律や企業の情報をうまーく名前を変え隠してきた。曖昧にして名前を変えれば一般人には関係ないと話をすれば気にも止めなくなる。どうでもよくさせるそうする事によって人間の脳はすぐ忘れるんですよ。まぁ頭の片隅に覚えておいてください」


 よくわからずとりあえず璻は藤宮に気の抜けた返事を返した。

 

「はぁ……」



どうでもいい話だと思っていたが案外与瀬村の内容と繋がっていた事に合点がいった。と同時に璻は藤宮の質問にもう少し突っ込んで聞いとけばよかったと後悔をした。


 

……全部繋がってるじゃん。藤宮さんが言ってたけど、この与瀬村さんは本人知らず知らずのうちに石屋に巻き込まれていた可能性がある……

 

 与瀬村はなぜか少し怯えながら安定宗教について話してくれた。

 

「あああ…そこの宗教は少しの間通っていたけど救世様という人に足元で頭を下げ献金をしなければいけないとか、子供は粗末な扱いをしろとかいうカルト宗教だったよ。私は小さい頃にやめて記憶もないけど、マミィは熱心に通ってたよ」


穂積は与瀬村の発言を聞き少し考えるとある質問をした。


「ちっ……ちなみに与瀬村さんはその宗教に入ってて妙な事はありませんでしたか?」


 与瀬村は穂積の質問に答える。

 

「えぇ〜そういえば、水によくわからない物を入れて流していたよ。あとはよくわからない」


 穂積は動揺した顔をすると与瀬村にお礼を言った。


「みみみ水に??あっ……ありがとうございます。」


 いい加減話に飽きた与瀬村はつまらなそうな顔をすると璻と穂積に応えた。


「つか、もういいよ。誰かに褒められたかった事もなんでそうなったのかよくわからないし、それやっても人生変わらないじゃん」

 

璻は与瀬村の発言が引っかかり反論をする


「どうしてそう思うのでしょうか?変わらないと思い込んでいるあなたがずっと変わらない事を想像し同じ行動を取り続けたら一生自分の人生なんて変わりませんよね?与瀬村さんが心の癖に気がつき、一つ一つ心のトラウマを紐解けばあなたの人生は想像した通りの行動がとれ自分で判断出来るようになりますよ」


与瀬村は駄々をこねるように応える


「そんな苦労する必要があるの?そんな苦しい事今の時代する必要ないじゃん」


 穂積は与瀬村に話しかける。

 

「よっ……よ与瀬村さん心の安心は現実社会にあると思っているんですね。自分の心を反映したものが積み重なって現実になるのですから、いくらいくら求めても与瀬村さんの捉え方が変わらなければ周囲の人たちも心の安心感もかっ……変わりません」


与瀬村は「ううん……」と悩むと璻と穂積を見ながらボソッと話した。


「じゃあ……どうやったら私の見方が変わるのさ?」


 璻はやっと与瀬村がやる気になった事を嬉しく思うと同時にここまで来るのがなかなかに長い道のりだった気がしていた。璻は与瀬村を見ると話しかけた。


「では、一つづつ、与瀬村さんのトラウマを紐解いていきましょうか。」


 与瀬村は深いため息をつく

 

「はぁ……やればいいんでしょ?」

 

璻はまず一番ネックになっている部分について質問をした

 

「好きな人にお金をかける事が幸せこの部分がネックになっているのでそこから多面的な感情を認識してみましょうか……まずどうして与瀬村さんがそう思ったのか?お話頂いてもよろしいですか?」


 与瀬村は落ち着いて話し始める。


「だってパピィがぁ……そう……言ったから」


 璻は同じような回答をする与瀬村に対して核心を突くような質問をする

 

「では与瀬村さんはなぜパピィの言葉を信じているのでしょうか?」

 

与瀬村は璻の質問に応える。

 

「そんなの私が一番信頼していてわかってくれたパピィがそう教えてくれたから」


 同じような与瀬村の返し方だが、璻には少し変化が見られる気がしていた。もしかして、父親の死別による深い悲しみが与瀬村の中で癒えず今まで現実を見れなかった。これ今更ながらグリーフケアが与瀬村に必要なのかもしれないそう璻は考えていた。



 ……それにしても!ずっ〜とパピィ、パピィ、パピィ!パピィの事信じすぎ!……



 璻は与瀬村をじっと見つめながら応えた。

 

「与瀬村さんあなたは”パピィ”の事ばかり、どうしてそんなに”パピィ”に執着するのでしょうか?」

 

与瀬村は俯きながら璻の質問に答える。

 

「だってパピィが笑って教えてくれたから。私も幸せだと思ったから」


 璻はすかさず与瀬村に畳み掛けるように質問をする。

 

「どうして亡くなっている”パピィ”が幸せだと言っていた事は必ずしも自分の幸せになるのでしょうか?」


 与瀬村は璻に噛み付くように応える


「パピィが亡くなっているってわかってる!何年も何年もわかってる!私だってわかんないよっ!私が一番私の事わからないんだってば!」


 与瀬村は涙目になりながら考えていた。まるで目の前にいる2人に責められているような感覚になる。与瀬村は必死に自分の感情を考えていた。


 ……なんでこんなに自分の事を考えなければならないの?自分の事なんてコンシェルジュに聞けばなんでも答えてくれる。好きな事も嫌いな事も全部教えてくれる。なんで自分で判断しなきゃいけないんだろう?こんなに自分の事で悩まなきゃいけないんだろ……



 与瀬村は今まで自分の事をこれほど深く分析し考えた事は無く動揺している様子に見えた。


 

。:*:★。:*:★━━補足ポイント━━★:*:。★:*:。


・父親の死別による深い悲しみが与瀬村の中で癒えず今まで現実を見れなかった

与瀬村のような感覚が残る人はグリーフケアが必要になります。グリーフケアとはかけがえのない大切なものを失った人々を支援することを指します。欧米など海外では非常に一般的になりますが日本ではあまり聞かない言葉です。

心が立ち上がるのに個人差はありますが4年半ほど時間がかかります。与瀬村はグリーフケアを受けずに親に放置されてきたので現実を見れずに今まで生きてきました。


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。:*:★。:*:★━━━━━━━━━★:*:。★:*:。

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