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水流士-因子を解く-  作者: 小野里
- 新人研修編 -

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第80話:推測を立てる

 


 ……かと言ってこっちが質問攻めしても与瀬村さん自身が理解して落とし込んでもらわない限りなんの意味もない。とりあえず一旦情報を整理整頓をしてみようか。まず与瀬村さんが亡くなった父親に執着している。これは与瀬村さんの態度と発言で痛いほどわかった。また父親が大事にしていた考え方を自分で疑いもせずいまだに信じている。これが一番厄介な話でむしろ原因かもしれない。この事実を本人に認識させるには伝え方を工夫しなければいけないけど、先程のように誤って伝わった場合、与瀬村さんは腹を立ててしまうよね。丁寧にやらないと……


 だいぶ骨が折れる作業な事に気がついた璻は気が重たく感じていた。少し悩みながら璻は与瀬村にある質問をした。


「与瀬村さん質問なのですが…好きな事にお金使う時ってお母様の顔が頭の中でよぎった事はありませんか?」


 与瀬村は母親の話を持ち出すと一気に不機嫌そうになった。睨みつけるように璻に返事を返す。


「はぁっ?」


 与瀬村は璻の質問に引き続き応える。


「お金使う時にマミィの顔浮かぶわけないじゃん。いっつも金稼げ!金稼げ!としか言わないんだよ。挙げ句の果てにいつもお金をせびってくるし……」


 璻は与瀬村の返答に何かがピンと降りてきた。


 ……稼ぐ時に必ず母親の顔が出てくるのか……


 与瀬村は脚を組むとだるそうに爪を見ては話を始める。


「もう、こんな昔の思い出ばっか……もっと楽しい事をしようよ」


 明らかに退屈そうにする与瀬村はもう帰りたそうに見えていた。少しの間部屋の中が静まり返る。璻は何か話しかけようとした瞬間、璻の隣に座っていた穂積が深く深呼吸をし与瀬村に思い切って話しかける。



「よよ……与瀬村さんは一度も事実を話してないように思えています。ごっ……ご自身での感情意味づけが多く事実が伝わってきていません」


 与瀬村はテーブルに拳をバァンと叩きつけ穂積に言い返す


「ハァッ?何?説教?私は事実を言っているんですけどぉ?さっきも言ったけどパピィは好きな人にお金を捧げるのが幸せだと言って私に幸せを教えてくれた!マミィが金ズルだったし、私の事は一切目もくれずお金ばかり見て挙げ句の果てにパピィが亡くなったのはお前のせいだと言われた。全部事実しか言ってない!」



 声を荒げる与瀬村を璻はじっと見ていた。


 ……この人はずっと自分の感情を自分で理解せず説明出来ずに育ってしまったのか。普通に生活していたら母親または父親に教えられるはずの事をこの人は何もわからずに育ってきたからなのかもしれない……


 そう思うと璻はなんだか胸が締め付けられるような感覚がしていた。だが、同時に穂積の発言だとただ与瀬村自身を否定しているように聞こえてしまう。フォローが必要かも知れないと考える璻に穂積は続けて与瀬村を見ながら話をする


「そ……それは与瀬村さんから見た視点の感情です。本当の事実ではありません。く……苦しかった事をわかってほしい、つらかった事を伝えその上で自分を肯定して認めて欲しいが伝わります。自分自身を認めてもらえなかった悲しさや寂しさを相手に共有し伝えたい気持ちが前提に見えますがそれは与瀬村さん自身が一番嫌いな感情論です。その事実はご自身の中で理解でで……できていますか?」


 穂積の発言に与瀬村は言葉を失う。手が震え目はキョロキョロと動き明らかに動揺しているように見えた。与瀬村が一番嫌いな感情論をようやく自分で認識しているように見える。


 ……動揺の仕方が尋常じゃない。今初めて与瀬村さんは自分の中にある感情に気づいたみたいだけど……


 穂積は璻を見るとなぜか震えている。真っ青の顔をすると穂積はボリュームを落とし璻の肩をトントンと叩くとボソッと話した。


「ごっ…ごごめんなさい。この後の展開全然考えてなかったのでタタタ助けて」


 璻は呆れながら穂積を見る。


 ……うう〜んんん?いや、あんなに煽った言い方をしてこの後ノープランです?って!あとよろしくって丸投げもいいところよ!明らか与瀬村さん怒ってる感じに見えるんですけど。火中の栗を拾うにどんだけ苦労すると……



 そう璻が文句を心の中で唱えていると与瀬村は声を振るわせながら穂積の問いかけに応えた。


「りり理解?ハァ?理解なんか出来る環境じゃなかった私にあなたは感情論だって突きつけるの?パピィが亡くなりマミィも亡くなった。周りの親族はお前の家族みんな亡くなって可哀想って。パピィが亡くなった時も可哀想と言われ、誰もかまってくれなかった。誰かに……誰かに私を肯定してもらえないと自分が消えていくような感覚がずっとずっとしててどんなに楽しい事をしててもこの感覚は消えないんだよっ……」



 与瀬村が段々と感情的になる姿に本人の心の中でももしかしたらこの自分の感情に葛藤しているかも知れないと思った璻はすかさず与瀬村に質問をする。


「あのっ!与瀬村さんはどうして誰かに肯定されないと消えていく感覚がするのでしょうか?それは自分を心底信じていないように思えます。それはいつから感じているのでしょうか?」


 与瀬村は璻の質問に目に涙を溜めながら応えた。


「そんなのパピィが亡くなってからずっとだよ!ずっと大好きだったパピィが目の前に居なくなって金ズルマミィにパピィが亡くなったのはお前がお金が稼ぐ能力がないからだ!稼げねぇ子供を引き取って育ててる私偉くない?とか言われ、毎日私はご飯がたべられず、マミィが知らない男と遊んでよくわからないお布施にお金を払い、私の学校に払うお金すらない。お金に困って家を追い出され、利用できるものがあるなら全て利用するしか私は生きていけなかったんだよ。風俗しながら私はマミィにお金渡すサイクル。毎日毎日小さい頃から罵倒されたら、そりゃその言葉を信じるしかないじゃん!」


 与瀬村の言葉に違和感を感じた璻は疑問に思った。


 与瀬村自身なぜ、お金を稼がなきゃいけないと感じているのか?なぜ自分の感情を他人に同調させ従わせないと気が済まないのか?なぜ可哀想と思った男性に大金を使うのか?


 その疑問が与瀬村の発言から璻には推測が立てられる気がしていた。


 父親に「好きな人にお金を捧げる事が幸せ」が与瀬村の中で一番深いトラウマになっているように思えた。そして父親が亡くなり深く傷ついた所に母親から「お前が金がないせいで父は亡くなったんだ!金稼げよっ!」と父親が亡くなったのは自分(与瀬村)のせいにすることにより母親は現実を見ずにお金を使い込んでいった。母親に毎日毎日罵倒され、与瀬村の幼少期に深くトラウマが残る。自分が稼げない事で父を亡くなったと思い込んでいる罪悪感とお金を使う事で好きな人にお金を捧げる事が最大の幸せだと勘違いして思い込んでいる。これらの2つの要因が積み重なって出来た。


 ……そんなトラウマが容易に考えられるけど……


 そこに自分が幼少期に認めてもらえなかった承認欲求が重なり、自分の感情を他人に同調させ従わせる事で自分の優越感が浸れる。与瀬村の気持ちに同調した男性から父親に似た男性を無意識に選び大金を捧げる事で亡くなった父親にしてあげたかった親孝行をその男性にしていることにだんだんと与瀬村は矛盾を感じ違和感を覚えているこんな所だろうかとなんとなく璻の中で詳しい推測が出来てきた。


 ……与瀬村さんにとって都合が悪い所ばかりを信じ込んできた。そんな所かな?……


 全て与瀬村自身が悲劇のヒロインをやるために自分の現実を見ないようにしてきたツケが今来ているように璻には見えていた。どうして現実を見れないんだろうか?受け入れられないんだろうか?その考えと同時に璻にはどうしても与瀬村に対して引っかかる言葉があった。



 それは与瀬村の発言から出た"お布施"という言葉だった


 

。:*:★。:*:★━━補足ポイント━━★:*:。★:*:。


・どうして誰かに肯定されないと消えていく感覚がするのでしょうか?

璻のこの質問は誰かに肯定されないと自信がない人にとってはとても痛い言葉に感じると思います。これは幼少期に何度も親や周りに否定された経験があると誰かに頼らざるを得ない感覚を持ちます。これを解消させるには自分に少しずつ出来るという感覚を積み重ねていくことで自信の無さは解消されます。



・自分が幼少期に認めてもらえなかった承認欲求が重なり、自分の感情を他人に同調させ従わせる事で自分の優越感が浸れる。


日本人は同じことに向かって頑張れる集団圧力で発展した国ですが、それももう限界が来ていました。

与瀬村のように他人に感情を同調させうまく従わせる事で自分の優越感が浸れるような人間が増えてくると無意識に足の引っ張り合いがおき同調圧力に繋がり働きたくない人たちが増えました。経済破綻前の日本だとそれは許されましたしまかり通っていました。しかし経済破綻後の日本は与瀬村のような人物は社会を作る集団から煩わしい人物だと周りから認識されやすくなります。心の自立をしていないからです。この場合本人自体、生きることに疑問を持ちやすくなります。


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