ニャ~・・・543
「クシュ、クシュ、ニャ~≪風邪が治らないな≫」
幸せの暖炉の前には深夜の海を思わせる色の山がある。
それは風邪を引いたて魔法で快復したミヤちゃん達が、中庭で拾って来た生えていた草。
久しぶりに3人一緒に風邪を引いたけど魔法の効かない僕だけ風邪のまま、苦い草を食べる羽目になってしまったんだよね。
なるほど、中庭に生えている雑草の代わりに薬草を育てる事を提案しよう。外の世界は危険だからね、中庭なら誰か暇な人が水やりをすればいいんだ。
「クシュ、グズ」
そう言えば、風邪を引いた猫の動画を見た事がなかったな。
くしゃみが出て怠い症状になるんだなぁ・・・・・・人間の時は風邪を引いた事があったかな? 風邪を引いた家族の世話をやらされている僕しか思い出せないぞ。
柔らかいおかゆを何回も作ったな。
おかゆの好みが皆違うので、無味のおかゆをそれぞれの好みにしてあげるんだよね。僕の好みは塩なしの梅干し3個だったな。
「ニャ~≪怠いけど布団に挟まれていれば幸せだな≫」
魔法で浮いているのも楽しいな。
ミヤちゃん達が持って来た薬草の様な雑草の上に移動だ。
おお、これなら魔法が切れて落ちても痛くなさそうだ。それに草が視界に入らないのがいいな。
凄く速い足音が聞こえる・・・・・・ここに向かって来るミヤちゃんの足音だな。
王都に送り届けた皆は自分の街に戻ったのかな、冒険者の皆は居心地が悪いのかすぐにお城を後にした。
アイルさんから報酬の前払いを貰っていたけど、国王様からも貰えそうなのに急いで逃げた感じだったな。
まあ、僕達もすぐにお城を後にしてローラさんの居るお城に戻ったけどね。
凄い勢いでドアが開いてびっくりした、本気で走っていたのは分かっていたけど、ドアを開けるのは静かにして欲しかったな。
「風邪はどうなのレイ?」
風邪だと判明した? 確か数時間前だったよね、薬がない、薬草の代わりに食べた雑草では治らないよね。
「クシュ、治らないニャンよ、布団で安静ニャン」
「安静? それは何よ」
「風邪を治すのに寝ている事ニャン」
「レイ、難しい言葉は禁止よ・・・・・・ああ、そうだった。急いで来たのは風邪を引いたレイが心配だったからじゃないのよ、メイドさんから聞いたんだけどお祭りが行われるそうなのよ、だからレイに知らせに来たのよ。嬉しいでしょう、いつもと違う甘いお菓子が売っているのよね」
夏の終りのお祭り・・・・・・盆踊り、阿波踊り? 秋の始まりのお祭り・・・・・・文化祭? 収穫の感謝と翌年の豊作のお祭り。
豊作は猫の僕には関係なさそうだ、やはり肉、肉が有ればいいのだ動物はね。
「お祭りニャン、いつニャン?」
布団から少しだけ頭を出してミヤちゃんにお祭りの開催日を聞いた。
飛んだ布団から頭を出した猫を見てもミヤちゃんは驚かない、このお城の人達もだけどね。
「3日後、お祭りは5日間開催なのよ。お菓子屋さんを急いで確認をしないと、レイ、すぐに風邪を治すのよ」
どうやってすぐに風邪を治せばいいのかな。
「はいニャン」
僕が返事をした時にはミヤちゃんは走って部屋を出た後だった。
「クシュ」
お祭りまでに風邪が治るかな。
「大変だよレイちゃん、お祭りが3日後に開催されるんだよ」
凄く速い足音はメグちゃん、夢の中で聞こえたじゃなかったのか。
現実に聞こえて足音の主が布団の中に居る僕の頭を撫でる、とても嬉しそうな顔のメグちゃんは本当に可愛いな。
「はいニャン、ミヤちゃんに聞いたニャンよ」
「おお、そうか、お姉ちゃんが知らせに来たんだね」
お城の中で過ごす二人は別行動か、でも、お菓子が有りそうな場所に居るんだろうな別々に。
「メグちゃんニャン、何処に居たニャン?」
「厨房だよ、クッキーを焼いて貰っていたんだ。お姉ちゃんは、お城の何処かに隠されているお菓子を探しに向かったんだよ」
そうだな、ローラさんの部屋でお菓子を探すミヤちゃんが想像できるな、大人の味はローラさんの部屋に有ったらしいからね。
「ああ、すぐに行かないと、美味しいお菓子屋さんを探さないと駄目だよね。レイちゃん、風邪を早く治すのだ・・・・・・」
部屋の前の廊下に出たメグちゃんは左右を確認すると右の方に走って行った。
遠ざかるメグちゃんは僕に聞こえる様に『新しいお菓子お願いね』と大声で叫んだ。
「・・・・・・お姉ちゃん」
窓の外から大声のお姉ちゃんが聞こえた、2人が合流して街のお菓子屋さんに向かったんだな。
「グス」
あまりお祭りには関係ない僕だけど、風邪を早く治すのは良い事だ。
浮いた布団でもう一度寝て風邪を治そう、やはり病気は寝て治さないとね。
風邪で寝込んだ僕にモモが、これ食べると風邪が治ると、モモが助かった時に食べた魚を焼いて食べさせてくれた夢を見た。
「風邪は辛いよねレイちゃん、早く良くなってね」
夢の魚の味はサンマだった。
僕の頭を優しく撫でるのはローラさんだ、ミヤちゃん達と違って足音を立てないでこの部屋に入って来たんだな。
「はいニャン、すぐに治るニャンよ」
疲れのせいもあるんだろうけど、怠いこの状態から早く快復したいな、怠いのは嫌だよね。
「嬉しいわお祭り、お父様のお仕事の都合で、お祭りを楽しんだのは凄く昔の事なのよ。それにこの国ではお祭りは開催されない、魔物の被害で亡くなる人が多いから・・・・・・でも、その魔物が凄く減って危険が少なくなるといいわね。この国の全ての街でお祭りが行われるのよ、もう何十年もしてこなかったお祭りが3日後に、楽しんでいいのか悪いのかよく分からないわね」
僕を撫でるローラさんの手が止まった。
そうだな、毎年お祭りを普通にしてきた国や街と違い。亡くなる人が多く、その被害が絶えず出ている現状では・・・・・・その被害者家族の事を考えてお祭りをしてこなかったんだろうな。
それ程にライガーとダイコンによる被害が絶えなかった、続いてしまっていたんだ。
「クシュ」
「くしゃみが止まらないのね、早く良くなってね」
止まっていた手が僕を撫でる・・・・・・・撫でて貰うと気持ち良いんだけど、やっぱり撫でる方がしたいな。
今更だけど、同級生の誰かが猫を飼っていたのなら頼んで撫でたかった。
でも、うち猫飼ってるとか犬飼っているとか話す人いないないもんなぁ、珍しい事じゃないので会話に出てこなかったんだろう。
ほんと、沢山撫でたかったな。
「・・・・・・レイちゃん、聞いてくれてた?」
風邪のせいなのか考え事をしてい僕は、ローラさんが会話を続けていた事に気が付かなかった。
「何ニャン?」
「私、考えたのよ、お祭りはご馳走を食べる事よね。それで何か私もしたいと思うのよ、そうだわ、日頃の感謝を込めてお城の皆さんに料理をご馳走したい、それも全員によ、お祭りだからね」
日頃の感謝を込めてか・・・・・・ローラさんはお城にいる人の数を知っているのか? 布団の中で寝ている状態の僕は考える仕草をする。
あの考える呉人の彫刻の様に頬に手を当てて考えるポーズを寝たままする。
「考えてくれているのね、そうよ、よく考えてよレイちゃん、美味しい料理は何がいいかしら? ミヤちゃん達がレイなら、お菓子以外にも美味しい料理を沢山知っていると話してくれたのよね・・・・・・」
撫でる手を止めずに、独り言のように考えを呟くローラさん、美味しい料理をお城の皆に食べさせたいのはいいんだけど、この大きいお城の中には何人の人がいるんだ。
そして、その料理のレシピを僕に教えて欲しいと言いにローラさんは・・・・・・人数分の材料の事は考えているのかな。
「そうよ、私も手伝うから一緒に作りましょうね」
ああ、なるほど、ミヤちゃん達の話の内容には、美味しい料理を作れるレイちゃんの様だ。だから、ローラさんは自分で作るとは言わずに手伝うと言っているんだな。
「レイちゃん、この薬草を食べれば早く治るわよ、どう、食べれる?」
飛んでいる布団の下の方に手が伸ばされた、ミヤちゃん達が薬草の事をローラさんに話したんだな。
「食欲がないニャン、今は食べれないニャンよ、グス」
「そうなのね、無理に食べるのは良くないわよね。私は行くわ、何を作るかはレイちゃんに任せる、お祭りに間に合うように風邪を治してね」
「はいニャン」
僕の返事を聞いたローラさんは頷くと部屋を後にした。
やっと忙しいのが終わったのに、お城の皆の為の料理を考えるのか・・・・・・・もうひと眠りしてから考えよう。
「起きて下さいレイちゃん。風邪だとお聞きしましたが、食糧倉庫にある、あの大量の魔物をどうにかして下さい」
「はいニャン?」
うつ伏せ寝の僕は重い瞼を開き顔を上げて前に視線を向けた。
誰れこの人は、僕の事を知っている様だけど僕は会った事があるのかな。
「料理長のイズマです、覚えていませんか? ミヤちゃん達の知っている菓子をローラ様に食べさせたいと、作り方を知らない私にレイちゃんが教えてくれた・・・・・・イズマです、覚えていませんか?」
魔物討伐と街の再建の準備を始めるだいぶ前、このお城でのんびりできた最初の頃に会った人なのか。
巨大プリンに巨大ケーキを作ってくれた人だなたぶん、覚えてないけど。
「忘れたニャン、久しぶりニャン」
我が家族は嘘は付かないけど・・・・・・少しの優しさは持ち合わせているので、久しぶりと言っておいた。
「いいんですよ、話せる猫だと驚き、厨房台に隠れて話していましたからね」
ああ、そんな人がいたよ。
隠れて会話した事を覚えているよ、あの時の人が一番偉い料理長だったのか。
「思い出したニャン、隠れていたニャンよ」
「思い出してくれましたか。それで、今は隠れるところがないくらいに魔物が一杯なんです、どうにかして頂かないとお祭りのお客様に料理を作る時に邪魔になるんです。そろそろ、どうにかして欲しいと思いまして伺ったんです」
風邪で休んでいる僕の部屋に訪れたのは料理長のイズマさん、討伐の後に持ち帰った魔物が邪魔だと言われてしまった。
「考えるニャン、風邪が治ったらすぐに行くニャン」
「よろしくお願いします」
「はいニャン」
忘れてはいなかったけど、どんどん料理に使ってと頼んでいたんだけど全然減らなかったんだな。
ああ、魔法の効果が切れて魔物が大きくなってしまったんだな。
お城が壊れそうだと苦情が来なかったのなら・・・・・・食糧倉庫と厨房の中に納まっているんだな。
どうしたらいいのかな、討伐部隊の皆さんのお陰で沢山の魔物のお肉を販売と贈呈する事ができたんだけど、ギルドと問屋さんには引き取れないと言われてしまったんだよね。
いい感じに売れていたんだけど、流石に倒した魔物の数が多かったんだな。
新しい街の下準備に大量の材料の生産を何軒もの工房に頼み、売った魔物のお肉の代金で何とかしてきた・・・・・・・支払いよりも買い取って貰った代金の方が凄く多かったんだよね。
それだけこの大陸の魔物が多かった・・・・・・あの西の壁の向こう側の魔物はどれくらいいるのかな、
皆で見下ろした時の視界全部が魔物だったんだよね。
あの光景を見ても国王様達の討伐の意志は萎える事なく、無謀な戦いを挑みそうな様子。
「ニャ~≪何も考えないと飛んだままなのが嬉しいな≫」
魔法使いの空飛ぶ絨毯もいいけど、空飛ぶ布団の方が僕はいいと思う、寝た時に寝返りをしても猫用布団なら落ちる心配が無用だ。
風邪を引いて寝ていれば一日が終わるのが早そうなのに、幸せの布団に挟まれて寝ている僕を起こす人が多い。
「・・・・・・レイちゃん」
微かに聞こえる反響したおそらく大声の主は、本日最高の声量を出して走ってる男の人だ。
誰がここに来るのかな・・・・・・ルーカ王子様で決定だな。アイルさんは王都だし、僕の知っている人で、お城の中を走りそうな人は1人だな。
「国王様から手紙が来たんだ」
慌てた様子で叫ぶルーカ王子が手紙が来たと、その手紙が国王様からだと来訪する前に教えてくれているんだな。
ルーカ王子様だって王家、国王様がいくら偉くても親子なんだから手紙のやり取りなんて日常的だろに。
「ハァ、ハァー、疲れた」
王家の皆さんは体力のある無謀な戦士なのに、ルーカ王子様は全然体力のない二枚目・・・・・・魔物討伐に躍起になっている皆とはだいぶ性格が違う。
「ミヤちゃん・・・メグちゃんは何処だ・・・・・・レイちゃん、何処に居るか知っているかな?」
部屋に現れたルーカ王子様は片手に手紙を握りしめて部屋の中を見渡すが居ないのはいつもの事だ。
僕達にとって部屋とは料理やお菓子を食べて寝る場所で、日中は誰も居ないのが普通なのだ。
「市場に行ったニャン、お菓子屋さんニャン」
「そうなのか、お菓子屋さんにね。王都から手紙が来たんだ、それも国王様のお父様からなんだよ。手紙の内容が気になる、ミヤちゃん達宛だから勝手に読む事が出来ないよ、どんな事が書かれているんだ。ああ、気になる、凄く気になる・・・・・・」
そんなに読みたいのか。
ルーカ王子様は窓から上半身を出して門に視線を向けてミヤちゃん達を探している。
夕方までは帰って来ないだろうから探しても無駄だ。
国王様からの手紙かぁ、ミヤちゃん達宛なんだから・・・・・・次の討伐のお誘いかな。
王家の皆さんは身をもって知ってしまったんだよね、回復魔法の便利さに。
「頼みがあるんだよレイちゃん・・・・・・ねぇ、聞いてくれているかな?」
猫は人間の言葉を理解していても聞き流す、食べ物をくれる内容以外は聞き流す。
僕の場合は自分でお願いできるので食べ物には釣られない、しかし、ドラマ好きの僕はうわさ話や人間関係など色々な事が気になる・・・・・・猫探偵なのだ。
なので、ルーカ王子様の頼み事の内容が気になるんだよね。
「はいニャン」
ルーカ王子様の1人劇場が終わって本題に向かうようだ。
相手にすると色々と頼まれてしまう・・・・・・ルーカ王子様は本当に頼み事が多いんだよね。
「国王様からの手紙は急ぎの用かもしれない。代わりに手紙を読んだ方がいいと思わないか? ミヤちゃん達の代わりに読んでもいいかな? そうだろろ、レイちゃん」
そんなに読みたいのなら読めばいいのに、僕のところに持って来なければ手紙を読んでも不自然じゃないのにね。
この世界の手紙は折りたたんだけの紙の手紙、手紙を入れる木箱から出せばすぐに読める。握りっている手紙を突き出して僕の返事を待っているぞ。
恐らく手紙のない内容に興味がないだろうミヤちゃん達、家族からの手紙なら読みたいと思うだろうけど、討伐でご一緒しただけの国王様からの手紙は興味を示さないと思う。
「読んでいいニャン、ミヤちゃん達にニャン、後でニャン、内容を説明するニャンよ」
ミヤちゃん達なら読んで手紙の内容を教えてあげる方が喜ぶ、できれば美味しいお菓子を食べている時に
説明をしてあげた方がいいだろう。
興味がなければお菓子に集中だね。
「手紙を読むよ、読むからね、レイちゃん?」
「はいニャン」
僕が王子様だったら勝手に手紙を読んじゃうと思うな。
「・・・・・・ん?」
廊下の向こうから数人の急ぎ足の音が聞こえる、ここに来るのかな。
「ルーカ王子様、ミヤ様達に手紙です」
ルーカ王子様の時の様に部屋の外で叫びながら移動している、ここにルーカ王子様が居るのを知っているんだな。
「通路から私を呼ぶ声が・・・・・・私はここだぞ、ミヤちゃん達の部屋に居る」
猫風邪をひいてお布団で寝ている僕の部屋に他の人達も来るのか。
「私も手紙をお持ちしました」
次に聞こえた声の主は、先行する男性のずーっと後ろのようだ。
「ルーカ様、国王様から手紙を預かって来ました。緊急の用件です」
何人も向かって来る手紙を持った人達、その叫んで向かって来る最後の声に聞き覚えがある。声の主はアイルさんのだ。
討伐後に全ての領主様達を王都に送った、アイルさんも王都に居るはずなんだけど、この街に来たのか。
「他にも手紙が来たのか、ミヤちゃん達に?」
あれ、国王様からの手紙は2通なのかな。
ルーカ王子様が持っている手紙とアイルさんの持っている手紙の内容は同じなのかな? 書く手間を考えたら違う内容だよね。




