ニャ~・・・216
「煙が見えるよ」
ここからだと、街道沿いで休憩しているようには見えないけど、道が緩やかに左にカーブしているから街道脇かも。
「お昼か、パンは無し、干し肉と大人の味しかないのよね。分けてくれないかしら」
「お姉ちゃん、大人の味はあげませんよ」
「はいはい、分かってるわよ」
メグちゃんが珍しく食べない様にしているんだよね、ニキビ事件から3日が過ぎたけど、欠片しか食べていない。
僕は大きくなった時に大人の味を食べたけど、大人の味だった。
甘みはあるけどチョコの味が強いのだ、もう少し甘くした方が美味しいと思うけど、それは僕の好みで食べやすい味だな。
ん?・・・・・・なんだろう、叫んでいる声が僕達が向かっている方向から聞こえる。
良く聞こえないな、叫んでいる声が移動しているのか、煙の立ち上っている場所とは違う方向だ、煙が南西なら、声が聞こえてくるのはそこよりも北の方向。
『厄介だな、皆は大丈夫だろか、ここまでは上手くいった』
何の事かな、独り言が聞こえる。少し息が上がってる。
『ヴァー』
『ふう』
誰かが戦っているんだな。
「ミヤちゃんニャン、右で戦闘ニャン」
「こんな所でか、魔物がいるのね」
「ギルドのお姉さんが危険だと言ってたよね」
リースロンドの西は危険で、凶暴な大型の魔物と動物が生息していると教えて貰った。
まだ大型の生き物に遭遇してない、街道近くは比較的安全だった。大きいヘビはいたけど襲って来なかった。
『うわぁ』
何と戦っているのかな、気になるから行ってみようかな。
「見て来るニャン」
「邪魔はしないのよ」
「はいニャン」
「あれ、レイちゃんは真っ直ぐ行ったよ」
「そうね」
そうか、僕は煙を起点に考えた、煙よりも右だけど、真っ直ぐ行ったら街道からそれた煙から右だ。
だんだん近づいて来た、もう少しだ。
「ニャ~≪何と・・・・・・あ、あの鳴き声はクマさん達の声だよ。急ごう≫」
急げ急げ何処に、急げ急げ声のするところにだ。
「諦めてくれよ、はぁ、はぁ」
見えた・・・・・・大きいクマさんだ、人間の男性と戦ってる。
「ヴァー、ヴァー」
「ニャ~≪戦っていない、牽制しているだけだ。どうにかやり過ごしたんだな≫」
「はぁ、はぁ」
「ニャ~≪・・・ビッグ、・・・ファスト(速く)≫ニャ~、ニャ~、」
「猫か、危ないぞ」
「ニャ~≪ニャンパラリン、回避、ニャンパラリン連続回避≫、逃げるんだ、ニャ~≪ニャンパラり、回避≫」
どうだ、僕は回避が得意な猫冒険者だぞ、見た事のない顔だな。クマさんにも色々な種類がいるからな。
「ヴァー」
「何処から? ごめんよ」
このクマさんは今まで遭遇した中で一番で大きいな。でも、動きは一緒だ。
「ニャ~≪行かせないよ、僕が相手だ。ニャンパラリン、猫パンチ回避、ニャンパラリン回避、後退ニャン≫」
あチョロチョロ、あチョロチョロ・・・大きいからこの作戦は駄目だな。でも間合いが空けばクマさんは近づいて来て立つ。
「ヴァー、ヴァー」
凄く大きくて怖いけどいつも通りだな。立って遠吠えをすれば隙が出来るし観察も出来る。
「ニャ~≪後退だ、近づいて来た、後退だ。あの人の足音が聞こえなくなったな≫」
どうするかな、ミヤちゃん達に任せるか、それとも自分で何とかするか。
自分から来たんだから、何とかしないとか。
「ニャ~≪・・・カトゥ・イフェクト(効果消去)、ニャンパラリン、受け身≫」
クマさんの右手の攻撃で上手く吹き飛ばされたぞ、少し痛かったけど・・・・・・ああ、白い洋服着てないよ、それで痛かったのか。検証を頼まれているのに着てないよ。
「ヴァー、ヴァー」
「ニャ~≪・・・ファスト(速く)≫」
ふう、小さくなって飛ばされるのは反動を利用できるから、当たる瞬間に自分から飛ばされる様にするとあまり痛くない、大きいままだと打撲していたな。
魔法が色々あるけど、効果の大きい単語に置き換えて行こう。日本語だともっと楽だけど、同じ発音だと何が起きるか心配だな、英語で良かったんだな。
「そうか、君達の猫だったのか、危ないところだったよ。避けるのも移動するのにも疲れていたんだ」
「へ~、大変でしたね」
僕は吹き飛ばされた後には、全速力で西の方向に走った。西に飛ばされたからだ。
僕の耳にクマさんの追いかける足音が聞こえなくなると南に、更に注意深く物音が聞こえない事を確かめてから東に向かった。
それでも煙の出ているところよりも北東の方の街道に出ると、ミヤちゃん達が歩いてくるのを待った。
どうだったと聞かれたので『敵は大きかった』とカッコつけて言った。
『レイちゃんよりも小さい生き物はそんなにいないよ』
『小さい生き物をいじめないでよ、可愛そうだからね』
クマさんは大きかったけど現れそうもないから、まあいいかで、事実を伝えなかった。
「ニャ~《煙はお昼だったんだね、ごちそうさま》」
少し暖かいシチューはお肉がとろとろだった、お肉が無くなる前に食べれて良かったよ。
何日前に作ったのかな・・・・・・街の中で作ったのかな。
「このパン硬いよ」
「パンは硬いさ」
メグちゃんはアカリちゃんのパンと比べる、あのパンは焼き立てと柔らかくなるように作っている。パン屋さんは日持ちのする硬いパンを作っている。パンばかり食べているけど、美味しいパンを食べようとはまだなっていないんだろう。日持ちが一番なんだな。
「お~い、出発するぞ」
「はい、俺達は行くよ。本当にありがとう、皆も無事だった。この辺は凶暴な生き物が沢山いるから気を付けて、俺が言うのも変だけどね」
「ありがとうございます、お気をつけて」
「街までは歩いて2.3日位だよ」
僕が助けた冒険者は馬車の方に走りながら街までの日数を教えてくれた。
「ニャ~《気をつけてね、馬車は少なそうだから、魔物に気をつけてね》」
馬車は2台で依頼主さん達が3名、警護の冒険者も3名の合計6人の行商の旅。この先の街アイルガーラまで行くそうだ。お昼に凶暴なクマさんに遭遇、僕が助けた人は囮になったけど、他にもいないか心配だったらしい。
馬車に残った5人は、他に現れないかと警戒して待っていた。そこに囮の男性が帰って来た。
僕達が馬車の近くに来た時には慌ただしく出発の用意をしていた。
「やっぱり、大岩だね」
「そう大岩よね、襲われても作戦を考える事が出来る、もしかしたら登ってこない」
確かにそうだけど、街道横に大岩はなかなかないんだよね。1個ぐらいあっても良さそうなのに見たこと無いんだよね。
僕達も出発した、日が暮れるまでに大岩を発見する為、今夜も大岩の上で寝ながら見張りだな。
眠気が無かったら、魔法の練習だ。猫語で英語の魔法が使える、人間の言葉でも英語の魔法が使える、僕は人に聞かれないですみそうな、猫語での魔法の練習だ。
希少種の猫レイちゃんは、少しだけ気にしているのだ、人間の言葉で魔法をホイホイ使うのは良くないと、猫語なら隠れて使わなくていいのだ。
だから練習は猫語で。
「おじいちゃんの家は何処かな、あっちかな、こっちかな」
今日の宿を探すメグちゃん、泊るところはダグラスさんの家だけど、交差点でキョロキョロしているのは楽しんでいるからだな。
別れが有れば出会いがある、それは街に着いて知人の家に行くのも同じ事。気分はウキウキ、お風呂はぬくぬくだな。
「さあ、メグ、どの方向に行くのかしら、お菓子屋さんでお菓子を買ってからか、それともすぐに向かうか」
「悩む、凄く悩むよ。右に行けばおじいちゃんの家が、左には市場がありそう、真っ直ぐはお店の多い通り。誰か決めてくれないかな・・・・・・レイちゃんは駄目だよ、お風呂に入りたいから右に行くよね」
「ニャンニャン」
新鮮だ、リースロンドに長くいたから、普通に鳴く機会が少なかった。作戦をしているあの日は話せないふりをしてたけど。
そうだな、お風呂に入りたいけど・・・・・・お城と違い夜しか沸かしてくれないよね。なら買い物をしてからでもいいなダグラスさんの家に行くのは。
なら僕がが決めよう、久しぶりにあれをするかな。
「ニャ~≪こちに来てくれよ≫、ニャ~≪こっちだよ≫」
「レイちゃんが左に向かっているよ、来いと言ってるよね、お姉ちゃん」
「ええ、市場に寄ろうと、呼んでいるのよ」
僕の気持ちが伝わったんだな。
「すいません、串焼きを冷まして串を抜いて、お皿に乗せて下さい」
「冷まして? ああ、その小さいのにあげるのか、可愛いな。よく見ると猫だと分かるな、猫舌だな」
「ええ、お願いします」
ミヤちゃんが睨んでるぞ、串焼き屋のおじさんに注文したのは僕で、お願いしますと言ったのはミヤちゃんだ。
あの交差点から市場に来て最初にしたのが、僕の串焼きの注文だ。
「お菓子、買って来るね」
「お願い、シードルも買ってね」
「は~い」
早く早く冷ましておくれ、目の前にお皿が置かれるのが楽しみだ。
のんびりと串焼きを焼いているのを見るのはいいな、お肉の中まで火が通ったかなとか、焦げ具合が丁度いいなとか考えながら、まあまあ忙しくて利益も出ている位が商売的には楽しいだろうな、忙しくても利益が少ないと疲れが溜まるな。
目の前のおじさんは楽しそうな表情で僕の串焼きを焼いてくれている。
「どうかな、すぐに食べれるか分からないけど串を外した串焼き、出来ました。小銅貨5枚だ」
「そんなに安いんですか?」
「君は、この街で買い物するの初めてかい?」
「はい、先ほど着いたので、ここが初めてです」
「嬉しいね、めぐり合わせだな。なら説明をしよう。この街は街の外を見て貰うと分かるけど、作物を作るのが大変なんだ。人間以外の生物がね度々畑を荒らす、食べなくても人間を襲う為に現れたりもするんだよ」
「だから、街の周りの畑に頑丈な柵が有るんですね」
「ああ、だがあれは気休めだ、柵は壊される事が多く、中に住んでいる農家の人達も大変だ。しかし、その代わりにその生き物を狩る事で多くの食料が、お肉が街に運ばれてくるのさ、量が多ければお肉は安くなる、手頃な値段で取引されているんだ。それで、俺の店の串焼きは安いんだよ。あそこの野菜は同じ値段だ、肉と野菜が同じ値段なんだよ。他の街ではありえないだろ」
「はい、お肉の半値以下が野菜だと思います」
「そうだろうな、他の街よりも野菜は高い、肉は安いだ。覚えてくといいよ」
「ありがとうございます。では、小銅貨5枚です。レイ、行くよ」
「ニャンニャン」
「お皿持って来てくれよ」
「は~い」
「ニャ~≪お肉は安いのか、僕の為に在る街だな・・・・・ミヤちゃん達もか、食べない野菜が僕に渡される事は無いんだな≫」
僕の為の街ではない、だって猫冒険者の僕は報酬も買い物も出来ないよ。安いからお願いしやすいだけだよ。
国王様の依頼の金貨1枚は両替した貰ったんだよな。ミヤちゃんの鞄、元僕用にお金は入っている。小金貨5枚に銀貨50枚だ、凄い大金があの中にあるんだよな。
国王様はもっと報酬をくれると言ってくれたけど、旅をしている僕達が安全に持ち運べる位ならいいけど、大金は困るな、最悪は落とす無くす盗られるがある・・・・・・既に落とすは経験済みだ。
「置くわよ」
「ニャンニャン」
露店からだいぶ歩いたな、冷めてるよ・・・・・・美味しい、干し肉の毎日だったから更に美味しく感じる。
「買って来たよ」
「ねえ、ここのお菓子少し小さいのかしら」
テーブルの上に置かれた、お菓子を見ている様だけど、小さいのかな。
「値段が高かったよ、これで銅貨1枚と小銅貨5枚だよ」
「ええ~、今までの2倍位の値段よ。メグ騙されたの?」
「どうかな、説明では材料がここだと高いんだって」
ん?串焼き屋さんのおじさんが言っていた野菜が高いは小麦粉も高い事になる。
メグちゃん達のお菓子ツアーにも影響しそうだな。
「食べよう、考えても安くならない」
「これ、美味しそうだったんだよ」
「美味しいけど、クルクルクッキーの方が美味しかったわ。それに、王都の焼き菓子もこれよりも美味しかった」
「ホントだ、これは大問題だ。王都の様な美味しいお菓子が無いのかも」
「仕方ない事ね、新しいお菓子が有るといいわね」
「ニャ~≪新しいお菓子か、僕の知る限り・・・・・エレノアさんにも言ったけどもう無さそう≫」
味の違いや材料の違い、後あるのは・・・・・・ケーキの仲間のモンブランとかだけど想像も付かない、材料は何なんだ、それに見た目はお店で見た事があるけど、食べた事がないし切った断面も見た事が無い、外見から僕が分かる事は何も無しだ。
僕がミヤちゃん達に教えてあげれるお菓子は何も無くなった。元々男子だと全然食べないし作り方以前に材料も分からないだろうな。
そして僕が悩んでいると決まって悪い事が起きるんだよね。
「レイ、よろしくね」
「甘いのが良いからね」
「ニャ~≪もうお手上げです、流石にこれ以上は何もありません。元々僕はお菓子の方が好きなんだよ≫」
あれ、塩味もお菓子だな、ついついミヤちゃん達のお菓子のイメージで考えていたよ。
ポテチはお菓子だったな、スナックとも言うけど、誰もスナックとは今の時代言わよね。おじいちゃんが、スナックか直ぐに揚がるぞと言って完成したのはポテトフライだったな。
そうか、お菓子てミヤちゃん達がいっているけど、僕達からするとクッキーだよ、何の解決にもならなかったな。
「ほらレイ、ニャンニャンはどうしたのよ」
「そうだ、ニャンニャンと言いなさい」
串焼きを食べよう、ニャンニャンとは言えないので、それを言えば思い付かないお菓子を考える事になるよ。
「ニャ~≪王都で美味しいお菓子を沢山食べました、もうお腹が一杯、だよね》」
僕が言わないので諦めてくれたのか、買って来たお菓子を食べる事に専念してくれた。




