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勇者モモコと魔法少女アンベールのぼうけん  作者: s_stein
第四章 最終決戦

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91.近くに忍び寄る敵

 ドラゴンは、テラたちの頭上で旋回しながら、執拗に地上めがけて火炎を吐く。


 だが、LV9のメンバーには何ら脅威ではない。


 アルバンが結界を張って火炎を防ぐ。ガリカの疾風魔法やアンベールの雷撃魔法で着実にドラゴンへダメージを与えていく。


 ついに力尽きたドラゴンが地上に落下し、弾みながら転がった。


 ドラゴンの背中にまたがっている者はいなかった。だが、フェムトは確かに誰かが背中にいることを見破っている。なので、テラもアンベールも、アルバンもガリカも近づかなかった。


 すると、しびれを切らしたのか、背中の皮を破って何者かが飛び出してきた。


 華麗に着地したのは、鎧を着た狼頭の人物と牛頭の人物。どちらも2メートルは超える巨体で、がっしりした体つき。狼頭は幅が広い刀身の剣を、牛頭は棘の付いた棍棒を持っている。


 テラは、二人が幹部であることを知っていた。心配したのはLV8からLV9以上にアップしているか否かだったが、幸いなことにLV8のままだった。これなら、格下である。


 牛頭の方がテラを見て「ほう。どこかで見た顔だと思えば――」と言いながら棍棒を肩に担ぐ。


「裏切り者のテラじゃねえか。しかも、LV9ときた。これじゃ、ちょっとご挨拶ってわけにはいかねえな」


 今度は狼頭の方がアンベールへ剣の切っ先を向け「貴様が勇者か?」と訊(き)いた。


 咄(とつ)嗟(さ)のことで一瞬固まったアンベールだが、「ああ、そうだ」と言って後方のモモコに危害が及ばないように気遣った。


「LV9で城に乗り込むとはいい度胸。だが、これまでだ。覚悟しろ」


 そう言って、切っ先をアンベールに向けたまま、その剣を両手で握って頭の右側に構えた。


「行くぞ!」


 魔王の幹部たちは、テラとアンベールに突進した。



 荒野で激しい戦いが繰り広げられる。


 巨体の割に動きがすばしこいので、四人は苦戦した。それは、巨体の動きは鈍いという先入観に惑わされているからだ。


 スキルは上回っているのに勝てないという焦りも、勝負の邪魔をする。


 しかし、正気に戻ればLV9とLV8の差が勝負を分ける。


 迷いと焦りから脱したテラたちは勢いづき、幹部たちは押され気味になった。


 こうなると、本来のLV9の実力が発揮される。


 牛頭の幹部は、テラの剣で心臓を貫かれた。狼頭の幹部は、アンベールの雷撃魔法で斃れた。


 消えゆく二人を見て、四人は喜び合う。モモコも立ち上がってガッツポーズを取った。



 すると、エスカがモモコを見上げながら「さっさとセーブした方がいい」とアドバイスした。


「いや、このまま城へ突入すれば、一気に片が付くから大丈夫」


「その自信はどこから来る? いいからセーブした方がいい」


「なんか、偉そうに……。それに、言葉遣いが……」


 そこへアンベールがやってきた。


「何を話しているの?」


「ああ、アンベール。エスカがセーブしろなんて、珍しいことを言うんだ。しかも、言い方がいつもと違うし。

 ど(・)う(・)い(・)う(・)風(・)の(・)吹(・)き(・)流(・)し(・)だと思う?」


「ど(・)う(・)い(・)う(・)風(・)の(・)吹(・)き(・)回(・)し(・)だろ?

 いいじゃん、セーブすれば」


「だって……」


 と、突然、エスカが笑い出した。


「ハハハッ。君はおめでたいね」


「なんだよ、急に」


 すると、エスカが二本足で立ち上がり、ムクムクと大きくなって人の形になった。


 それは、鎧を着た紫色の髪の青年だった。整った顔立ちでなかなかのハンサムである。


「君はここで勇者の旅も終わりだ。

 永遠に眠り給え」


 そう言って、モモコの額を右手で指さした青年は、ニヤリと笑う。


 すると、指の先から稲妻が発射された。


 直撃を受けたモモコは後方に吹き飛び、投げ出された人形のように地面へ転がった。



   ◇◇◆◆◇◇



「アルバン! 城はどこだ!?」


「雲の中だ」


「何だと!?」


 モモコは空をぐるりと見渡したが、ハッとあることに気づいた。


(直前のセーブポイントに戻っている……。

 そうだ、エスカはどこだ!?)


 モモコがエスカを捜すと、フェムトの足下にいるのが見えた。


 すると、エスカがプイッと後ろを向いて、ゆっくりと去って行く。モモコは「おい、待て!」と言ってエスカを追いかけて、首筋をつかんで持ち上げた。


「どこへ行く?」


「戦いが始まるんだろ? 危ないからそこの岩陰に避難しようかと――」


「離れるな」


「邪魔じゃないのか?」


「お前がよけーなことをするから、やり直してんだろが!」


「知るか!」


「それより、お前、本物だよな?」


「何を言う。俺は本物だぞ。イミテーションじゃないぞ」


 そこへ、アルバンがやってきた。


「モモコ、さっきから何をしている?」


「ああ、ちょっとな。

 何者かとすり替わったエスカに俺が殺され、セーブポイントに戻ったんで、このエスカが本物かどうかを試していたところ」


 アルバンは目を丸くした。


「フェムト、ゼプト、エスカは、俺の周りから離れるな。

 今にドラゴンが来る。幹部がドラゴンの背中に隠れている。

 テラ、アンベール、アルバン、ガリカ。ドラゴンと幹部の退治をよろしく。

 そして、ゼプト。俺の体力回復を頼む」


 それから、モモコは雲を見上げ、剣を振り上げて叫んだ。


「やい、てめーら! さっさと降りてきやがれ! いざ尋常に勝負しろ!」


 すると、雲を掻き分けて二匹の赤褐色のドラゴンが舞い降りてきた。



 ここから後は、狼頭と牛頭の幹部が倒れるまで、再生ビデオでも観ているかのように同じ内容が繰り返された。


 その間、モモコはフェムト、ゼプト、エスカを観察し続けた。しかし、特段は何も起こらなかった。


 モモコが安堵しながら今度こそセーブしていると、風に乗ってブーンという羽音が聞こえてきた。音の方角を見ると、少し大きめの蜂が自分の方に向かって飛んで来る。


「おい、みんな! でっかい蜂だ! 危ねーぞ!」


 モモコが立ち上がると、エスカが「蜂くらいで騒ぐな。小心者の勇者だな」とからかった。


 ところが、フェムトは「あれは蜂じゃない! 人間と同じ生体反応がある!」と叫んでガリカの方へ駆け出した。ゼプトも彼女と一緒に避難する。


「畜生! 今度は蜂に化けやがったな!」


 モモコはエスカを小脇に抱えながら、左手で剣をめちゃくちゃに振り回した。


 すると、蜂はモモコを刺すのを諦めたらしく、空高く飛び去った。


「油断も隙もならないな。なんだ、あいつは」


 と、突然、若い男の声が空に響き渡った。


「諸君。よくここまでたどり着いた。

 しかも、敵は人や魔獣という先入観の裏を掻くため、部下を小動物に化けさせたが、よくぞ見破った」


 モモコは拳を振り上げる。


「汚い手を使わずに、正々堂々と勝負しろ!」


「何を今更なことを。この戦いは、何でもありであることは承知の上ではなかったのか?」


「そんなこと、後から言うな! 今初めて聞いたぜ!」


「まあ、よい」


「よくねえ!!!」


「さあ、最後のゲイムを始めよう。

 この城にたどり着けるかな?」


 と、その時、雲に大きな渦が出現した。


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