90.LV10のモモコ
[第四章の登場人物]
アンベール…………………主人公の男の子。日系二世でイケメンの高校一年生。勉強よりも運動が得意
モモコ………………………アンベールの幼馴染みで同級生。桃色ツインテール美少女。文武両道。
エスカ………………………アンベールが飼っているメスの白猫。青と金のオッドアイ。異世界では言葉を話せる
<ディフェリタ国(異世界)の人々>
アルバン……………………ディフェリタ国の聖職者
ガリカ………………………ディフェリタ国の巫女
フェムト……………………双子の魔法少女。ゼプトの姉
ゼプト………………………双子の魔法少女。フェムトの妹
ヨクト………………………チートの力をモモコに与える女の子
テラ…………………………紫のドレスの女。元魔王軍。モモコのパーティーに参加する
エクサ………………………イケメンの魔王
夜が明ける少し前に、モモコたちは全員で食事を済ませると、すぐに出発した。食料は魔王との戦いでは邪魔になるので、残りを捨てた。
途中で日が昇ったのだが、低く垂れ込める雲のせいで、明るくはなかった。このような天気の中で、天空の城はどう見えるのだろうとモモコは想像を巡らす。
しばらく荒れ地を進んでいると、小高い丘が見えてきた。アルバンは「そろそろ城が近い」と言う。
そこを登り切ると、案の定、遠くに鎧を身につけて光線銃を携行する兵士の集団が待ち受けていた。彼らがいるということは、守るべきもの――魔王の居城――が近いということだ。
兵士たちは密集隊形を取っているので、後方にどれだけいるのかがわからないが、少なくとも横方向に並んでいるのは五十人ほどいる。
まるで、鎧の壁だ。
モモコは前を向いたまま、仲間に告げる。
「悪いが、俺のLVを最大のLV10に上げさせてもらう。魔王を前にしてチートの力が尽きた後にLV9は心許ないからな」
ここでモモコは、ヨクトに「チートの力を小出しにしてくれ」と依頼する。頷いたヨクトは煙となり、成長する剣に吸い込まれた。
剣が光り輝き、グーンと伸びて70センチメートルほどになる。
準備完了だ。
モモコは足を開いて踏ん張り、剣を両手で握りしめ、大きく息を吸った。
「邪魔だあああああっ!! どけええええええええええっ!!」
叫びながら思いっきり剣を左横に振って水平に構え、一気に右横へ振り切った。
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!
凄まじい剣圧が扇状に急速に広がり、兵士たちを襲う。彼らの体は次々と上下に真っ二つになっていく。剣圧の勢いは衰えず、後方の兵士たちをも輪切りにする。さらに、兵士の後方にあった木々まで切り倒した。
「ヨクト! もういい!」
『今、力を止めたよ』
「ありがとな!」
体がバラバラと落下する兵士たちは、みるみるうちに消えていく。数秒後には、彼らの立っていた地面が現れた。つい今し方まで大量の兵士がそこに立っていたのが、嘘だったかのように。
いったい、何人倒したのかわからないが、これで一気に経験値が100以上アップしたらしく、モモコの前にLV10になったとのメッセージ画面が表示された。
モモコは右手でガッツポーズを取り、ステイタス画面を開いてセーブした。
「アルバン! 城はどこだ!?」
「雲の中だ」
「何だと!?」
モモコは空をぐるりと見渡したが、どこにもそれらしいのが見当たらない。
「おい! どこにもないぞ!」
「斜め上を見ていろ。幹部と魔王が戦うために、城が降りてくるはず」
「城は地上に降りるのか?」
「いや、雲の中から出てくるだけだ。
そして、幹部の二人がドラゴンに乗って城から出てくる。
魔王は、城の中で待ち構えている」
「なるほど。わかった」
しかし、城は降りてこない。黒雲が風に吹かれて、不気味な起伏を見せているだけだ。
待ちきれないモモコは、剣を振り上げて叫ぶ。
「やい、てめーら! さっさと降りてきやがれ! いざ尋常に勝負しろ!」
すると、その声が届いたのか、雲を掻き分けて二匹の赤褐色のドラゴンが舞い降りてきた。
「おい、アルバン! 城が降りてこないぞ! ドラゴンだけ飛んでくるとは、話が違うじゃないか!」
「うぬぬ……。モモコが違う展開で進めておるから、想定外ばかりだ」
「こらあ! 人のせいにすんじゃねぇ!」
すると、フェムトがドラゴンを指さした。
「ドラゴンの背中に別の生体反応がある! 誰かが背中に隠れている!」
それを聞いて、テラがモモコの前に飛び出した。
「隠れているのは幹部に間違いない! ここは私たちに任せて! モモコは下がってゼプトの回復魔法で最大まで回復して!」
「わかった!」
モモコは、フェムトとゼプトとともに、集団から離れて後方に下がった。




