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勇者モモコと魔法少女アンベールのぼうけん  作者: s_stein
第三章 天空の城への道

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83.レベル差を跳ね返す勝負

 剣を構えたグラキリスに対して、モモコは剣も持たずに肩をすくめる。


「おいおい。後ろに光線銃を持った兵士をたくさん従えて勝負かよ?

 魔王軍の隊長さんの名が泣くねぇ。

 一対一で勝負しないのかい?」


「一対一?」


「そう。剣で勝負だ。

 当然、魔法を使った直接攻撃は行わない。

 さらに、そっちは兵士に手出しをさせない。こっちも、仲間に手出しをさせない。

 どうだい、この条件で?

 まさか、断るなんて言わないよな?」


「どこで勝負をすると?」


「ここで」


 モモコは左手の親指を下に向ける。


「勝負に魔法は使わないって言ったな?」


「ああ。雷撃魔法などの直接攻撃は、なしだ」


 そう言いながら、モモコはさりげなくあ(・)る(・)こ(・)と(・)をしたのだが、グラキリスには気づかれなかった。


「フン。勝つ自信はあるのか?」


「当然だ」


 グラキリスは、ムッとした顔をしてモモコを凝視する。


 すると、一瞬、驚いた顔を見せたが、すぐに口元がほころんだ。


「なるほど、そんなLVのくせに偉そうな口を利くとは、LV7の恐ろしさを知らぬと見える。剣で勝負というなら、相手になろう」


 グラキリスの命令で、兵士たちは10メートル以上後方に下がった。一方、アンベールも同じくらい後ろに離れた。


 モモコは、グラキリスのスキルを調べる。


 ――――――――――

 ステイタス

 職業:剣士

 LV:7

 経験:675 知能:670 攻撃:685 敏捷:670

 体力:525 耐久:655 魔力:650

 :

 ――――――――――


 体力が低いのは一仕事でもしてきたのだろうか。それを除けば、いずれのスキルも半ばを超えている。


 この高スキル者を相手にする場合、LV7のなりたてでも厳しい。それなのに、モモコはLV6になったばかりなのだ。


 これでは結果が見えている。


 だが、唯一、大差が付いていないのは体力。勝負をするなら、ここに賭けるしかない。


 つまり、レベル差のある相手には、自分がダメージを極力受けずに相手の体力を消耗させて勝利するしかないのだ。


 モモコが勝利への道筋を立てていると、それが長いと感じるグラキリスがしびれを切らして言う。


「おい。早くしろ! 素手で戦うのか? さっさと剣を出せ」


「お、おお……。うっかりしていた」


「嘘を言え。ビビったのだろう?」


「うっかりしたって言ってんだろうが、ボケ」


 モモコは左手から、成長する剣を取り出した。そして、それを両手で握って中段の構えを取る。


「フン。その程度のスキルでは、空元気としか思えん」


「何とでも言え」


「しかも、へっぴり腰だぞ」


「うるせー! かかってこいや!」


「行くぞ!」


 グラキリスは剣を大きく振りかぶる。


 地面を蹴る。


 あっという間に距離を詰める。


 キイイイイイン!


 飛び散る火花。乾いた金属音。


 激しいつばぜり合い。


 両者一歩も譲らず。


 グラキリスの体重が剣に乗る。


 押されるモモコ。


 剣を押し返す。


 グラキリスが後ろに下がり、剣が離れる。


 すかさず、押した剣で袈裟懸けに振り下ろす。


 そこに押された剣が迎え撃つ。


 ギイイン!


 モモコの剣が弾かれる。


 間髪入れず、弾いたグラキリスの剣が横に振られる。


 ギン!


 モモコは、その動きを剣で止める。


 また押し返す。



 目にも止まらぬ二人の剣戟は続く。


 空中に描かれる無数の銀閃。


 悲鳴のような金属音。


 予想に反して、両者は互角。


 グラキリスに焦りの色が浮かんだ。額に脂汗が滲む。唇を強く噛む。


「ええい! 倒れろおおおおおっ!」


 ようやく全力を解放する彼女は、恐ろしい速さで剣を振り、モモコを圧倒し始めた。


 モモコが押されて、苦悶の表情を浮かべる。


 突然、モモコが咆哮する。


「うおおおおおおおおおおっ!!」


 同時に、彼女の全身が炎に包まれた。


 垂れ下がるツインテールが、上昇する熱気で宙に浮く。


 目が赤く燃え、憤怒の形相になる。


「なにぃ!?」


 グラキリスが一瞬怯(ひる)んだ。


 モモコの剣の動きが加速する。


 袈裟懸けに何度も何度も。それは、横向きの8の字を描くかのように。


 グラキリスの剣はそれを受けることしかできない。


 衝撃で手のひらが痺れる。柄を握れなくなる。


 ついに、グラキリスの手から離れた剣が宙を飛んだ。


「――っ!!」


 彼女は素速く後ろに跳んで、左手からもう一つの剣を取りだした。


 再び始まる壮絶な剣戟。


 グラキリスは自分と互角に戦うモモコが信じられない。


 魔法を使っているのかも知れないが、直接攻撃している訳ではないので、不正を咎(とが)められない。


 だが、体力が消耗している。それはモモコも同じ。


 ――今こそ、決着をつける時。


 二人は剣を大きく横に振りかぶり、同時に素速く振った。


 キイイイイイン!


 二本の剣が互いを弾き返し、彼女らの手から離れて宙を舞う。


 今度は、モモコが拳を振りかぶってグラキリスに突進した。


 グラキリスも拳を構える。


 懐に飛び込むモモコ。


 その頭上で突き出されるグラキリスのストレートパンチ。


 肉と肉がぶつかり合う鈍い音。


 ズシリとくる拳がみぞおちに炸裂した。


 蹌(よ)踉(ろ)めくグラキリスの頭は、間髪入れず繰り出すモモコの左右のフックで揺れる。


 反撃の拳を突き出す隙を与えない。


 グラキリスはサンドバッグ状態と化す。


「倒れろおおおおおっ!!」


 モモコが体重を乗せたストレートパンチで、グラキリスの顔が歪む。


 強烈な一発を受けて白目を剥いた彼女は、ゆっくりと仰向けに倒れた。


 地面の砂を巻き上げ、二度弾んで大の字になった彼女は、それから動かなくなった。


素速い動きを表現するため、意図的に短い文にしてみました。

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