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勇者モモコと魔法少女アンベールのぼうけん  作者: s_stein
第三章 天空の城への道

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82.もぬけの殻

 モモコはテラに改めて仲間を紹介する。テラは、女性が多いパーティが珍しいらしく、この世界で出会う男ども、特に勇者の悪口ばかりを披露してみなを笑わせていた。


 話を合わせるモモコは、汗だくだ。それをアンベールが苦笑いして見ながら、同じ表情を別の意味でテラに向けていた。


 しばらく歩いて行くと、山がいくつも見えてきた。道はその山と山との間に吸い込まれていく。


 テラが「あそこに村があるわ」と指さす先に、木造の小屋が点在しているのが見えてきた。両側が高い山に囲まれていて、山(やま)間(あい)の小さな村といった感じである。


 緑はあることにはあるが、それよりも岩が多い。痩せた土地で農作物を栽培しながら暮らしているようだ。


「あの村が魔王軍に占拠されている。あそこに居座れば誰も通れない、絶好の位置よ」


 モモコは「なるほどね」と言いながら村の様子をジッと見つめる。


「でも、誰もいないみたいだけど」


「おかしい。ちょっと、偵察に行ってくる」


「テラ。それではいかにも怪しいから、みんなで旅人のふりをして近づいてみたらどうかな?」


 モモコの発案で、全員が速度を落とさず村に近づいていった。


 フェムトがさりげなく探索魔法で生体反応を調べる。


 ところが、不思議なことに、付近にある家にはその反応がないという。つまり、全てがもぬけの殻なのだ。


「この村は、どこまで続いている?」


「あそこで道が右へ急カーブを描いて山の裏に回っているけれど、そこが村の外れ」


 モモコは「フーン」と言って腕を組んだ。


「敵は逃げたんじゃない? あるいは、あの急カーブの先で山の裏側に隠れているとか」


 ここでモモコはいったんセーブし、全員を集めてそれぞれの配置を指示した。すると、アルバン、ガリカ、フェムト、ゼプト、そしてエスカは各所に散り、家や岩の陰に隠れた。


 それからモモコはアンベールと一緒に道を進み、カーブにさしかかる。


「来やがったぜ」


「ああ」


 どこで行動を監視していたのか、右の山の裏側から魔王軍の兵士がゾロゾロと現れ、二人の行く手を塞いだ。その数、総勢五十。


 モモコはニヤッと笑って「全員を俺一人が倒せば、楽勝にレベルアップだな」と言う。


 しかし、アンベールは「相手は光線銃という飛び道具を持っているから、モモコ一人では不可能」と忠告する。


「だから、アンベールのド派手な魔法が必要なんだよ。やつらを雷の魔法とかで半分に減らせば、残りはオーバークロックで仕留める」


「なるほど」


「まずは、魔法を頼んだぜ」


「前回の汚名を雪(そそ)ぐ、いい機会だな」


 二人は身構えて、戦闘態勢に入った。


 ところが、魔王軍の兵士たちが作る人垣が真ん中から割れて、後ろから一人の人物が現れた。


 その人物は黒い軍帽を目深に被り、黒い軍服を着た美男子のようだ。黒髪はベリーショートで、鼻筋が通っている。


 軍服の上から黒マントを羽織い、幅の広い詰め襟に金色のボタン。左胸に勲章のようなものをぶら下げている。


 おっと、胸には膨らみがあるではないか。


 彼女が帽子の庇を挙げた。


 その見覚えのある顔に、モモコとアンベールは、真っ青になって後ずさりした。


 そう。あの男装の麗人、LV7のグラキリスである。


 彼女は、低い声で笑いながら言う。


「まさかここで会うとは思ってもみなかったであろう?

 ……ほほう。脱走した時はLV2だったのに、もうLV6まで来たか」


 と、その時、グラキリスの右腕からサーベルのような剣が出現した。


「だが、ここは通さぬ。

 一瞬で片をつけてやる」


 彼女は、剣の柄をしっかりと握った。


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