81.中ボスが仲間になった
完全に体力が回復した女は「さあ、行きましょう」と言って、さっさと温泉を出て茂みに隠れた。
モモコも遅れて温泉から上がり、服を畳んであるところまで沈んだ気持ちで歩いて行く。
タオルがないので我慢して上から服を羽織ろうとすると、タオルが頭の上から被さった。女が後ろからヒョイッと投げたのだ。
「そのまま着ない。風邪引くわよ」
女の気遣いに、モモコはホロッとする。でも、パーティの仲間を見て最悪の判断を下さないだろうかと思うと、せっかく暖まった体に悪寒が走った。
「当然、パーティに男はいるわよね? ってか、もしかして男だらけ?」
モモコが背中を拭いているときにその言葉が聞こえてきたので振り向くと、女が紫のドレスに着替えて悪戯っぽく笑っている。
「なぜそう思います?」
「その体、男には魅力的すぎるわよ。それで、周りが男だらけかと」
ああ、そのことか、とモモコは苦笑する。
「いいえ、逆にほとんど女です」
モモコの言葉を聞いた女が、急に笑い出した。
「これ以上女を増やしてどうするの? もしかして、そっちの趣味?」
「い、いいえ……」
「ふーん。なかなか興味あるパーティね。
今まで、むさ苦しくて脂ぎった男の集団しか見てこなかったから、楽しみだわ」
モモコは、自分のパーティにそのような男がいないことにホッとした。
紫のドレスの女を連れてモモコが戻ってくるのを見たアンベールは、警戒して飛び出してきた。
ここで事を荒立てては困るので、モモコが両手で頭を囲むような○を作る。これをOKの意味に捕らえたアンベールは警戒を解いた。
アンベールの後ろに、アルバンたち全員が心配そうに集まってきた。
女はアルバンの顔を見るや否や、フフンと鼻で笑う。
「どこかで見た顔があると思っていたら、アルバンじゃない。それにガリカもいるし」
モモコは「知り合いですか?」と尋ねると、女が素速く振り返った。
「いつも勇者にくっついている二人よ」
モモコはギョッとして立ち止まった。もう駄目の宣告がされたかと思い、思わず首に手を当てる。
女はアルバンの方を向いてニヤッと笑う。
「今度は女の勇者に従っているんだ」
「ああ」
「男に飽きた? あの勇者の体に惚れたとか?」
アルバンの顔がみるみるうちに真っ赤になっていく。
「図星みたいね。
さて、そっちの可愛い子と美少年はと……」
女がフェムトとゼプトとアンベールのスキルを調べる。女はLV6なので、彼らのステイタスは丸見えだ。
「フーン。使える魔法使いか。そして、そこの猫は……シーフ。
なるほど」
女が腕を組み、全員をもう一度じっくりと眺めた。
モモコのドキドキが止まらない。
アンベールもアルバンもガリカも『なぜ、女がここに来た?』と言いたそうな顔をしている。これにはモモコも、ジェスチャーでは表現できなかった。
しばらくして、女が「うん、決めた」と言ってモモコの方へ振り向いた。
「魔王軍討伐に協力するわ。私はテラ。よろしく」
モモコは深いため息をついて「ありがとう!」と頭を下げた。
この言葉でなぜテラがここに来たかを理解したアルバンたちも、安堵のため息をついた。
「さあ、この先の村へ行くわよ。
そこに魔王軍が駐屯しているから」
テラが先頭に立って歩き始め、みんなも彼女の後に従った。
モモコはゆっくり歩きながらステイタス画面を開いてセーブしていると、アルバンが近づいてきた。
「あいつを仲間に入れるという発想をした勇者は、モモコが初めてだぞ」
「こっちも、まさか仲間になるとは思わなかったけど、駄目元でやってみた」
「一応言っておくが、勇者がレベルアップすると、パーティを組む仲間が自動でレベルアップする。
しかし、テラがレベルアップしても、他は勇者も含めて自動でレベルアップせんぞ」
「…………」
「おい。まさかとは思うが、テラのレベルアップで他もレベルアップすることを狙って仲間に入れてはおらぬだろうな?」
「い、いや。それはない」
「本当か? ……怪しい」
「ほら、テラと一緒に戦ってLV6成り立ての俺も頑張ってレベルアップして――」
「すでにLV7が二人おるだろうが」
「そうでした……。
でも、いいじゃん。仲間は多い方がいいし」
「……先が思いやられる」
どうやら、モモコのとある誤解でテラが仲間になったようだ。




