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勇者モモコと魔法少女アンベールのぼうけん  作者: s_stein
第三章 天空の城への道

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77.温泉の刺客

[第三章の登場人物]


アンベール…………………主人公の男の子。日系二世でイケメンの高校一年生。勉強よりも運動が得意

モモコ………………………アンベールの幼馴染みで同級生。桃色ツインテール美少女。文武両道。

エスカ………………………アンベールが飼っているメスの白猫。青と金のオッドアイ。異世界では言葉を話せる



<ディフェリタ国(異世界)の人々>


アルバン……………………ディフェリタ国の聖職者

ガリカ………………………ディフェリタ国の巫女

フェムト……………………双子の魔法少女。ゼプトの姉

ゼプト………………………双子の魔法少女。フェムトの妹

ヨクト………………………謎の女の子


紫のドレスの女……………LV6。元魔王軍。名前はテラ

グラキリス…………………LV7。魔王軍の隊長。元幹部

 モモコたちは、谷を抜けるために斜面をよじ登る。幸い、つかまりやすい岩がたくさん露出していたため、多少は足を滑らせたものの、なんとか谷から脱出した。


 そこは、再び緑のカーペットのような草原だった。もし、ここに紺碧の空があったら、さぞ絵になったであろう。しかし、今はどんよりとした雲が恨めしい。


 時折、生暖かい風が吹いてきて、草の上を撫でる。また一雨ありそうな感じがして、皆は空を見上げた。


 モモコは、額にポツリと雨が落ちたような気がした。


「なあ、アルバン」


「何だ」


 アルバンが帽子を被り直してモモコの顔を見る。


「俺たち、賞金稼ぎに狙われているんだよな」


「そうだ」


「だったら、このまま天空の城だっけ、そこまで一直線に目指して、さっさと魔王を倒せばいいんだよな?」


 すると、アルバンが「歩いて六日かかるぞ」と言って苦笑した。


「む、むいかあああああっ!?」


「左様」


「走って三日にならないか? それとも、LV6になったら新たな魔法を習得していて、韋駄天のごとく駆けるとかならないのか?」


「習得しているか、画面で確認してみよ」


「……一応、言ってみただけだ」


 ふくれっ面になりながらモモコはステイタス画面を確認し、ついでにセーブした。


「いろいろあったよなぁ……。セーブデータを見ていると、懐かしいぜ」


 アンベールが後ろから覗き込むのに気づいたモモコは、「ほれ」っと言って画面を見せる。


「まだまだ折り返し地点だ。先へ進むぞ」


 そう言いながらアルバンは、道のない草原へ足を踏み入れた。まだ佇(たたず)むモモコは、彼の背中へ声をかけた。


「なあ、今日はどこへ宿泊するんだ? 洞窟か? 馬小屋か? それとも、旗が立っている小屋か?」


 これにはアンベールも呆れて「旅(はた)籠(ご)屋(や)。何度言ったらわかる」と肩をすくめる。


 だが、アルバンは無言で遠ざかって行く。ガリカたちも彼の後を追い、アンベールまで歩み始めた。


「ちっ。黙って付いてこい、ってことかよ」


 モモコは吐き捨てるように言って、アンベールを追いかけた。



 結局、暗くなるまで歩き、ちょうど林が見えてきたので、その中の適当な空き地で野宿となった。たき火の代わりにアルバンが魔法で光の玉を出し、それを中心に全員が円陣を組んだ。


 食料は持ち合わせていなかったが、近くの木にリンゴのような実がたくさん生(な)っていて、アルバンが毒味をして大丈夫とわかったので、全員でそれを夕食代わりとした。なお、エスカにはリンゴは不評だった。


 幸い、あれから雨は降らなかった。雲が風に流されて、空には星が瞬(またた)いている。この感じでは、雨の心配はなさそうだ。


「そうだ、アルバン。この近くに、温泉はなかったか?」


 モモコは、目を輝かせながらアルバンに迫る。


「少し行ったところにあるが、夜はやめておけ」


 アルバンが顔の前で手を振るが、モモコは星空の下で温泉に浸かることにすっかり夢中になっている。


「いいじゃんか。この星空を見ながら、温泉の中で『いい湯だな、ははん♪』と歌って、大宇宙の果てまで思いをはせる」


「歌ったり宇宙を思うのは好きにすればいいが、夜に入ることだけは絶対に駄目だ」


「ケチ!」


 むくれたモモコは、さっさと地面に転がり、ふて寝をした。



 翌朝、ちょうど陽が出た頃に目覚めたモモコは、大きな伸びをして立ち上がった。


「さあ、アルバン! 温泉に案内しろ!」


「む、無茶を言うな……」


「いいから。貴様も一緒にどうだ」


「こ、こら。女から混浴を誘うでない」


「ま、それは冗談だけど」


「冗談か……」


「どこにある? 場所を教えろ」


「この先を歩けば、じきに見えてくる」


 モモコはアルバンが指さす方角を目指し、スキップしながら歩き始める。


 アルバンが「気をつけろよ」と言うので、「セーブすりゃいいんだろ?」と返事をして一応はセーブをした。


「そうだ。成長する剣はどうなっているかな?」


 モモコは左手から剣を取り出すと、前より少し長くなっているような気がした。刀身が鏡のようなので、それに顔を映しながら「成長したぞ。フフフ」と一人悦に入る。


 それから、殺陣の練習がてら「えいや!」と剣を振り回しながら歩いて行くと、木々の間から湯気が漂っているのが見えてきた。


「あれだな」


 モモコは、剣を持ったまま湯気に引かれるように木々の間をくぐり抜けた。


 すると、広めの池のような温泉がもうもうと湯気を上げているのが見えた。


 ところが、その真ん中で誰かが肩から上を出している。


 薄紫色の髪の毛を上に持ち上げた、色白で面長の女性だ。


「やっべ。先客だ」


 と、その時、その人物がザバッと立ち上がり、低い声で「不(ふ)埒(らち)もの!」と叫んだ。


 何も隠さない裸体がこちらを向いているので、モモコはみるみる赤面する。


 ところが、その女は右手を水平にあげたかと思うと、手の先に魔方陣が出現し、そこからスッとサーベルが飛び出した。


「剣を構えているとは、追い剥ぎだな! 成敗いたす!」


 そう叫んだ女はサーベルを握りしめ、ジャバジャバと音を立てながら恐ろしい速さで駆け出した。


「わわわっ!」


 モモコは一目散に逃げ出したが、あっという間に追いつかれ、背中をサーベルで袈裟懸けに斬られた。


 仰向けに転がって苦しがるモモコに向かって、女は言い放った。


「ん? この元魔王軍と同じLVとは、追い剥ぎのくせに小生意気な」


「服くらい……着ろ……」


「裸の私より、自分のことを心配しろ」


 女はそう言ってサーベルを振り上げ、モモコの首を刎(は)ねた。



   ◇◇◆◆◇◇


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