68.巧妙な罠
部屋は古書の匂いが立ちこめ、アルバンが手に持つ明かりが本の背の文字を浮かび上がらせる。そこに書かれた文字は、明らかに日本語ばかりだ。中にはアルファベットもある。
アルバンは、素速く斜め左奥へ歩いて行き、左端の1冊の本を手にした。
さっそくアンベールがいくつかの本に興味を示し、次々と手に取って開く。フェムトとゼプトはモモコと同じく辺りをキョロキョロと見渡すだけだ。ガリカはここに来るのが初めてではないのか、一切興味を示さない。
「アルバン。もしかして、ここはお前の書斎ってやつ?」
「やはり、そう見えるか?」
「そりゃ見えるだろ」
「これは罠だ」
その言葉に、ガリカ以外のみんなが一斉にアルバンの方を向いた。
「もっと言うと、先ほどの3つのドアも全て罠だ」
「罠あああっ!!??」
モモコの大声が部屋中に響き渡り、みんなが耳を塞ぐ。
「だから、向こうの3つのドアは開けてはならぬ」
「ここは入っていいのか?」
「そうしないと、この奥の安全な場所へは入れぬ」
「回りくどい言い方は、よしこさん! 単刀直入に言ってくれ!」
「私が今手にしているこの本を一定時間内に棚から取り出さないと、床が開いてここにいる全員が下に落ちる」
そう言ってアルバンが左手に持った黒い本を揺らすと、ガリカ以外の全員が一斉に足下を見た。
「そして、もう1冊、こちらの本を抜くと――」
と言いながら、今度は右側に何冊か離れたところにある赤い本を手にする。その途端、本棚の一部がガタガタと音を立てて右側に動いていく。すると、奥に通じる真っ暗な穴が見えてきた。
「さあ、先に中に入れ。私が本を戻すと閉まるから」
アルバン以外はノロノロしていると床下へ落ちるような気がして、小走りに穴の中へ入っていった。
中は暗闇だったが、後から入ってきたアルバンの持つ明かりによって様子が見えてきた。
そこは、先ほどと寸分違わない、蔵書に溢れた書斎だった。
「な、な、なんじゃこりゃ!? これ、さっきのコピーかよ!?」
「向こうがコピーだ」
アルバンは、ガタガタ音を立てながら閉まる書棚を背にしてニヤッと笑った。
「おいおい、聞きたいことが山とある」
モモコは、また本を手に取って読みふけるアンベールと背中合わせになって、アルバンを指さした。
「何でも答えよう」
そう言いながらアルバンは、モモコの方へ歩み寄った。




