47.売買交渉
聖剣をじっくり眺めるトルンは、残念だという顔をして首を振った。
「かなり乱暴に扱ったみたいで、所々だが刃こぼれがある」
その言葉に、モモコは思い当たる節があった。
――あの時だ。
魔王軍の兵士の横暴に逆上して、力任せに振り回した時に刃こぼれしたのだろう。
「また鍛え直せるだろう?」
アルバンの言葉に、「まあね」と返したトルンは、ふぅとため息をつく。
「28万ゲルトでどうだ?」
「もう一声。勇者の門出を祝ってやれ」
聖剣に目を落とすトルンは、そう言うアルバンをチラッと見て、ニッと笑った。
「なら、30万」
「どうだ、モモコ? 決めるのはお前だ」
そうやって降られても、ゲルトの価値がわからないので、モモコは比較の対象を壁の中から探す。そして、店の中で一番サイズの大きなフォルシオンがあったので、それを指さした。
「あのでかい剣は、いくらで買える?」
「あれかい? 50万だね」
「じゃ、真ん中取って40万」
なんで真ん中なのかは言った本人も不明だが、モモコは鼻息荒く、ダメ元で言ってみた。
すると、トルンは、うーんと唸ってしまった。即座に断らずに考えると言うことは、いい線を突いているはず。モモコの期待が高まった。
「参ったねぇ。女勇者は、交渉術も心得ているってことかい。
いいよ。40万で」
トルンは、奥の扉に引っ込み、大玉のスイカが1個入りそうな布の袋を持って出てきた。袋のゴツゴツした凸凹が、中に貨幣が詰まっていることを示している。
「それって金貨40万枚か?」
「いいや、金貨には1ゲルト金貨、10ゲルト金貨、100ゲルト金貨、1000ゲルト金貨がある。これは、1000ゲルト金貨で400枚だよ」
モモコがそれを受け取ると、ズシリとくる重みで腕が伸びて袋を床に落としてしまったほどだ。
袋を開けると、目映い金貨が詰まっている。モモコが目を丸くしていると、金貨が光輝き、手の中に吸い込まれいった。
ステイタス画面を見ると、「ゲルト:401800」と書いてある。確かに受け取った。
急に金持ちになった気分のモモコだが、すっかり忘れていたことを思い出した。
それは、こちらの世界に来て、何も食べていないことだった。
「腹減ったぁ……」
モモコは、そう言って、へなへなと座り込んでしまった。
「じゃあ、私が何か買ってくる。でも、ゲルトは要らないわよ。ここの全員分、おごるから」
ガリカのありがたい申し出に、モモコたちは甘えることにした。
「今後の参考までに、一人1回の食事に、ゲルトはいくら必要ですか?」
「10もあれば。一日30から40ってところね」
モモコは、ゼプトが「この人の残量なら、90でいい」と言っていたことを思い出す。ということは、二人で一日分の食費相当だったのだ。
買い物に出かけたガリカとは、町の外で落ち合うことになった。とにかく、今は追われる身の上なので、一行はトルンに別れを告げて、町の外へと急いだ。




