↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者モモコと魔法少女アンベールのぼうけん  作者: s_stein
第一章 何でもありの異世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/100

44.美女の巫女の登場

 奥の右側の扉が開かれると、下に向かう長い階段があって、地下にいくつもの独房があった。そこに、アルバンたちが一人ずつ入れられていく。猫のエスカにまで一つの独房が割り当てられる念の入り用だ。


 独房は、三方がレンガの壁になっていて、通路側は鉄格子だ。ただ、彼らは横一列に入れられたので、互いの顔を見ることは出来ず、向かい側の誰もいない独房の様子を見るだけであった。


 割と頻繁に、二人の兵士が銃を構えてゆっくりと巡回するので、横同士で話すら出来ない。


 モモコは、ステイタス画面にチャット機能がないか確認したが、そんな便利な機能はなかった。それより、愕然としたのは、町に入る直前にセーブしたのを最後に、一度もセーブしていなかったことだった。


 戦いに勝利するとセーブする癖はついていたが、緑のドレスの女とは戦ったわけではないので、ついうっかりしていた。


(ここで一暴れして、LV7のグラキリスに瞬殺されたとして、またあそこに戻るのかぁ……)


 だが、モモコはそれでもいいような気がしてきた。セーブポイントに戻って、アルバンの肩をつかんで、この町に入るのをやめればよいのだ。


(そうだなぁ、アルバンが言っていた「フロム」とかいう町でもいいや。ここに入るのをやめて、フロムへ行こうぜ、って言えばいいんだ)


 そう考えただけで、だんだんその作戦がベストのように思えてきて、薄暗い独房の中でも目の前がパーッと明るくなってくる。



 だが、いざ実行しようとすると、怖くなってきた。


(セーブポイントに戻りたくて死ぬんだぜ……)


 自分がやろうとしていること――自殺行為――が、実に浅はかに思えてきた。こうなると、ぐんぐんと膨らんでいた期待は、急速にしぼんでしまった。


(何、弱気になって馬鹿なことを考えてるんだ、俺。

 いくらやり直せるからって、ゲームのリセットボタンをポチッと押すように、安易に死ぬことを考えていいのかよ?)


 モモコはかぶりを振って、今までの作戦をきれいさっぱり忘れ、もう一度考え直した。


 どうやってアンベールや双子を巻き込まないように戦えばいいのだろう。できれば、自分一人で全員を助け出したいのだが。あっ、アルバンなら自分で何とかするかな?


 そうやって、あれやこれやと真剣に考えていると、急に耐えがたいほどの空腹に襲われた。


 そこへ、ちょうど二人の兵士が通りかかった。


「なあ。腹が減って死にそうなんだ。何かないか?」


 兵士たちは顔を見合わせ、「丸パンみたいのなら、あったな」「その場所がわからないから、教えてくれ」と言って左方向へ立ち去り、二人とも階段を上がっていった。もちろん、独房からは姿が見えないので、音だけで判断だ。



 ところが、兵士たちがなかなか戻ってこない。モモコは、鉄格子に顔をくっつけて左方向に耳を澄ますも、足音がしない。


「おーい、まさか今頃焼いていないよねー。こねていないよねー。粉をひいていないよねー。収穫していないよねー」


 モモコがブツブツ言っていると、「うるさい」とアンベールにたしなめられた。


「さーせんした」


 と、その時、ソッと誰かが階段を降りてくる足音が左側から聞こえてきた。重量感のある兵士の足音ではない。


(まさか、グラキリスが直々に!?)


 モモコは、グラキリスがパンを持ってきた場面を想像してしまい、腰が引けたとき、もっど驚くべきことが目の前で起こった。


 真っ白いドレスを着て、陶器のようなツルツル肌をした、金髪で夜会巻きの髪型の美女が左から現れたのだ。


 彼女は唇に人差し指を当てて、シーッと言うポーズを取る。これには、モモコも思わず同じポーズを取って、うんうんと頷いてしまった。


 そのまま彼女は右側へ立ち去ったが、方角的に考えると、アルバンとアンベールと双子とエスカにも同じポーズを見せたはずだ。


(誰だ? 静かにしろって、味方か?)


 モモコは鉄格子に顔をくっつけて、今度は右方向に耳を澄ましていると、抜き足差し足でアルバンが現れた。


「おい? さっきの女は誰だ?」


 モモコが小声で尋ねると、アルバンは「巫女のガリカ。とにかく黙って付いてこい」と囁(ささや)いた。


「付いてこいったって、この状況で? お前なぁ――」


 モモコがぼやくと、ガリカがフッと現れて、鉄格子に向かって右手の人差し指で円を描いた。すると、鉄格子が煙のように消えてしまった。


 モモコが通路に出ると、全員が独房から外に出ていた。


「兵士は?」


 モモコの問いに、ガリカが静かに答える。


「全員寝ているわ」


「グラキリスは?」


「魔石の採掘場へ視察に行っているわ。逃げるなら、今がチャンス」


「なるへそ」


「言葉が昭和」


 アンベールに突っ込まれたモモコは、頭をかく。



 床に伏して眠りこけている兵士たちを横目に、全員が建物の裏口から脱出した。


 そこは、裏通りだったが、幸いなことに誰も歩いていなかった。


「ずらかるのか?」


 モモコがアルバンの背中に問いかけると、アルバンは振り返らずに「魔法の道具屋へ行く」と答えた。


「聞きたいことが山ほどあるが」


「後にしろ」


「お前、いつからリーダーだ?」


「…………」


「無視かよ」


 生意気で気にくわないアルバンだが、とにかく彼を信じて頼るしかない。


 モモコは、ふとセーブ忘れを思い出し、急いでセーブしてからアルバンたちの後ろを追いかけた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=717234455&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。