41.LV6のアルバンの実力
モモコは、緑色のドレスの女に一度殺されているので、今度は敵を討ってやると意気込んだ。だが、こうも人が多くて狭い裏通りにて、いきなり戦いに持ち込むのは危険である。
なので、まずは、言葉での反撃を開始する。
「騒ぎになったのは、そっちの女が道を塞いだからだ」
そう言って、殴ってきた女をビシッと指さす。指された方は、その指先を見てムッとした表情になり、舌打ちをした。
酒瓶でラッパ飲みを続ける女は、左右の女どもを見て鼻で笑う。
「何? こいつらが?
騒ぎを起こしたのは、こいつらとでも言いたい?」
「そうだ」
すると、殴った女が何か言いたそうに拳を振り上げて前を出たが、緑色のドレスの女が腕を横に出して制した。そして、酔っているとは思えない目つきでモモコを睨み付ける。
「ここはこいつらの縄張りだから、道を塞ごうが何しようが、誰も文句は言えない」
「じゃあ、どうしろと?」
「決まってんだろ? こいつらにゲルトを渡してやりな。通行税だぜ」
壁を作っていた女どもは、一斉に頷いて笑う。後ろにいた男までも首を上下に振った。
「いくら?」
もちろん、モモコは払う気などない。形式的な質問だ。すると、殴った女が指を2本立てながら言い放つ。
「2万」
「そんな大金、あるわけないだろ」
すると、女たちがゲラゲラと笑い始めた。
「貧乏人かよ。魔石を採掘して働く労働者でも2万は端金だぜ!」
これには、アルバンが反論した。
「おい、嘘を言うな。ここの労働者の賃金は、1日100ゲルトだ。
よそ者だから知らないとでも思ったのか?」
その言葉に女たちは、次々と真顔になる。すると、緑色のドレスが風もないのに大きく翻った。
「ハハハッ! この町のことを知っている? なら、ここの通りのルールを知っているはずだろう」
「そんなルールなぞ、ない。今、勝手に作っただけだろうが」
女はまた酒瓶をグイッとやって、アルバンの頭のてっぺんから足のつま先まで眺める。
「小生意気な奴め。なら、この私のことも知っているのか?」
「無論だ」
「ほう。言ってみよ」
「LV3の夜盗」
すると、女が背中に手を回し、フォルシオンを取りだした。これを見た周囲の女と男どもが、一斉に建物の中へ隠れていく。道の中央に立つ女は、ヨロッとしながら、剣を手首でクルクルと回転させた。
気が気ではないモモコは、アルバンの後ろから泣きそうな顔で声を出す。
「おいおい、挑発するなよぉ。ヤバいぞ……」
「こうせんでも、奴は剣を抜く。家業が追い剥ぎだからな。
最初から、あいつらに通せん坊をさせておいて、その後に出てきて脅す手はず。
見え透いた手口よ」
「何だ、バレていたのか。ハハハッ!」
女は高笑いをして、また酒をあおった。
「だが――」
酒瓶から口を外した女の目がギラリと光った。
「LV6相手に喧嘩をするつもりはない。相手は――」
剣の切っ先がアンベールとモモコの間を行き来する。
「そこの雑魚ども」
次の瞬間、女はフォルシオンを振りかぶったかと思うと、酔っているとは思えないスピードで、それを振り下ろした。
縦方向の銀閃。恐ろしい疾風。狙いはモモコだ。
「させぬ!!」
アルバンが、今まで聞いたことがないほど力強い声を張り上げ、ケーンを前に突き出す。
疾風が、途中でドンという衝撃音を残して消え失せた。衝突した付近では、空間がモヤモヤと揺らめいている。
「――っ!」
女は舌打ちをし、後ろに蹌踉めいた。
「何、本気出してんだよ、LV6のくせに」
「小指一本ってとこだが」
女は、千鳥足になり、ムゥと声を上げた。
LV6とはいえ、体格差がありすぎる。心配になったモモコがアルバンの背中に声をかけた。
「大丈夫かよ!?」
「モモコは、私が守る」
その言葉に、モモコはドキッとし、頬が熱くなるのを感じた。アンベールが、指で自分の顔を指さす。
「私は?」
「お前は――ついでだ」
「おまけかい……」
アンベールの腕がだらんとして、指が地面を差した。
千鳥足の女が、何やら考えていたが、横にツツッとずれて道を空けた。そして、酒瓶を揺らして道の向こうを指し示す。
「行きな」
「言われなくても、行かせてもらう」
と、その時、アルバンが小声で「私から離れるな」とつぶやいた。四人と一匹がアルバンの後ろで密集隊形になる。
堂々と歩くアルバンとそそくさと従うモモコたちを見つめる女は、舌打ちをした。
「この町を歩くときは、気をつけな」
アルバンは振り向かずに、それに答える。
「魔王軍にか?」
女は唇を噛み、地団駄を踏んだ。




